マネー研究所

身近なマネー研究

月80万円の散財家計 逆転の発想で老後資金づくり ゴールから逆算する家計改善メソッド(1)

2017/12/7

 貯蓄額は世帯年収の13.3%に相当します。もともと年収が高いAさん夫妻ですから、「このくらいなら、さほど問題なく貯蓄できそうです」と前向きにとらえてくれました。このように、必要な資金をあらかじめ貯蓄してしまう「先取り貯蓄」は、なかなかためられない人に必須のツールです。

■「強制貯蓄」にネット銀行活用

 とはいえ、「あるだけ使ってしまう病」のAさん夫妻ですから、老後資金をためるには、なんらかの仕掛けが必要です。そこで提案したのが、支出の目的別に口座を分け、給与口座から「強制的に」お金を取り分けてしまう方法です。

 具体的には、(1)貯蓄、(2)住居費、(3)旅行・娯楽費の3つの目的に大別し、それぞれに専用の銀行口座を割り当てます。その上で、収入の比率に応じて(1)~(3)の口座に自動的に振り込まれるようにします。(1)は老後の貯蓄用として、夫婦で月に16万4000円をためていきます。必要金額は月に14万4000円ですが、少し余裕をもたせて多めの額をためてもらうことにしました。(2)は住宅ローンの支払い専用口座として使います。(3)は、A夫妻の強い希望で「旅行だけは外せないので、別にためておきたい」とのことで、年間120万円ほどをためることにしました。

 このお金の流れを自動化するために、住信SBIネット銀行の口座を新たにひとつずつ作ってもらいました。同銀行には、他行から毎月、一定の金額を自動的に引き出す「定額自動入金サービス」と、定期的に一定金額を振り込む「定額自動振り込みサービス」があります。前者は無料で、後者は預金残高が一定額以上などいくつかの条件を満たせば無料で使えます。これを利用し、それぞれの給与口座から毎月一定金額をSBIネット銀行に入金し、自動的に(1)~(3)の目的別の口座に振り込まれるようにしました。同時に、これまで20あった口座を7口座に集約。クレジットカードも見直し、10枚から4枚へと減らしました。

 他方、年間196万円(16万4000円×12カ月)の貯蓄のうち144万円分は、家計から新たに捻出しなければなりません。大きく削減できそうな項目は、食費、旅費、服飾費の3つです。そこで食費については外食を減らして、なるべく自炊してもらうようにしました。「外食ばかりでは体に良くないと思っていたので、できるだけやってみます」とBさん。

 さらに、旅行も「惰性で海外に行っていた」(Aさん)ということだったので、国内旅行中心に切り替えてもらうことに。また、「服が好きで、つい買ってしまう」というAさんの服飾費も減額。このほか、「何となく」お互いが2台ずつ契約していたスマートフォンも各1台に減らしてもらいました。こうした工夫で、これまで月に80万6000円だった支出を68万6000円に減らし、浮いた12万円を新たに貯蓄に回すことにしました。

 まだ支出は多めですが、「残ったお金は自由に使っていい」というルールを設け、Aさん夫妻のやる気を引き出すことにしました。

図3 Aさん夫妻の家計の改善状況。食費、服飾費、娯楽費(旅行)などを減らし、月16万4000円を貯蓄に回せるようにした
図4 家計改善後の生涯資産の推移。90歳時点で250万円が残る

 相談から半年後、Aさん夫妻に状況を聞いてみると、目標通りのペースで貯蓄が増え、新たに100万円をためられたとのことです。Aさん夫妻は「『月に16万円ためれば、後は好きに使っていい』と聞いて心が楽になった」とのことで、ストレスなく貯蓄を続けているようです。皆さんもこの「逆転の発想」を家計改善に生かしてみてください。

前田晃介
 株式会社マネープランナーズ代表取締役。不動産賃貸管理業を経て、ファイナンシャルプランナーに転身。独立系FP会社でライフプランニング、資産運用、不動産購入等のコンサルティング業務に従事したのちマネープランナーズを設立。年間100件以上の個別相談を受ける。CFP、1級FP技能士、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者。
MILIZE(監修・協力)
 金融機関向けのソフトウエア開発やコンサルティング業務を手掛けるほか、個人向けの人生シミュレーションプラットフォーム「MILIZE」(https://milize.com/)を提供。給与や生活費のデータを入力すれば、現時点の生活費などの診断に加えて、将来の収支予測なども提示する。2017年11月に社名をAFGからMILIZE(ミライズ)に改称。

(マネー研究所 川崎慎介)

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL