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誤解多き「果物」 実は動脈硬化の予防に有効だった!

動脈硬化性疾患予防ガイドラインでも推奨

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

糖分が多そう、食べると太りそう、皮をむくのが面倒……。こうしたイメージから、近年、摂取量が減り続けている生鮮果実。だが、実は果物は、疾患予防に重要な食品だということをご存じだろうか。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」でも、果物の摂取が推奨されている。果物は、敬遠するよりも、むしろ積極的にとるべき食材だったのだ。果物の健康効果や上手な摂取方法について、国立循環器病研究センター予防健診部医長の小久保喜弘さんに聞いた。

疾患予防に有効と初めて明記

――果物摂取は、実は健康にいい。近年、高血圧や動脈硬化の予防に役立つなど、さまざまな効果が分かってきたそうですね。「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」で、注目すべきポイントはどんなところですか?

小久保 今回新たに、動脈硬化性疾患の予防に有効とされる方法や食品ごとにクリニカルクエスチョン(Clinical Question)[注1]が加わり、疾患予防との関連がきちんと記述されるようになったのですが、果物もその一つとして提示されました。果物摂取が動脈硬化性疾患の予防のうえで重要であると評価された結果です。「果物の摂取は冠動脈疾患および脳卒中リスクを低減させる可能性があり、果物の中でも糖質含有量の少ないものを適度に摂取することが勧められる」と明記されており、強く勧められる推奨レベルA[注2]に分類されています。

実は「高血圧治療ガイドライン」においては、前々から野菜や果物をしっかりとることが明記されていました。高血圧予防のための生活習慣の改善ポイントは、(1)減塩(2)野菜・果物を多く摂取(3)飽和脂肪酸(肉など)よりも魚を多く摂取(4)適正体重の維持(5)運動習慣(6)適正飲酒(7)禁煙、受動喫煙を避けるといった7項目。欧米をはじめ世界中のガイドラインも、見方が異なってもだいたいこの7項目からなります。人種や文化の違いを超えて高血圧予防のための生活習慣改善のポイントは不変、と考えてよいと思います。一方、動脈硬化性疾患予防ガイドラインの生活習慣改善のポイントは、この高血圧予防の7つの項目に(8)食物繊維を多く摂取(9)大豆製品を多く摂取が加わります。

果物をよく食べる人は生活習慣病リスクが低い

――果物と疾患の関係については、具体的にどのようなことが分かっているのでしょう。

小久保上記のガイドラインでも紹介しているのは、果物の摂取量が多い、またはよく食べている人ほど、「脳卒中や心筋梗塞死亡率が低い」「糖尿病予防にもいい」、かんきつ類の摂取頻度が多いほど「総死亡率が低い」、また、果物の摂取量が多いほど「高血圧有病率が低い」などですね。

ほかに、メタ解析[注3]によって、果物をとることは肥満に逆相関する、つまり、太りにくいということも分かっています[注4]

――残念ながら、果物は誤解されていますね。糖質オフダイエットなどが流行し、ここ数年は、「糖質のとり過ぎは悪」というイメージが広まってきた。それに紐づけるように「果物は甘い→糖質が多い→太る」といったイメージがより強くなったように思います。

小久保 そうですね。果物をとると体重増加や血糖値上昇を招きやすいという誤解があり、肥満や糖尿病になるからと敬遠する人も多いようです。果物と通常の砂糖では代謝メカニズムが違いますし、果物が肥満の原因になることを裏付けるエビデンス(科学的根拠)はないにもかかわらずです。糖質オフダイエットをされる方は、穀類や果物を摂取制限するため、食物繊維が極端に不足していることが多く見られます。

実は2017年秋に、日本臨床栄養学会で、果物の摂取頻度や摂取理由の調査結果を発表しました。果物の摂取理由としては、「おいしい」「手軽」「健康的」「デザートとして」の順に多く、野菜の代用やダイエット目的に摂取する人は1割にも満たなかった。また、果物の効用についても、「ビタミン」「抗酸化」「疲労回復」「便秘改善」「老化予防」といったキーワードをイメージする人は多かったのですが、「高血圧」「脳卒中」「心筋梗塞」といった疾患予防に関係があることまで認識している人は1割にも満たず、あまり認識されていないことが分かりました。

