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カリスマの直言

にぎわう日本株 それでも投資は淡々と(渋沢健) コモンズ投信会長

2017/11/13

1996年の高値を上回り、取引を終えた日経平均株価(11月7日午後、東京都中央区)
「日本株は現在、バブルではないとしても調整局面はいずれ訪れる」

 日本の株式相場が突如としてにぎわっている。衆院選後の10月下旬から日経平均株価は騰勢を強め、11月7日には1996年6月に付けたバブル経済崩壊後の戻り高値(2万2666円)を上回り、92年1月以来約26年ぶりの高値となった。9日には取引時間中に2万3000円台を回復し、売買代金が3年ぶりの高水準となるなど活況を呈している。

 それまでは「適温相場」といわれ、値動きが乏しかったが衆院選で与党が圧勝し、風向きが変わった。アベノミクスによる金融緩和継続への期待が背景だ。11月に入っても、相次ぐ好決算の発表、iPhone Xの発売、米連邦準備理事会(FRB)次期議長に「ハト派」のパウエル理事が指名されるなど追い風が吹いている。

 ただ、何十年ぶりの高値というと、現在の状況はバブルではないかという不安がよぎるかもしれない。そこで、少し考えてみよう。

 日経平均株価を東証株価指数(TOPIX)で割った「NT倍率」は現在約12.6倍で推移しており、10月に急上昇した。適温相場で売り建てた日経平均先物の買い戻しに加え、外国人投資家が日本株のエクスポージャー(加重)を素早く引き上げるために、流動性が高い日経平均先物を買い入れたという投機的な動きもあったと推測できる。上げ相場のピッチの高まりは、買い損ねた投資家の悲鳴とも連動している。投資家心理が一変したのは確かであろう。

■現在はバブルとはいえないが…

 バブルとは企業業績などのファンダメンタルズ(基礎的条件)と比べて株価が過剰に割高になっている状態だ。今はどうか。ファンダメンタルズでいえば、企業の利益は過去最高を更新している。日本株の予想PER(株価収益率)は現在、平均で16倍台だ。バブル期の80年代は60~80倍ぐらいであり、そういう意味で現在の株価水準はバブルとはいえまい。

一橋大学大学院・国際企業戦略研究科で渋沢栄一の「論語と算盤」の現代的意義について英語で日本人・外国人の受講者に講義した。東西や時代を超える普遍性を確認した

 例えば、弊社のコモンズ30ファンドの投資先であるコマツは2018年3月期の業績予想について大幅な上方修正を発表した。連結純利益は前期比40%増の1590億円と従来予想の19%減から一転して増益となる。好業績を織り込む形で株価もこの3カ月で30%ほど上昇している。

 同社は「中国関連銘柄」として知られるが、資源価格が低迷した数年間は主力商品である建機販売が停滞し、投資家に不人気であった。しかしながら、弊社はコマツのグローバルな競争力と長期での成長性を高く評価しており、株価が安いときはすかさず株式の買い増しに動いた。今になってそれが大きな含み益につながっている。

■調整局面はいずれ訪れる

 これが、弊社が基本とする長期的な積み立て投資の醍醐味だ。株式の買いのタイミングを逃した短期筋が多い中、弊社は焦ることなく毎月少額を買い入れてきた。上昇相場が訪れたときにも、余裕を持って投資判断ができる。弊社のように積み立て投資の口座が多い運用会社は、顧客である受益者のおかげで良好な運用を実現できるといっても過言ではない。株価低迷期に買い増しできるのは受益者が毎月資金を投じてくれるからだ。

 とはいえ、現在がバブルではないとしても調整局面はいずれ訪れる。また、多くの企業は業績が好調であり、株高を正当化できるものの、赤字状態が続いているベンチャー企業については過大な期待感がはげ落ちる可能性が否定できない。

 適温相場のことをゴルディロックス相場という。英国の童話「ゴルディロックスと3匹の熊」が由来で、ストーリーは以下のようなものだ。3匹の親子熊は朝食にスープを作る。ところが熱すぎたので、冷ます間、散歩に出た。その留守宅にゴルディロックスという女の子が上がり込む。

11月初旬に開催された日経Wアカデミーの「お金の学校」の講師として登壇した。初心者を含め、長期的な積み立て投資への関心の裾野が広がっていることを実感した

 空腹のゴルディロックスは、熊のスープに手を出すのだが、最初の器は熱すぎる。次は冷めすぎ。3つ目は熱くもなく冷たくもなく、適温。ゴルディロックスはこれを完食した。ここから、経済や相場が過熱せず冷めすぎてもいない状況をゴルディロックスと呼ぶようになった。

 しかし、この物語には結末がある。やがて熊が戻ってきた。自分たちのスープは食べられ、3つの椅子には座った痕があり、1つは壊されていた。熊が留守中にゴルディロックスは好き放題をしていたのだ。子熊のベッドに寝ているのを発見されたゴルディロックスは驚き、慌てて家から逃げていった。

■長期で報われるのは継続した投資

 いずれ、熊は戻ってくるのだ。相場の世界では熊はベアマーケット(弱気相場)のことを指す。弱気相場はいずれやってくるであろう。

 しかしながら、ゴルディロックスは慌てて逃げたが、積み立て投資を実践している長期投資家は逃げる必要はない。定時定額の積み立て投資は「高値では少ない口数、安値では多くの口数」を購入するのが特徴だ。その効用は高値づかみの回避と安値での購入だ。

 大きな下落局面は株式を安値で仕込むチャンスと前向きにとらえるぐらいであってほしい。過去の例を見ると、長期で報われるのは短期的な市場動向に一喜一憂することなく、継続して投資できるかどうかだ。その点で、来年スタートする積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)は大いに活用したい制度だ。相場のにぎわいとは一線を画し、これからも淡々と投資していこう。

渋沢健
 コモンズ投信会長。1961年生まれ。83年米テキサス大工学部卒。87年カリフォルニア大学ロサンゼルス校MBA経営大学院卒。JPモルガンなどを経て、2001年に独立し、07年コモンズ株式会社(現コモンズ投信)を創業、08年会長就任。著書に『渋沢栄一 100の金言』(日経ビジネス人文庫、2016年)など。

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