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住宅ローン 金利タイプどう選ぶ? 余力あれば変動も 住宅ローンの選び方(上)

2017/11/12

PIXTA

 ある夜の筧家。良男が会社から帰宅すると、幸子と息子の満がダイニングテーブルで熱心に話し込んでいます。テーブルの上には住宅ローンのパンフレットがずらり。まだ15歳の満がなぜ住宅ローンに興味を持ち始めたのでしょうか? 良男は不思議でなりません。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中) 筧満(かけい・みつる、15) 

 良男 きょうは何事だ? 満、いくら何でもまだ住宅購入を考える年じゃないだろう。

  仲の良い同級生が今度、駅前の新築マンションに引っ越すんだ。彼の両親が住宅ローンを選ぶ時にずいぶん悩んでいたと聞いて勉強しようかと。

 幸子 マンション自体よりローンに関心を持つのが満らしいわ。さて、住宅ローンを理解するにはまず金利タイプの違いを知る必要があるわね。

 良男 それなら私でも分かるよ。変動と固定だろ?

 幸子 そうね。大きく分ければ金利は3タイプ。まず通常は半年に一度、金利を見直す変動型。次に2~10年など借入期間の当初だけ金利が変わらないようにする当初期間固定型。そして借入期間中はずっと金利が変わらない全期間固定型よ。

  3つのタイプのうち、金利が低いのはどれなの?

 幸子 一般的には変動型が最も低いわ。11月の適用金利でみると、大手銀行は年0.625%とする例が多いの。次が当初期間固定型、最も高いのは全期間固定型という順番が普通ね。住宅ローンは35年などの長い時間をかけて返す例が多いの。遠い将来の金利予測は難しいから、固定の期間が長いほど金利上昇リスク分が計算に入り、高めの金利となるわ。ただ今は全体的に金利は低いから、全期間固定の住宅金融支援機構「フラット35」でも主力タイプは11月で最低金利が1.37%よ。

 良男 変動型を選んだら毎月、金利が気になるなぁ。

 幸子 毎月、金利が変わるわけではないのよ。金利が動くのは半年に一度とするのが普通。多くの金融機関は新しくローンを借りる人向けの金利を毎月発表するから「金利が変わる」と思い込む人もいるけど、すでに借りた人の金利は通常、それほど頻繁に変わらないのよ。

  それでも金利が上がったら返済が増えて大変だね。

 幸子 変動型は金利上昇時も返済額を急増させない仕組みがあるのが普通よ。一つが金利変更があっても5年間は毎月返済額は変えないというルール。もう一つが返済額が増えるとき、増加の限度を前回返済額の125%までとするルールよ。

 良男 それなら、あまり心配しなくていいのかな。

 幸子 ただし、当面の返済額の増加を避けただけで返済が軽減されたわけではないわ。つまり、返済額の内訳として、金利上昇分を利息に反映する一方で元金部分の割合を減らすなどの調整をするからで、元金の減りは鈍くなるわ。一部に5年ルールなどを採用しない金融機関もあることも注意が必要よ。

  当初期間固定型は?

 幸子 例えば、子供のいる世帯が「今後10年は教育費がかかるので、この間だけは金利上昇リスクを避けよう」といった意識で選ぶような例があるの。ただ、注意点もあるわ。適用金利を決める時、基準金利から一定の優遇をする金融機関が多いんだけど、固定期間が終わった後にこの優遇の幅が縮小する例があるの。もし固定期間が終わった後、基準金利も上昇していたら、優遇幅の縮小とダブルパンチになり、思っていた以上に返済負担が重くなる可能性もあるわね。

  その点では全期間固定型は安心だね。

 幸子 借入期間中は金利は変わらないから、金利上昇リスクは気にせず済むわ。全期間固定型はフラット35が有名だけど、最近は大手銀行の一部も30~35年の全期間固定型に力を入れ、フラット35より低い金利を提示するところもあるわ。ちなみにフラット35は以前、別払いだった団体信用生命保険(団信)の費用が10月から毎月の返済額に含まれるようになり、民間銀行と比較しやすくなったの。

 良男 比較できる選択肢が増えるのはいいことだな。

 幸子 ちなみにフラット35も金利は多くの金融機関で一緒だけど、借りる時に必要になる融資手数料は意外に差があるの。住宅ローンコンサルティングのMFS(東京・新宿)の塩沢崇取締役によれば「借入額の2.16%が一般的だが、0.5~1%程度と低めに設定する金融機関もある」そうよ。

  結局どの金利タイプがいいのかなぁ。

 幸子 一概には言えないわ。借入額が小さく、将来もし金利が上昇しても返済できるだけの貯蓄がある世帯なら、変動型で低金利のメリットを享受するのも一つの考え方よ。ただ、金利が上昇したら家計が苦しくなる心配があるなら全期間固定型を軸に考える方が無難ね。

  色々とシミュレーションすべきなんだね。

 幸子 試算するときはインターネットで情報収集するだけでなく、各金融機関の審査の方針も知る必要があるの。MFSの塩沢さんは「金利の高低と返済能力の審査の厳しさは密接に関係する。例えば低金利のネット銀行の審査は総じて厳しい」と教えてくれたわ。最近では大手の金融機関が新規の住宅ローンから撤退するという話題も出たばかり。ネットで低金利の金融機関を見つけても、常にその条件で借りられるとは限らないと考えておくべきね。

■元金や返済期間に注意を
 ファイナンシャルプランナー 久谷真理子さん
 金利と毎月の返済見込み額だけを見て住宅ローンを選んでしまう人がいますが、借りる元金の大きさにはもっと注意が必要です。現在の金利は低いですが、元金が大きすぎると家計運営は不安定になります。「年収の何倍までの借入額なら安心」とも単純に言えません。現在は年収が高い世帯も将来、年収が減ったり、教育費などで出費が増えたりする可能性があるなら、適正な借入額も変わるからです。
 返済期間も軽視できません。特に会社員の場合、定年退職前に完済することが基本です。個人差はありますが、定年前後は年収が下がるケースが多く、返済が行き詰まりかねません。手間はかかりますが、将来の収入や出費の見込みも含め、きちんと返済を続けられるか、ローン契約前には必ず試算しましょう。
(聞き手は堀大介)

[日本経済新聞夕刊2017年11月8日付]

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