[注1]動脈硬化性疾患の予防に有効かどうかについて系統的に文献検索を実施し、臨床現場での意思決定を支援するために最適と考えられる推奨レベルをQ&A方式で提示したもの

[注2]推奨レベルはA(強い推奨)とB(弱い推奨)の2段階に分けられている

[注3]複数の研究の結果を統合し、統計的方法で分析すること

[注4]Schwingshackl L, et al. Fruit and Vegetable Consumption and Changes in Anthropometric Variables in Adult Populations: A Systematic Review and Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies.PLoS One. 2015;10:e0140846.ほか

では、太りやすいというイメージがどこから来たものなのかということですが、日本人は果物をデザートとして食べてきたことが関係しているかもしれません。つまり、食後のおなかが満たされた状態で摂取することで、おなかが膨れるため、肥満や血糖値が上がるという誤解を起こしやすくなります。それから、異性化糖と、果糖、生鮮食品である果物を混同している方が多いので、注意が必要ですね。

異性化糖、果糖、果物は、全く違うもの

――異性化糖はソフトドリンクなどの原材料名に「果糖ぶどう糖液糖」などと表示されているシロップ(甘味料)ですね。これと果糖と果物はどう違うのですか?

小久保 一番の問題は、異性化糖(高フルクトース・コーンシロップ)です。これはトウモロコシを原料とする甘味料。おっしゃる通り清涼飲料水や氷菓などに甘味料として使われていますが、これを含む加工食品の大量摂取は動脈硬化性疾患の発症リスクを高める可能性が否定できないとして、動脈硬化性疾患予防ガイドラインでも摂取量を減らすことが望ましい[注5]としています。

一方、果糖はブドウ糖に比べて腸管での吸収が遅く、また、果糖の一部は肝臓で代謝されるため、ブドウ糖に比べると血糖値の上昇は緩やかです。しかし、果物を果汁やジュースで大量にとれば、血糖値や中性脂肪を上げることになります。市販の100%フルーツジュースは健康によさそうと思っている方も多いでしょうが、容易に摂取できるので血糖値などを上げやすいし、濃縮還元の過程で抗酸化ビタミンやミネラル、食物繊維がかなり失われてしまうので、果物を丸ごと摂取することに比べると体に良い効果は少なくなります。

手作りのスムージーなら、ビタミンもあまり壊れていないし、食物繊維などが残るので、まだ良いかもしれません。

――果物は、できるだけ丸ごととったほうが健康効果を享受できるということですね。

小久保 はい。果物には、果糖のほかに、ビタミンやミネラル、抗酸化成分、食物繊維なども含まれています。また、果物を丸ごと食べようとすると、咀嚼(そしゃく)する必要があるため、ゆっくりとることになります。それで血糖値の上昇を招きにくいのです。

新鮮な果物はビタミン、ミネラル、食物繊維の宝庫

――果物に含まれるビタミンやミネラルは、体内でどんな作用をするのですか? 動脈硬化や血圧とどのような関係があるのでしょうか。

小久保ビタミンCやEといった抗酸化ビタミンは、体のサビの原因となる活性酸素を除去する作用がありますし、ミネラルの吸収にも必要な栄養素です。

また、高血圧は動脈硬化の危険因子の一つですが、野菜や果物に多く含まれるカリウムには塩分排出効果があり、減塩生活をサポートしてくれます。摂取してもおなかが空く頃には体外に排出されるため、カリウムが豊富な野菜や果物は毎食とったほうがよいです。

そのほか、マグネシウムは細胞膜の安定のために欠かせないミネラルで、適量をとることで血圧を下げる効果が期待できます。

さらに、動脈硬化性疾患の予防には食物繊維の摂取を増やすことも推奨されていますが、果物類には食物繊維が豊富なものが多い。水溶性食物繊維には食後血糖値の急上昇を抑える働きなどが期待できます。

