日経Gooday

正解は、(1)ホント です。

カラオケで気持ちよく歌うと、ストレスが発散されると経験的に感じる人は多いと思います。しかし、これに科学的根拠(エビデンス)はあるのでしょうか。

第一興商と共同で「歌の健康効果」を調べた鶴見大学歯学部教授の斎藤一郎さんは、「カラオケには確かにストレス解消効果がある」と話します。

実際、60歳以上の高齢者44人に実験に参加していただき、好きな曲を3曲歌ってもらい、その前後で唾液の量、唾液に含まれる「コルチゾール」の量、気分の変化を調べました。

コルチゾールとは腎臓の上の副腎の周りにある「副腎皮質」から分泌されるホルモン。心身がストレスを感じると分泌され、ストレスから体を守ってくれる存在です。ストレスホルモンとも呼ばれ、体が感じているストレスの指標とされます。

コルチゾールは本来、体をストレスから守るために分泌されるのですが、ストレスが強くて長時間分泌され続けると、いろいろと弊害も起こります。副腎に負担がかかることで免疫力が低下し、眠りを促すセロトニンやメラトニンといったホルモンの分泌が抑えられて不眠を招くのです。また、コルチゾールにはインスリンの働きを弱める作用もあり、血糖値を上昇させてしまいます。

カラオケの後はストレスホルモンが減少する

では、その実験の結果はどうだったのでしょうか。好きな歌を3曲歌った結果、歌う前に比べて唾液の量は増え、コルチゾールは減りました(下グラフ)。気分が明るくなり、「緊張」や「抑うつ」といったネガティブな感情も改善しました。

平均年齢64歳の男女44人に、それぞれ好きな曲を3曲歌ってもらい、その前後で唾液の量、唾液に含まれるコルチゾールの変化を見た。カラオケの後ではコルチゾールが減っていたことから、感じていたストレスが減ってリラックスしたことが分かる。歌の好き嫌いに関係なく、どちらも同じ結果になった。唾液量は増えていた。(Biopsychosoc Med. 2014 May 21;8:11)

では、なぜ歌うと唾液が増えるのでしょうか。斎藤さんは、「口の周りの筋肉を使ったというフィジカル面と、歌うことで副交感神経が優位になったというメンタル面、2つの理由が考えられます」と説明します。

副交感神経は、リラックス状態のときに優位になります。唾液は副交感神経が優位のときによく出て、逆に、交感神経が優位のときにはあまり出なくなります。緊張すると口の中が乾くのは、交感神経が優位になって唾液の量が減るためです。コルチゾールの減少や気分の変化を見ても、歌うことがストレス解消につながることが確認されたわけです。

カラオケによるストレス解消効果は、歌が好きな人の場合に限らず、歌が苦手な人でも見られたそうです。

斎藤さんは、「歌が好きな人ばかりではありません。この実験では、歌が嫌いな人、うまく歌えなかったという人たちも、同じように唾液が増え、コルチゾールが下がりました」と話します。

「楽しくないときでも、笑顔を作ることで楽しい気分になります。それは笑って楽しかったときの記憶がよみがえるためです。歌っているときは顔の表情筋が動くでしょう。その結果、幸せだった記憶や楽しかった記憶がよみがえり、コルチゾールが下がるのではないかと思われます」(斎藤さん)

(日経Gooday編集部)

[日経Gooday 2017年11月6日付記事を再構成]

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