五輪に比べて人々の関心が薄いといわれるパラリンピック。2020年の東京大会に向けて、どうすればファンを広げられるのか。車いすテニスのトップ選手として日本の障害者スポーツをけん引する国枝慎吾さん(33)は「猛烈なパフォーマンスを見せて、お客さんに楽しんでもらうこと」と言い切る。根底には09年にプロ転向して以来、プレッシャーと戦いながら積み上げてきた実績がある。自らの「最終ゴール」と位置づける、東京パラリンピックへの思いを語ってもらった。
「猛烈なパフォーマンス」見せる必要
――20年東京パラリンピックに出場すれば、アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロに続き5回目のパラリンピックになります。どんな大会にしたいですか。
「もちろん金メダルを狙っています。僕にとって最終ゴールは東京パラリンピック。そこで金メダルを首からぶら下げて、有終の美を飾りたいという気持ちです」
――目標を達成すれば、選手生活でやり残したことはなくなり、後進に道を譲るのですか。
「今の段階では、そう考えています」
――日本では、五輪に比べてパラリンピックへの関心が低いといわれます。20年の東京大会を盛り上げるには何が必要でしょうか。
「いかに選手がお客さんを楽しませて熱中させられるかが、大会の成否を分けると思います。では、どうしたらいいかというと、これは選手が頑張るしかないですよね。最高のプレー、猛烈なパフォーマンスを見せて、真のファンを獲得することが大事です。そういう意味では、大会成功のカギは選手の質なのかなと思います」
「僕はテニスコートで自分自身を表現していると思っています。『車いすテニスはどこが魅力ですか』と聞かれたとき、『見てもらえば分かる』というレベルにならないと、真のファンの獲得にはつながりません。車いすテニスは、もちろんテニスとしても楽しめるし、さらに車いすを操るのでプラスアルファの魅力もあります。まずプレーを見ていただき、それぞれのお客さんが魅力を探してもらえればよいと思っています」
――競技会場にどのくらいお客さんが入るかがパラリンピック成功のメルクマールの一つといわれます。
「会場が満員になるだけでは不十分です。仮に国が『パラリンピックを見に行きましょう』と観客を動員したところで、(東京パラリンピック後の)21年に残るものは何もないと思っています。その競技が魅力的であれば、きっと21年以降も残るでしょうし、魅力的でないのならば、そうじゃない未来が待っていると思います」