「長時間労働の会社に転職してはいけない」本当の理由リクルートワークス研究所副所長 中尾隆一郎

長時間労働の縮減により生み出された時間を健康、育児、介護、家事、地域活動、ボランティア、学び、副業・兼業などに使うことで、普段、職場では出会えない多様な人たちと接することができます。その経験は、働く人の視野を広げたり、新しい視点をもたらしたりします。事業や経営に多様な価値観や視点が反映され、イノベーションが起きやすくなることは想像できると思います。

逆にいえば、長時間労働を放置すると、健康を阻害し、育児、介護、家事の時間を持ちたい人や、これらに時間を充てる必要がある人は、就業継続できなくなります。組織を運営する側の視点では、新たな人材採用・育成に多くのリソース(労力やコスト)を割く必要が出てきます。また、従業員が職場以外で学んだり、副業・兼業を通じた新たな知見を習得したりする機会を持てず、職場に新たな発想が生まれにくくなります。

最近は、短時間勤務制度を持つ会社も増えてきましたが、短時間勤務者には、補助的な仕事を担当させていて、基幹業務、ましてやイノベーションにかかわるような業務を任せないことが多いのが実態です。これは、長時間労働を前提とした従来の働き方の枠組みの延長にすぎず、イノベーションは起こるべくもありません。

長時間労働の改善は現状把握から

では、労働時間を縮減するにはどうしたらよいのでしょうか。

前述の「全国就業実態パネル調査2017」によると、正社員で1週間あたりの労働時間が40時間以下の人は15%程度にすぎず、45時間以下では58%、週60時間以上働いている正社員も10%弱いるということがわかっています。

最も重要なのは、労働時間の把握、特に、どのような業務にどのくらいの時間をかけているかを正確に確認することです。スケジュールに「会議」や「研修」といった、わかりやすい区分の予定に加えて、それ以外の作業やタスクについても、具体的に入力してみましょう。1週間終了後に振り返り、本来業務、周辺雑務、手待ち時間に分類し、割合を算出し、何にどのくらいリソースを割くのがよいか、チェックします。

この分類の構成比は業界・職種ごとに傾向が異なるので、まずは「働き方改革の進捗と評価」( http://www.works-i.com/pdf/170623_hatarakikata.pdf )の11ページ「表10」を見て、自身と同じ業種・職種で働く人の全国平均と、自身の現状とを比較してみるとよいと思います。

先日、経営者を対象に、労働時間縮減の進め方に関する研修の講師を務めました。出席者には、事前にお願いして、研修当日に、自社の長時間労働気味の従業員(匿名)のスケジュールを持参してもらいました。そして、前述のように、本来業務・周辺雑務・手待ち時間の観点で仕事の質と量を精査していただきました。

すると、従業員個人のレベルでは解決できない「無駄」があったり、この業務にそこまでリソースを割かなくてもよいのに、という「優先度」の認識のズレがあったりと、経営者の観点でも、まだまだ労働時間を削減できる余地があるということがわかったのです。

労働時間を減らしていかないと、企業は存続できなくなる、待ったなしの状況なのです。あなたの職場や転職候補先はいかがでしょうか。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜更新です。次回は12月1日の予定です。この連載は3人が交代で執筆します。

中尾隆一郎
リクルートワークス研究所副所長・主幹研究員。リクルートで営業部門、企画部門などの責任者を歴任、リクルートテクノロジーズ社長などを経て現職。著書に「転職できる営業マンには理由がある」(東洋経済新報社)、「リクルート流仕事ができる人の原理原則」(全日出版)など。

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