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松下翁も提言 ようやく個人株主の時代が(藤野英人) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

2017/11/14

「ITにより金融市場はめざましい進化を遂げているが、変わらぬ課題も残っている」

 日経平均株価は11月7日に2万2937円を付け、1996年6月のバブル経済崩壊後の戻り高値(2万2666円)を上回り、25年10カ月ぶりの高値水準となりました。これにより、日経平均は1989年12月の史上最高値(3万8915円)から2009年3月のバブル後最安値(7054円)までの下げ幅の「半値戻し」(2万2985円)をほぼ達成しました。

 相場の世界では「半値戻しは全値戻し」という格言があります。半値まで戻せば、高値まで戻すのは時間の問題という意味です。日経平均は9日には取引時間中に2万3000円台に乗せましたが、その後は急落するなど不安定な値動きとなっており、再び上昇軌道に戻るのか、それとも下落に転じるのか注目されます。

■松下幸之助氏が1967年に論文を発表

 「何十年ぶり」と聞くと、過去を振り返って投資行動を考える人が多いかもしれません。しかし、マネーのグローバル化と取引の高速化が進んだ現代は、過去の経験則が通用しないこともあると思います。フィンテックのように、IT(情報技術)により金融市場はめざましい進化を遂げています。その一方で、あまり進歩していないこともあります。

 今から50年前。1967年にある人が論文を発表し、次のような問題を指摘しています。要約すると、

 「大衆個人株主が軽視される風潮がある」
 「株主総会がごく短い時間で形式的に済まされる」
 「安心して投資し、株を持つことができにくい」
 「昨今はバクチ的な面が強く、短期でもうけるのが当然になっている」
 「そのため経営者はさらに個人株主を軽視する」

 なんと、50年前にもこのような指摘をした人がいたのですね。その人は、誰あろう「経営の神様」といわれた松下幸之助翁です。67年秋に「株式の大衆化で新たな繁栄を」と題した論文を『PHP』誌で発表しています。

 これらの問題は、私が常々セミナーなどで指摘していることです。それをどうにかしようと、独立して会社を立ち上げたといっても過言ではないのですが、いまだに解決を見ない、古くて新しい問題です。

 幸之助翁の名言は、10月17日付コラム「相次ぐ不祥事 私が企業を見るポイント」でも触れましたが、彼の目は当時から常に社会全体に向けられていたのです。

 論文では「我々は、この悪循環を早急に断ち切り、大衆が安心して、喜びを持って株に投資することができる新しい日本にしてゆかねば」と記しています。

■政府、企業、証券会社など4者に提言

 そのために彼は4つ提言をしました。政府、株式を発行する企業経営者、株主(個人投資家)、株の売買を仲介する証券会社、4者に対して「長期投資の必要性」という観点から意識変革を求めているのです。

 提言を要約してみましょう。

 まず、政府に対しては、
 「政府自らが、株式の大衆化や株主尊重の意識を正しく認識・評価する。そして、すべての国民に株式を持つことを積極的に奨励する」

 株主に対しては、
 「株主は、自ら会社の主人公であるということを正しく自覚・認識する。そして、たとえ少数しか持っていない株主であっても経営者に対し言うべきは言う。単に配当を受け取るというだけでなく、株主としての権威・見識を持って会社の番頭である経営者を叱咤(しった)激励する」

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