手の届くところにいつも果物を

――ビジネスパーソンが、手軽に果物を取り入れるには、どんな工夫をしたらよいでしょう。継続しやすいとり方や、どんな果物をとるとよいかについて教えてください。

[注5]ただし、果糖含有加工品の大量摂取が動脈硬化に及ぼす直接的影響についてはエビデンスを示すのに十分な論文がまだなく、推奨レベルはB(弱い推奨)である。

小久保 手の届くところにいつも果物がある、また、デザートだけでなく食事にも果物を取り入れるような工夫をするとよいと思います。日本には「こたつでミカン」という習慣がありましたが、最近は少なくなっているように思いますね。

欧米ではミーティングの机にフルーツが並んでいて、手軽に手にとれるようになっています。ビジネスパーソンや若い女性が、カバンの中に果物や野菜を忍ばせておいて、外で摂取している光景もごく普通に見られます。日本の企業でも、会議室にフルーツバスケットを置いておき、自由に食べながらミーティングをしたらどうでしょう。ゲストに飲み物を出すのと同じ感覚でよいと思います。また、疲労感やイライラ感も果物で癒やされると思います。

また、欧米ではサラダのトッピングやメインディッシュの付け合わせにもフルーツを取り入れるなど、食事中にとることが多いのも日本と違うところです。食事中に果物を摂取するので、おなかがいっぱいになりカロリーオーバーになりにくいです。

――なるほど、ミーティングに果物はよさそうですね。サラダにフルーツもおいしそうです。食事としてとれば、太りそうというイメージはなくなるかもしれません。果物の選び方や摂取量の目安はありますか?

小久保厚生労働省の食事バランスガイドでは、1日200gの果物摂取が推奨されており、その量はミカンだと2個、あるいはリンゴ1個や、ナシ1個、ブドウ1房、キウイ2個程度になります。

動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、キウイフルーツ、ベリー類、かんきつ類など糖質含有量の少ない果物の摂取を推奨すると記載されています。それももちろんよいですし、私はできるだけ旬の果物をとるように心がけたらよいと思います。旬の果物は鮮度がいい、価格が安い。それに、季節感を味わえます。何よりもその季節に摂取したほうが良い成分が豊富に含まれています。

果物の酸味を料理に活用すると減塩効果が

――糖質含有量が少ない果物は、酸っぱい果物ですよね。酸っぱいのは苦手という人は多いようですが……。

小久保 サラダに果物を加えると、いい具合に酸味や食感が加わってドレッシングの量が少なくてもおいしく食べられる。日本人は塩分をとり過ぎといわれますが、酸味を上手に料理に活用すると塩分を減らすことができるので、ぜひ試してみてください。

みなさん、健康を目指そうと野菜ばかり食べようとするのですが、果物のメリットにも目を向けるべきで、日本でも、果物を身近なものにすべきだと思います。野菜が高くて手が届かないときには、時には代わりに果物をとってもよいくらいです。

――健康な人は、食生活の中に果物をどんどん取り入れていくべきですね。最後に、糖尿病や腎不全などで治療を受けておられる方は、果物を摂取する際に注意点はありますか。

小久保 はい。かかりつけ医で治療を受けられている方、特に糖尿病や腎不全、心不全などと診断された方では、カロリーやカリウムなどの制限のため果物の摂取を制限しなくてはならない場合もあります。かかりつけ医の指導に従ってください。

小久保喜弘さん
 国立循環器病研究センター予防健診部医長、Glasgow大学循環器医科学研究所客員教授、大阪大学大学院医学研究科招聘教授。国際高血圧学会理事、米国心臓協会評議員・大使、米国心臓専門学会学術評議員、欧州心臓学会評議員、欧州脳卒中協会評議員も務める。専門領域は予防医学(高血圧、脳卒中、心臓病、栄養疫学、分子疫学)。

(ライター 及川夕子)

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