スマートワーク新時代 私が変える働き方と暮らし方
日経ウーマノミクス・シンポジウム
日本経済新聞社は11月16日、スマートワーク時代に女性の生活、ビジネスはどう変わるのかについて考える「日経ウーマノミクス・シンポジウム」を東京・大手町の日経ホールで開きました。5回目を迎えた今回は約280人が参加。まず大阪市立大学大学院の永田潤子准教授が登壇し、人生観、家庭生活、趣味といった個を形づくる要素こそが仕事の質を左右すると強調しました。ダイバーシティー(人材の多様性)推進で先頭を走る積水ハウス、東京海上日動火災保険、アフラックの女性3人は会社や自分が取り組んでいるスマートワークをテーマに活発な議論を展開。最後のセッションでは女性外交官2人が活躍し続けるためのポイントを紹介しました。
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海上保安庁の幹部職員を養成する海上保安大学校初の女性であり、卒業後は船長として巡視船に乗り込んだ永田准教授。女性初ゆえに大学校で常に意見を求められるうちに、「周囲が何を言おうと、自分で決めて、自分の心と折り合いをつけるようになった」と振り返ります。海上保安庁では心に余裕があり、エネルギーが満たされていてこそ仕事ができると学んだそうです。
仕事と生活の調和について言及される機会がますます多くなっています。永田准教授は英語のLifeには「命」「日々の生活」「人生」という意味があり、さらに日々の生活は仕事、家庭、地域・社会、個人の4つから構成されると指摘。4つのバランスをとることこそ、ワークライフバランスにつながると述べました。さらに、ビジネススキルやコミュニケーションスキルがあるという「見える部分」だけでなく、人生観や仕事観、情熱といった「見えない部分」も仕事に表現されており、これこそ「人工知能(AI)が広がる時代により大切になる」と強調しました。日々の暮らし、個の熟成が会社や社会にイノベーションを起こすと言及し、講演を締めくくりました。
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積水ハウスの伊藤みどり・常務理事経営企画部ダイバーシティ推進室長、東京海上日動の三浦時子・京葉支店長、アフラックの沢村環・執行役員広告宣伝部長によるパネルディスカッションでは、「私にとってのスマートワーク」について現状や展望が話し合われました。
伊藤常務理事は働き方改革について「生産性を上げ、成果を出し、人生を豊かにすることこそ重要です」との見方を提示。積水ハウスではモバイル端末の利用といったITの徹底活用、業務量の見える化といった取り組みで業務を改善し、パフォーマンスを高めていると説明しました。「仕事は厳しいけれど誰もが楽しいと感じ、家庭や余暇なども充実させたいい人生になれば」と話しました。
女性が活躍できる環境を整えたことで、東京海上日動では2004年に8人だった管理職が17年は218人に増え、生え抜きの執行役員も現在3人いると三浦支店長は紹介しました。働き方改革では週1回の定時退社をはじめ「15年のプロジェクト開始以来、時間、働く場所、意識を変えています」。三浦さん自身は「会社で価値ある存在になるとともに、家族、友人などを大切にし、プライベートも充実させたいと思います」とほほ笑みました。
アフラックの沢村執行役員は「時間を気にせず最善の仕事を、と昔は考えていましたが、仕事との向き合い方を変えました」と打ち明けました。仕事の棚卸し、整理をすれば時間を短縮しても同じ成果は生み出せるそうです。アフラックではテレワークを広げています。「利用者は緊張感を持ち、集中して効率よく仕事しています」
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最後のセッションではタティアナ・ヨシペル駐日ルーマニア特命全権大使とノア・アッシャー駐日イスラエル大使館経済部経済公使が登場。多忙な生活を送るヨシペル大使は「夫と家事を分担しています。大きくなれば子どもにも手伝ってもらいます」と一人で背負い込まないことが重要と指摘。日本の現況についてアッシャー経済公使は「日本側と一緒の会議で男性ばかりなのは残念。女性は組織で大きな役割を果たすし、仕事している姿を子どもに見せるのは重要」と述べました。
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