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使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

iDeCoの積み立て 毎月のほか「年単位」も可能に iDeCoで投資デビュー(12) オフィス・リベルタス 大江加代

2017/11/15

10月25日、中央官庁に勤務する全職員を対象に行われた「霞が関iDeCoセミナー」で筆者が講演を行った

 iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金は、「月に2万3000円」というように積立額を決め、同じ額を毎月1回積み立てるというのが2017年までのルールでした。しかし18年1月からは限度額を年単位で管理し、年1回以上積み立てればいいというルールに変わります。年間の拠出額に変更はありませんが、よく考えればこれはかなり大きな変更です。何が変わってどういう使い方ができるのか、この変更のメリット・デメリットについて少し詳しく考えてみましょう。変更点は以下の4点です。

(1)年1回以上の拠出でOKに

 これまでは「毎月の積み立て」だけだったのが、「毎月の積み立てなしにボーナス時だけ拠出」ということも認められるようになります。こうした使い方は16年の確定拠出年金の法改正の段階から例示されていましたが、それが実現したということです。1回あたりの拠出額の下限が5000円という点は変更ありません。

(2)年は1月から12月を単位とする

 上記は口座からの引き落としベースです。

(3)拠出限度額は、経過月の限度額を積み上げていく

 これは字面だけでは分かりにくいですね。例えば会社員で企業年金が全くない人の場合、掛け金の月額上限は2万3000円です。この人の1月引き落とし分が1万円だった場合、2月分は残りの1万3000円を繰り越して3万6000円まで拠出することが可能になる、ということです。仮に夏のボーナスまで(1~6月)に1万3000円の繰り越しが6カ月分たまれば、7月には7万8000円+2万3000円で10万1000円積み立てて、自分の老後資産づくりを加速させることも可能になるのです。

(4)拠出下限も経過月により積みあがる

 1回あたりの拠出額の下限は5000円×月数となります。例えば、1月から6月は拠出を休んで7月にある程度の額を入れようと思ったとき、5000円×7カ月=3万5000円以上は拠出しないとダメ、ということです。老後資金というある程度まとまった金額を貯めるのが目的の制度なので、月5000円という下限は変えず、払い込みの自由度を広げたということだと思います。

 サラリーマンにとっては、社内の積立制度でもボーナス時のみ積立額を3倍にするものもありますし、住宅ローンでもボーナス時に多く返済するのは珍しくありません。したがって毎月一定金額というのは難しいけれど、それでもiDeCoの税メリットを目いっぱい享受したい、老後の安心のために少しでも資産を積み上げたいという人には、有効な方法といえるかもしれません。ただし、上記(3)で説明したように毎月の掛け金を少なくして余った額をボーナスでまとめて拠出したいと思っても、掛け金額の変更手続きには時間がかかることと、変更は年1回しかできないことには注意が必要です。

 また自営業者の場合、サラリーマンと違い毎月の収入にはブレがあるのが一般的だと思われます。ですので、収入が非常に多かった月は多く、少なかった月は少なくというふうにできればいいのですが、これも上記の通り掛け金額を毎月機動的に変更することはできません。そう考えると新制度もあまり使い勝手がいいとはいえないでしょう。それにそもそも自営業者の拠出限度額は月6万8000円と非常に大きいことから、現在の上限いっぱいに拠出されている方は非常に少ないのが現状です。したがって、自営業者の方がこの新制度を積極的に利用するケースは少ないのではないでしょうか。

■事務費を下げるメリットはある

 事務費の面からこの「年単位制」を考えてみましょう。加入者として運営管理費用の中から毎月負担している手数料のうち、103円は国民年金基金に支払われています。個人型年金規約第142条に、「掛金の収納及びこれに付随する事務に係る手数料 1月当たり103円」が国民年金基金連合会の手数料として明文化されているからです。

 ところが、この手数料は拠出をしない月については徴収されません。だとすれば毎月積み立てるのではなく、年1回拠出にすれば103円×11カ月分=1133円も手数料が下がるということになります。長期間払い込みが続く制度だけに、このメリットはばかになりません。特に預金などの元本確保型商品のみで運用している方は手数料負けの可能性が高いので、検討に値すると思います。

■ドルコスト平均法が生かせない

 一方、年単位で買い付ける場合には一つ大きな問題があります。価格の変動する商品を月に1回など決まったタイミングで、かつ一定額で買い付けていくと、ドルコスト平均法により平均購入単価を下げることができます。株価が下がっていて心理的には投資したくない時期にも、機械的に買っていくことで口数が増え、後で相場が回復したときにその恩恵を受けられるのです。

 投資信託で運用している場合がまさにこれで、「毎月」一定金額で買い付けるからこそ、ドルコスト平均法による効果が見込まれるわけです。それを年1回の大きな金額の買い付けに変えてしまうと、そのときの相場水準の影響を受けやすくなり、「高値づかみ」の恐れも出てきます。iDeCoの運用は20年、30年と続く長期のものだけに、ドルコスト平均法のような安定した買い付け方法が最も好ましいのではないかと考えます。したがって、年単位制ができたからといっても、私自身は現在の毎月定額購入を急いで変更するつもりはありません。

 もちろん、掛け金の拠出方法が多様化するということ自体は決して悪いことではありません。前述のように定期預金のみで運用している人であれば、年1回の拠出というのも検討に値するでしょう。大切なのは、制度が持っている本質とそれにふさわしい使い方をしっかり考えて、自分に合った拠出方法を自分自身で考えることだろうと思います。

大江加代
 大手証券会社で22年間勤務し、一貫して勤労者の資産形成に携わる。確定拠出年金については法の成立前から10年以上企業型の現場で関わり、のべ25万人に対する投資教育の企画・運営にも携わった。現在はオフィス・リベルタス取締役で、NPO確定拠出年金教育協会理事として情報サイト「iDeCoナビ」も創設。http://www.dcnenkin.jp/

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