「一人で大丈夫です」 あたりが強く響く3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(53)結構です
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は、手助けの申し出を断るという場面です。
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今朝から上司に言われた仕事を進めています。特に大変ではないのですが、もしかしたらアップアップしているように見えたのかもしれません。同僚が手伝うと言ってくれています。Thanks! と答えるのは簡単ですが、実はひとりで進めた方がずっと楽なのです。
Let me help you. 手伝いましょう。
正しい訳:大丈夫です。
影の意味:けっこうです。
「(自分でできますから)結構です」という上から目線の断りに聞こえることがあります。言い方によっては強く聞こえることがありますので注意が必要です。
正しい訳:(1人でできますから)大丈夫です。
影の意味:(自分でできるんだから)邪魔しないでね。
小さな子供が手伝おうとしたお母さんに対して「自分でできるよお」と誇らしげになったり、ちょっとふくれたり……そんなイメージの言い方です。場合によっては相手を拒否するように聞こえてしまいます。
正しい訳:助けていただかなくても大丈夫です。
影の意味:(自分でできるんだから)あなたの助けなんかいらないわ。
直訳すれば「あなたの助けは必要ありません」。これはやはり拒否のニュアンスが色濃く出てしまいます。
これなら「影の意味」はない!
ありがとうございます。でも大丈夫です。
手伝いの申し出を受けた場合、まず間違いないのは最初にお礼を言うことです。「ありがとうございます」の感謝の言葉が言えれば次の言葉が悪く取られることはほとんどないでしょう。Thanks for offering to help, but I'll be okay. 「手伝いを申し出てくださってありがとうございます。でも大丈夫です」もよく使われる、安全なフレーズです。
大丈夫です。自分で対処できます。
この後に Thanks, though. 「でもありがとうございます」などをつければ、さらによいでしょう。
いいえ、大丈夫です。お手を煩わせたくありません。
It was kind of you to offer.「申し出てくださって、ご親切に」を加えるのもあなたの気持ちを上手に伝えることになります。 ,
あなたが知らない本当の使い方―― help
Help me!「助けて!」のようにhelp は「窮状から助ける、命を助ける」の意味の他に、「手伝う、助けとなる、役立つ、促進する、抑える」など多くの意味を持つ動詞です。また「援助、手助け」など名詞の働きもあります。
・The patient is beyond help. その患者は助かる見込みがありません。
* beyond help「救助/助けを越えて」はすなわち「手の施しようがない、手遅れで」の意味。またHe started gambling again. He's beyond help.「彼はまたギャンブルを始めたんだ。もう救いがない/度し難い」のような意味にも使えます。
・Nancy was at the meeting, but she wasn't much help. ナンシーは会議に出席していましたが、たいして役に立ちませんでした。
* be not much help:たいして役に立たない be a lot of help:大いに役に立つ
・With your help, we were able to finish it on time. あなたの協力があって、私たちは時間以内にそれを終わらせることができました。
*with one's help, with the help:~の協力で、~のおかげで、~を活用して
・You're not helping. 迷惑です。
*「あなたは助けていない」は「それは迷惑だ、役立っていない」の意味になります。
・Please help yourself to the drinks. どうぞご自由にお飲み物をお取りください。
* この場合のhelpは「勧める、食べ物や飲み物を取ってあげる」の意味があります。Please help yourself to…は「~をご自由にお取りください」と勧めるときの決まり文句です。
*There's food on the table, just help yourself. なら「食べ物はテーブルに出てます。ご自由にどうぞ」の意味。
・This program has helped raise the literacy rate of women in developing countries. このプログラムは開発途上国の女性の識字率向上に役立っています。
* help (to) 動詞の原形:~するのに役立っている toは省略してもOKです。
・I can't help but wonder why Nancy asked to be transferred. ナンシーがなぜ異動を申し出たのが不思議に思わざるを得ません。
* can't help but:~せざるをえない、つい~してしまう
*...can't help but wonder why:どうしてなのか不思議でしょうがない
「助ける」にはhelp 以外にもsave, rescue, assist, aidなどがあります。夏になると海岸で活躍するのはlife saver です。彼らは文字通り、海で危険な状況にある人の命を救います。saveには「差し迫った危険や困難な状況から救い出す」の意味がありますが、深刻な場面だけでなく、ちょっとした窮地を救ってくれた、手を貸してくれた人に You saved my life! と言えば「あなたは命の恩人よ! 助かったわ!」のように気軽に使うこともできます。
rescue はsaveに比べると「救助」の意味合いがさらに強く、警察や消防などに使います。The policeman rescued a drowning child yesterday.「警官は昨日溺れている子供を助けた」となります。
「アシスタント」が誰かの「補助的な役割をする人、助手」であることはご承知の通りですが、これはassistの名詞です。サッカーでもシュートのお膳だてをすることを「アシストする」ということからもassistが「誰かの業務や仕事などを補助する」意味であることが分かります。Many students assisted with the experiment. であれば「多くの学生たちが実験の手助けをしました」のこと。assistance は「援助、支援」などを表すassistのもうひとつの名詞です。
aid は「助ける」でも「公的に資金などを援助する」ことを言います。これはフォーマルな印象で、日常会話で使われるよりも文書で多く使われます。The organization aided the refugees with food, fresh water and medicine. 「その機関は難民に食料、新鮮な水、医薬品を援助した」。また名詞で使われることも多く、international aid といえば「国際援助」、first aidであれば「応急処置」になります。
Heaven helps those who help themselves.
:D セイン
※デイビッド・セインの「ビジネス英語・今日の一場面」は木曜更新です。次回は11月23日の予定です。
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。