味がしない、食欲がない… それは亜鉛不足かも

日経Gooday

味覚障害に悩む人は多く、2003年の統計では、全国で24万人に上った(c)Vadim Guzhva-123rf
味覚障害に悩む人は多く、2003年の統計では、全国で24万人に上った(c)Vadim Guzhva-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

「最近、味を感じなくなってきたが、そのうち元に戻るだろう」「ひとり暮らしの老親の食が細くなり、気力も体力も衰えてきたようだ。悲しいけれど、年だから仕方がないか」。……そう決めつけるのは、ちょっと待った! もしかしたらそれは、亜鉛不足による味覚障害かもしれない。

低亜鉛血症の治療薬を販売するノーベルファーマは、2017年10月4日に亜鉛不足と味覚障害についてのメディアセミナーを開催。アンチエイジングの観点から亜鉛不足に注目するマイシティクリニック院長の平澤精一氏と、全国でも珍しい味覚外来を担当する兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師の任智美氏が講演を行った。その中から、亜鉛不足と味覚障害についてキーポイントを紹介しよう。

味覚障害からフレイル、そして要介護へと続く悪循環

味がしない、何を食べても苦く感じる、塩味がきついといった味覚障害に悩む人は、かなり多い。2003年の統計では、全国で24万人が味覚障害を訴えた[注1]。そして、味覚障害を訴える人には、高齢者が多い。任氏の味覚外来の受診者を年齢別に分けると、多くの高齢者が味覚障害に悩んでいることが分かる(図1)。

来診者を年代別に分けると、味覚外来を訪れるのは高齢者が多い。女性が多いのは、自ら料理をするため味覚障害に気付きやすいからと考えられる(提供:任智美氏)

亜鉛はミネラルの一種で、人体にとって必須の栄養素だ。体内にある300種類以上の酵素の働きを助け、新陳代謝の活性化やたんぱく合成に関わっている。そのため亜鉛が不足すると、さまざまな全身症状が現れる。

亜鉛不足の症状には、味覚障害、臭覚障害などの知覚障害、湿疹、皮膚炎、脱毛といった皮膚症状、貧血、食欲不振、骨粗しょう症、免疫力低下、慢性肝疾患、糖代謝異常などがある。さらに、情緒不安定、記憶力低下、うつ傾向といった精神症状、不妊症や男性更年期障害といった性機能障害も亜鉛不足で起こってくる(表1)。

中でも真っ先に自覚しやすいのが、味覚障害だ。亜鉛が不足することによって舌にある味細胞の細胞分裂が止まり、新しい細胞ができなくなると、味を感じられなくなる。

ひとり暮らしで孤独に食事をする高齢者は、食事の品数が少なく、メニューも片寄りがちのため、亜鉛欠乏を起こしやすい。ところが味覚障害を起こしても、味付けを濃くするなど自分で調整してしまうので、障害があることに気付きにくい。それでもなんとなく料理がまずいので食欲がなくなり、食欲がなくなると食が細り、栄養がますます偏ってしまう。そしてたんぱく質やカルシウムが不足すると、筋力不足や骨粗しょう症を起こしやすくなる。

「亜鉛は男性ホルモンのテストステロン生成にも関わっています。テストステロンには、筋肉を作ったり骨を強くしたりする作用があるので、テストステロンが不足すると、さらに筋力不足や骨粗しょう症が起こりやすくなります」と平澤氏は言う。

[注1] Ikeda M, Aiba T, Ikui, A et al. Taste disorders: a survey of the examination methods and treatments used in Japan. Acta Oto-Laryngologica. 2005;125:1203-1210.

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薬の影響でも、味覚障害が起こる