CEO直撃 ボルボは「クルマのスマホ化」を目指す

サムエルソン そんなことはありません。中国からの要求というより顧客全体からの要望です。EVは魅力的でメリットがたくさんあり、生産コストも安くなってきてます。近い将来に魅力的なクルマということだけでなく、十分な利益を生む商品になるはずです。そのためにはコスト低減の必要がありますが、今までのクルマより可能性があると判断しました。それが、19年以降、われわれがEVまたはハイブリッドに集中していくと決めた理由です。

小沢 EVはもっと安くなると?

サムエルソン あなたは日本人だから、ハイブリッドにいいイメージをお持ちでしょう。自動車会社がフレキシブルになるためには、ハイブリッドはとても良い選択肢の一つですし、その一方で今まで通りのクルマを好むお客様もいらっしゃる。というわけで、この先何年かは2本のレールで進むでしょうね。ハイブリッドやEVと従来通りのクルマ。ちなみに当社のハイブリッドは48Vマイルドハイブリッドが基本となります。

ボルボ技術を使った中国ブランドも

小沢 ボルボのラインアップは今後まだ増えていくんでしょうか?

サムエルソン 今のところこれ以外に小型車などを増やす予定はありません。まずは今ある40、60、90シリーズ。将来的に可能性がないわけではありませんが、今後は各シリーズでSUV、ワゴン、セダンの生産を続けていくということです。

小沢 ほかのプレミアムブランドはどんどんラインアップを増やす傾向にありますが。

サムエルソン ボルボは6年前が年間約35万台、16年が約53万台、今年は従来ペースを超えています。規模的には大体レクサスぐらいで、ランドローバーやジャガーもだいたい同列。もちろん100万台は突破したいですが、最も大切なのは台数を増やすことより、より良いクルマを造ることであり、時代にあったコンセプトを打ち出すことです。自動運転、EV、サブスクリプション・サービスなど、魅力あふれるクルマやサービスを提供できれば数字はおのずと伸びていくはず。台数を増やすために手段を選ばないのは、愚かなことですよ。われわれとしては欧州での市場獲得、アジアでの競争力の増強という目標があります。米国にも来週行きますが、そこでも伸ばしたいという希望があります。それを合計すれば80万台も達成できると考えています。

小沢 実は先日、同じ中国ジーリー・ホールディングス資本の新ロンドンタクシー製造会社に行って驚きました。ボディー製造には英国の技術を使っていましたが、エンジンやモーター技術はボルボ! 今後、グループとしてどう発展していくんでしょう?

サムエルソン それも一つの未来像です。彼らはボルボのパーツとテクノロジーを使い、新しい独自の車を造っています。彼らが独自にEVの技術開発を行うことは不可能ですから。それから今後ジーリーグループが出す新ブランド「Lynk&Co」も一つの未来像で、ある意味アウディと東欧メーカー、シュコダの関係に似ていると思います。当社としては技術を提供をする代わりに、サスペンション、ブレーキ、アクセルなど量産効果で製造コストを抑えることができる。一方、相手方は中国でかなり高品質なクルマを造ることができます。要するにウィンウィンの関係なんです。

小沢 なるほど。今までにないスウェーデン技術と中国マネーの共演とは。いや、すごい時代がやってきました。

ホーカン・サムエルソン(Hakan Samuelsson) スウェーデン出身。1977年、トラック、バス、サービスの販売を手掛けるスウェーデンのスカニアに入社。役職を歴任後、ドイツのマンに移りCEO兼会長を務める。2012年よりボルボ・カーズ 社長兼CEO
小沢コージ
自動車からスクーターから時計まで斬るバラエティー自動車ジャーナリスト。連載は日経トレンディネット「ビューティフルカー」のほか、『ベストカー』『時計Begin』『MonoMax』『夕刊フジ』『週刊プレイボーイ』、不定期で『carview!』『VividCar』などに寄稿。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)など。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、シティ・カブリオレなど。
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