
銀河系には数多くの恒星があると同時に、それらの周囲を回る惑星も数多く見つかっている。だがこのほど、私たちの想像をはるかに超えた惑星が見つかった。
その惑星NGTS-1bは、ちっぽけな恒星の周りを回る巨大惑星だ。惑星の質量が木星ほどもあるのに対して、主星(恒星)は太陽の半分ほどの直径しかない薄暗い赤色矮星(わいせい)である。主星に対してこれほど大きな惑星が見つかるのは初めて。主星・惑星間の距離も極端に短く、NGTS-1bの1年はわずか2.6地球日、つまり2.6日で恒星の周りを1周してしまう。
これは、科学者の予想を超える組み合わせだった。現在の惑星形成理論では、小さい恒星は小さい惑星を持ち、大きい恒星は大きい惑星を持つと考えられているからだ。「こんなに大きい惑星がこんなに小さい恒星の周りを回っている惑星系は、想定されていませんでした」と、論文の著者である英ウォーリック大学のダニエル・ベーリス氏は述べている。
「怪物級」の惑星を見つける
この惑星系を発見したのは、チリにあるヨーロッパ南天天文台で太陽系外惑星を探す「次世代トランジットサーベイ」プロジェクト。学術誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)』に掲載される予定の論文によると、問題の惑星系は太陽系から約600光年離れたところにあり、おそらく「非常に古い」という。
今回の惑星は、惑星が主星の手前を通過する際に恒星が短時間だけ減光したように見える「トランジット現象」の観測によって発見された。
論文著者の一人であるウォーリック大学のピーター・ホイートリー氏は、「NGTS-1bは怪物級の惑星ですが、主星が小さくて薄暗いせいで、発見するのは困難でした」と語る。「小さな恒星はごくありふれた天体なので、宇宙には多くの巨大惑星が隠れているのかもしれません」
ホイートリー氏らによると、小さな主星(M型矮星と呼ばれる)が巨大惑星を持っている例はまだ2例しか知られておらず、どちらの惑星もNGTS-1bほどは大きくないという。
主星からの距離が非常に近く、表面が高温になっている巨大ガス惑星はホット・ジュピターと呼ばれている。カナダ、モントリオール大学のローレン・ワイス氏は、「M型矮星の周りのホット・ジュピターは非常にまれです」と言う。
これまでの理論を覆す謎
現在の惑星形成理論によれば、基本的に、大きい恒星ほど大きい惑星を持っている。簡単に言えば、惑星系のもとになるガスやちりの塊が大きければ、大きな恒星や惑星が形成されるからだ。これに対して、赤色矮星のような小さな恒星は少量の材料から作られるため、その周りには小さい惑星が形成される。
今回発見された惑星系は、この理論には従わないが、惑星形成の物語を完全に書き直す時期が来たのか、注釈を書き加えれば済むのかはまだわからない。
幸い、この巨大惑星は、2019年春に打ち上げ予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で大気を調べられるほど近いところにある、とワイス氏は言う。大気の観測結果が出れば、巨大惑星が主星からどのくらい離れたところで形成されたかも明らかになるはずだ。
「太陽みたいな星の周りのホット・ジュピターについてさえまだわかっていないのに、M型矮星の周りで惑星がどのように形成されたのかなど、見当もつきません」(参考記事:「太陽系の外から未知の天体が飛来 初観測は歴史的快挙」)
(文 Nadia Drake、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年11月2日付]