オリパラ

インバウンド最前線

1泊100万円の「超オモテナシ」 訪日消費まだ伸ばす 政府目標は2020年8兆円、旅行者1人当たりの増額が必要に

2017/11/24 日本経済新聞 朝刊

日常生活の再現が「コト消費」につながる(東京都渋谷区のマユコズリトルキッチン)

訪日外国人の消費額が堅調に増えている。今年は初めて4兆円を超えそうだ。もっとも東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年の政府目標は、2倍の8兆円。夢物語にさえ映るこの金額を達成するには何が必要かを探った。

11月上旬、東京・渋谷の料理教室に笑顔がはじけた。「マユコズリトルキッチン」は訪日客向けの料理教室で、オーナーの岡田真由子さんの自宅で一緒に日本食を作る。

この日のメインは巻きずしと豚のしょうが焼き、初めてダシからとった味噌汁に「自分で作るととてもおいしい」との声があがる。カナダから親子3人で参加したエイプリール・ヘネガーさんは、日本流のおもてなしに感心しきりだった。

費用は1人あたり1万1千円で、参加者は日本の料理や観光の話題で盛り上がる。人気はスシ、ギョーザ、お好み焼き。口コミ旅行サイト「トリップアドバイザー」ではおよそ500人が最高評価の5点を投じ、欧米からの予約が相次ぐ。岡田さんは料理を通じて「普通の日常生活を体験してもらいたい」と語る。

訪日客の動向はその数も消費額も見かけのうえでは好調だ。客数は11月4日で16年の2403万人を突破した。消費も1~9月で3兆円を超え、16年の同じ時期より15%伸びた。

ただ内実には壁と天井がちらつく。

8割強のアジア勢のほとんどが団体客で、個人客よりお金が落ちにくいとされいずれ伸びは陰る。実際に何に使ったかも依然買い物が最も多く、「娯楽・サービス」は全体の3%どまりだ。岡田さんのような「コト消費」を喚起する取り組みは広がっていない。

「従来の観光では問題解決にならない」。観光庁が10月末に開いた訪日消費に関する検討会で、田村明比古長官はこのままでは目標の8兆円達成は難しいとの認識をにじませた。

訪日消費は現在1人あたり約15万円で、目標にはさらに消費を積み上げて、20万円に引き上げないと届かない。国に妙案は乏しいが、地方には「超」がつく独自のおもてなしに動く企業もある。

鹿児島県霧島市の温泉リゾート施設「天空の森」。JR九州の豪華周遊列車「ななつ星」が立ち寄ることでも人気を集める。東京ドーム13個分に相当する60ヘクタールの敷地にある宿泊施設は3棟しかない。料金は1泊で1人15万~25万円だ。

オーナーの田島建夫さんは10億円弱を投じ、25年をかけて今のリゾート施設に仕立てた。昨年、海外の富裕層が3泊で400万円を使い、大自然の中でゆっくりと過ごした。

田島さんは「地域の個性を最大限にいかし新たな観光のスタイルを打ちだす」と意気込む。来春、プライベート機による送迎や有名シェフの料理なども加えた「究極の貸し切りサービス」を始める予定だ。「1人1泊で最低100万円」の構想が動き出した。

消費8兆円へ種はある。あとは芽吹き実るか。官と民の知恵と工夫で、金額と客層の裾野を広げなければ頂にはたどりつけない。時間はあと3年しかない。

[日本経済新聞朝刊2017年11月16日付を再構成]

オリパラ 新着記事

ALL CHANNEL