老後資金3000万円でも70歳で破綻 50代夫婦の誤算家計再生コンサルタント 横山光昭

夫が退職した時点では退職金も含めて貯蓄が3000万円に達するとしても、65歳の年金受給開始までの5年間に少なくとも516万円×5=2580万円を貯蓄から取り崩すことになるので、65歳時点の貯蓄額は多くても約420万円。65歳以降の貯蓄からの補填額は年約96万円ですので、この420万円は4年余りで底をつく計算です。夫が70歳になった時点で家計が破綻するというKさんの試算は間違っていなかったのです。

まず家計をダウンサイジング

老後の資金が不足している場合の対応は、家計の改善と同様に収入を増やすか支出を減らすかの2つしかありません。夫が定年後も再雇用などで仕事を続けたり、妻が働きに出たりして収入を増やす一方、生活費を減らして余剰金を捻出し、貯蓄を増やすことが今、Kさん夫婦にできることなのです。家計をダウンサイジングできれば、老後資金から支出する生活費を少なくすることができ、蓄えが長持ちします。

Kさん夫婦の家計は夫の収入増に伴って、外食中心となった食費のほか、Kさん自身の交際費が膨らんでいます。子どもが独立するまでは我慢していた洋服なども頻繁に買うようになりました。エアコンを24時間つけっ放しにすることも多く、水道光熱費も高くなっています。一度味わった楽、ぜいたくを手放したくない、つまり「支出を減らしたくない」とKさん夫婦は当初、家計改善に抵抗していましたが、それ以外に老後資金を増やす効果的な方法はありません。

一方、支出が増えたのは自由になるお金や時間が増えたことによる気のゆるみが原因でしたので、子育てをしていた時のように節約に神経質になる必要はないものの、当時のつつましい暮らしに近づけることを目標にしました。といっても、外食を減らして自炊を増やしたり、洋服を買う頻度を減らしたり、エアコンは必要な時だけつけたりといった基本的なことです。さらにスマートフォンを格安スマホに替え、しばらく見直していなかった生命保険も夫婦2人で暮らしていくのに最低限必要な保障内容の商品に入り直しました。

こうした取り組みで支出は月に8万8000円ほど減り、月に11万8000円を貯蓄することができるようになりました。今の生活を継続できると、ライフプラン表では夫が90歳になるまでは貯蓄を取り崩しても破綻しない見通しが立ちました。もし、夫が60歳以降も働くようになれば家計はさらに改善しますし、生活費をより圧縮できればKさんの不安も少なくなりそうです。

今できることにしっかり取り組む

収入が増えたとき、それに合わせて支出も増やしてしまうのは人間の心理として自然なことでしょう。しかし、生活のペースは崩さないよう気をつけなければなりません。公的年金は今後、減るかもしれませんし、日本人の平均寿命は延びています。今後、増税などで手取りの収入が減る可能性もあるなど、何が起きるか分からず、老後の暮らしは計画通りにいかないことも多いのです。だから可能な限り老後資金を蓄えておくことが必要です。今できることにしっかり取り組んで老後に備えていきたいものです。

(「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です)

横山光昭
マイエフピー代表取締役、家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで1万人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「はじめての人のための3000円投資生活」(アスコム)は47万部を超え、著書累計は218万部。
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