単価も高くなっている。ゲーム用キーボードの平均は2012年が5000円弱だったのに対して、16年は8000円弱と3000円も上昇した(ちなみに一般のキーボードのボリュームゾーンは1000~2000円だという)。「0.1秒の遅延が問題になり、キーの打ち間違いなどもってのほかという世界だけに、高くても性能の高い製品を求めようとする傾向が強い」(田村さん)

前出の辻村さんも周辺機器にこだわる一人。「自分の使いやすいようにカスタマイズできるマウスは欠かせない」という。2年前にゲーミングPCと一緒に買い替えたマウスはすでに壊れ、現在は2台目。ちなみにマウスは様々な機能を割り付けられるので、仕事にも役立つそうだ。

日本での盛り上がりはこれから

国内のパソコン市場を見続けてきたGfKジャパンのシニアアナリスト・佐竹俊介さんは「海外と比べると、日本のゲーミングPC市場はまだまだ小さい」と分析する。日本では海外に比べ、家庭用ゲーム機やスマホと、ゲームを楽しめる様々なツールが普及していることが影響している。さらにゲーミングPCの起爆剤と期待されているeスポーツも景品表示法などの問題で高額の賞金をかける大会が開けないなど日本ならではの課題も残る。

だが、それでも「確実に伸びているし、今後、さらに盛り上がる可能性がある」と分析する。

日本人は家庭用ゲーム機やスマホで養われた「ゲームをする」という土壌を持っている。「PCゲームのほうが面白いと伝えられれば、さらにゲーミングPCは盛り上がるはず」(佐竹さん)

17年9月、Amazonが9億7000万ドルで買収したことで話題になった、ソーシャルビデオプラットフォーム「Twitch」が、日本オフィスを設立すると発表した。Twitchは世界中のゲーマーたちに人気のSNS。世界では毎日1000万人のユーザーが訪れ、月220万人が配信を行っている。ここで見られるゲーム実況の多くが、PCをプラットフォームにしたものだ。同社によると「日本の成長率は世界で3番目で、成長率は年2倍」。辻村さんも「自分ではできない、信じられないようなプレーが見られるので、Twitchは楽しい」という。

ゲーマーに人気のSNS「Twitch」。画面下に「視聴者数の多いゲーム」として表示されているゲームタイトルをみると、PCゲームが多いことがわかる

「世界のトッププレーヤーが使っているのは家庭用ゲーム機ではなくゲーミングPC。彼らに憧れた子どもたちはゲーミングPCに関心を持つようになる可能性も大きい」と田村さん。

ソフマップの石上さんによると、親にねだるには高すぎるのか、休日に祖父母と一緒に買いに来る小中学生の姿も見られるという。子どもたちが遊ぶのは家庭用ゲーム機、という日本の常識も変わってくるのかもしれない。

(ライター カネコシュウヘイ、大谷真幸=NIKKEI STYLE)