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ビジネス街の書店をめぐりながら、その時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。書店独自の販促策の効果もあってロングセラーが相変わらず好調な売れ行きだが、年末が近づいて定番の経済予測本などの新刊も加わり、店頭の表情はにぎやかになっている。そんな中、書店が注目するのは、今後さらに進むデジタル時代の大変革に向き合うための企業戦略を詳細に検討した一冊だった。

IMDとシスコがタッグ

その本は、マイケル・ウェイドほか著『対デジタル・ディスラプター戦略』(根来龍之監訳、武藤陽生、デジタルビジネス・イノベーションセンター訳、日本経済新聞出版社)。副題に「既存企業の戦い方」とあり、デジタル技術を駆使したディスラプション(創造的破壊)が起こったとき、その市場で既存企業がどのような戦略をとるべきかを論じた経営書だ。

著者の一人、ウェイド氏はエグゼクティブ教育で定評のあるスイスのビジネススクール、IMDの教授だ。ほかにジェフ・ルークス、ジェイムズ・マコーレー、アンディ・ノロニャの3氏が著者に名を連ねる。こちらの3人は世界的なネット企業、シスコシステムズの研究員。IMDとシスコはタッグを組んでデジタルが巻き起こすビジネスの変革についての研究センターを立ち上げた。その成果を学術的になり過ぎないようにまとめたのが本書だ。

著者たちは、フェイスブックが買収した無料メッセージサービス、ワッツアップの事例や、教育業界での大規模公開オンライン講座(MOOCs)の登場などを分析しつつ、デジタル・ディスラプションがどのように起きるか、それが既存企業にどのような影響を与えるかをまず提示する。その上で、既存企業が採るべき「4つの対応戦略」を紹介する。

柔軟で敏捷な組織能力を身につけよ

ここまでが第1部で、第2部に入ると、対応戦略をとる組織能力へと議論を進めていく。既存企業が反撃に打って出るのに必要なのは、厳正で鈍重になりがちなプランニングではなく、柔軟に対応する敏しょう性だ、と著者たちは言い切る。これを「デジタルビジネス・アジリティ」と呼び、それには「ハイパーアウェアネス(察知力)」「情報に基づく意思決定力」「迅速な実行力」という3つの組織能力が必要だと説く。要はディスラプターとして登場するスタートアップ企業の身軽さを身につけろということだ。

ネスレ、ゼネラル・エレクトリック、フェデックスなどグローバル企業で進む様々な組織変革の事例も豊富に紹介されていて、自社への応用を考えるときの参考になるだろう。訳者あとがきと監訳者による解説では、日本企業の事例も紹介され、行き届いた構成だ。「先週の売り上げでは2位。版元によるまとめ買いが押し上げたためだが、店頭での動きもいい」と副店長の木内恒人さん。ビジネス書売り場の2階では3カ所に陳列、1階でも2箇所の平台で展開する力の入れようだ。

経済予測本も好調

それでは、先週のベスト5を見ておこう。

(1)金融マ-ケットの教科書真壁昭夫著(徳間書店)
(2)対デジタル・ディスラプタ-戦略マイケル・ウェイドほか著(日本経済新聞出版社)
(3)規程例とポイントが見開き対照式でわかる就業規則のつくり方・見直し方大槻智之著(日本実業出版社)
(4)孫社長にたたきこまれたすごい「数値化」仕事術三木雄信著(PHP研究所)
(5)銀行消滅 新たな世界通貨体制へ 副島隆彦著(祥伝社)

(八重洲ブックセンター本店、2017年11月5~11日)

1位から3位まではまとめ買いが入ってのランクイン。1位はマーケット情報のラジオ番組を書籍化した本で、投資のイロハを網羅的に解説している。3位は労働法の最新の改正に対応した実務書だ。4位に前回訪れたとき紹介した数値化仕事術の本。安定してよく売れている。5位は著名評論家が毎年刊行する経済予測本の最新刊。「業界地図など毎年刊行される本の売れ行きが鈍い中、本書は今年も力強い」と木内さん。この表では紹介していないが、日経BP社の『世界を動かす100の技術』も8位に食い込んでおり、未来予測本への関心は強いようだ。

(水柿武志)

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