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仮想通貨って? 実物はなくネットで世界の仲間と取引 相場は上昇 一部の店舗で決済可能

2017/11/12

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イチ子お姉さん ビットコインの価値が最近、急上昇していると話題ね。円やドルなど、普段私たちが使う通貨とは違うの。どんな仕組みか、想像できる?
からすけ 冒険ゲームの世界みたいに、どこでも共通で使えるお金みたいなもの? 両替の計算も必要ないから「世界は1つ」って感じかなぁ。

■ネットの取引に便利よ

 イチ子 ビットコインって知ってる? 個人どうしがインターネット上で取引する仮想通貨の代表例よ。私たちが普段使っている法定通貨(キーワード)とは違い、実際の紙や硬貨があるわけではないの。電子メールのように、お金を送ったり受け取ったりできる「サービス」と表現する人もいるわ。

<キーワード>
 法定通貨 国が法律で定め、価値を保証している通貨のこと。日本の円や米国のドル、中国の人民元など。円は日本銀行券(紙幣)と硬貨(貨幣)で構成される。国が決済や債務支払いの手段として認めている。通貨の偽造は、国家、人と人との信頼関係を壊す重罪として罰せられる。
 ICO(イニシャル・コイン・オファリング) 仮想通貨の技術を使って企業などが資金を集める方法。新規株式(IPO)に似せた考え方で、世界の投資家から必要な資金を調達する。中国や韓国など規制する国がある一方、米国は資金調達の手段として前向きな見方をしている。カナダやスイスは育成する考え。

 からすけ 触ることができないお金だから、仮想ってつくんだね。ニュースでも仮想通貨の話をよく聞くよ。でも、「Suica(スイカ)」や「PASMO(パスモ)」など、交通系電子マネーとはどう違うの。

 イチ子 交通系電子マネーは、鉄道会社などの発行元に事前にお金を預けておくの。誰か別の人にそのお金はあげられないし、使わなくなったら発行元で換金するわ。仮想通貨には発行元がなく、他人と直接やり取りできるの。価値を認める人どうしなら、世界中の個人と取引ができるのよ。

■実物はない 世界中の仲間とやりとり

 からすけ 僕らが普段使う円とか、米国のドルは直接やり取りできないの?

 イチ子 海外旅行や出張に行く時には、金融機関などで手数料を払って現地のお金に交換する必要があるわ。為替相場で1ドルが何円に相当するか毎日決まっていて、それに応じて交換するのよ。仮想通貨が生まれた背景には、インターネットなどで個人も海外と自在にやり取りできるようになるなか、個人が直接やり取りできる通貨があれば便利だという考えがあったと言われるわ。

 からすけ へえ、そうなんだ。いつ登場したの。

 イチ子 ビットコインは誕生して8年ほど。他にもイーサリアムやリップルなどという仮想通貨があるわ。日本は世界でも最大規模の仮想通貨の取引があるのよ。ビットフライヤーやコインチェックなどと呼ばれる、日本の仮想通貨取引所の取引が世界でも上位を占めているの。日本の投資家が多いと見られているわ。

 からすけ 通貨の価値はどうやって決まるの?

 イチ子 仮想通貨を使いたい人は、手持ちの円やドルをネット上の取引所でビットコインなどに交換するんだけど、新しく取引を始める人が続々と増えて、相場が上昇したの。今年に入り、短期間での値上がりで、安く買って高く売って差を利益として得ようという取引も増えていて、価値の変動幅が大きくなっているわ。その国の経済動向に応じて、価値が緩やかに変わる法定通貨とは違う点ね。

 からすけ 最近は仮想通貨を使って支払いできる店舗も増えているんだって?

 イチ子 家電量販のビックカメラ、旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)の一部店舗ではビットコインでの支払いが可能よ。あとは飲食店や歯医者さんなどの導入例が多いわね。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて訪日外国人が増えると、仮想通貨のやり取りは急速に増えるかもね。交通機関やスーパー、コンビニが決済手段として仮想通貨を導入するかどうかも、普及の鍵ね。

■中韓は資金調達を禁止、日本は仮想通貨に登録制導入

 からすけ でも中国や韓国では、政府の規制が入ったと聞いたよ。どういうことなの。

 イチ子 両国は9月、金融市場の安定や投資家を守るためとして、仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)(キーワード)の全面的な禁止を発表したの。国が管理しきれない仮想通貨を通じ、テロ支援活動にお金が流れ込んだら大変、という判断があったのね。

 からすけ 日本政府はどういう姿勢なの?

 イチ子 仮想通貨の存在を認め、法整備を進めているの。4月に改正された資金決済法では、基準を満たした登録業者のみ仮想通貨の交換を可能にしたの。14年に仮想通貨取引所のマウントゴックスが破綻し、多額のビットコインが消失する事件もあったわ。金融庁は広がるのはいいけど、利用者を保護しなくてはという考えね。9月下旬に11業者が登録、今は19社が審査中なんだって。

 からすけ 今後、仮想通貨はどのように広がるのかな。

 イチ子 海外の人とのお金のやり取りが容易になっていくわね。例えば、外貨に替えなくても、海外のボランティア活動に仮想通貨ですぐ寄付できるようになるなどよ。ただ国家はテロ支援防止や課税したい思惑から、お金の流れを把握したいと思っているの。

 からすけ 日本での取引量が多いなら、関連サービスが広がるかもね。ボクもIT(情報技術)と金融を勉強しなきゃ。

■運用支える 社会的信用

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 電子マネーや仮想通貨と、様々に姿を変えてゆくお金ですが、日本で貨幣が本格的に流通し始めたのは平安末期のことでした。平清盛が主導した日宋貿易で大量の宋銭が輸入され、通貨として用いられました。当時としては大変な衝撃だったようで、はやり病を「銭の病」と呼ぶほどでした。
 海外からやってきた貨幣経済は社会に浸透し、鎌倉時代になると為替まで生まれました。始まりは、神社や寺など宗教組織の経済活動だとされます。全国津々浦々に、本山・末寺や荘園のネットワークを持つため、重くかさばる銭貨を持ち運ぶことなくお金をやり取りしたいと考えられました。宗教という社会的信用力で、実際のお金に替えられる権利を書いた文書を保証しました。
 さて現在。インターネットの発達を背景に広がり始めた、新しい通貨の信用力はいかほどのものか。動向に注目してみましょう。

[日本経済新聞夕刊2017年11月4日付]

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