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白河桃子 すごい働き方革命

雑談が弾む日は売り上げも増 働き方をデータで改革 日立製作所研究開発グループ技師長・矢野和男さん(後編)

2017/11/15

 「困難な挑戦をするには、人やお金だけあっても不十分で、精神的な原資が必要です。それこそがハピネス(幸福)」と語るのは、日立製作所の研究開発グループ技師長・矢野和男さん。同社では「組織の幸福度が高いほど、知的生産性は上がる」、それをデータから検証する研究を行っています。前編の「不幸な社員、体の動きで察知 アプリで助言、職場強く」に引き続いて、幸福度を高めて知的生産性を上げるためには、どのようなことを実践すればいいかを詳しく伺います。

日立製作所の矢野和男さん。腕にはめているのが人間の身体の動きを測定できるリストバンド型センサー(写真:吉村永、以下同)

■ハッピーな人、アンハッピーな人とは?

白河桃子さん(以下、敬称略) 例えば、「人は追い込まれたほうが成果が出やすい」という話が昔からありますけど、実際のところはどうなのでしょうか。

矢野 そこが非常に重要な部分です。それこそが、まさにハピネスなんですよ。

 米国に「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」という研究雑誌があります。そこで発表された論文の中に、興味深い話が載っていました。

 短いアンケートを取るスマホアプリを使って、「今、何をしていますか?」「今、どんな気持ちですか?」という質問の回答を大量に取ってみたところ、「今の気分は、いまいちです」と答えた人たちの数時間後に増えている行動は、気晴らしや運動、散歩でした。

 一方「今、調子がいいです」と答えた人の数時間後に増えている行動は、しんどかったり、面倒を感じていたりしていても大事なことをやっているんです。

 つまり、アンハッピーな人は、やる必要のないことをやっている。ハッピーな人は、困難でしんどいことをやっている。逆に言えば、ハピネスという原資がないと、しんどくて困難なことには挑戦できないということです。

 困難な挑戦をするためには、人やお金だけあっても不十分で、精神的な原資が必要です。それこそがハピネス。ハッピーな人は、困難な状況になるとよりがんばれますし、逆にアンハッピーな人は、そういった状況に置かれると、ますます力が出なくなるのです。

白河桃子さん

白河 ハピネスが困難に挑戦するための原資……素晴らしいですね。

■幸せは、がんばった後にやって来るのではない

矢野 では、ハピネスについてもう少し深く考えてみましょう。心理学者のチクセントミハイによると、様々な職業の人の行動を調べた結果、充実感がある人たちには、ある大きな特徴があったそうです。

 簡単な図を使って説明します。チャレンジ度が高く、スキルも発揮できる「フロー」(図右上)の状態に入ると、その人は目の前の作業に没頭し、それ自体をエンジョイして、やればやるほど充実感を感じます。

白河 逆に、チャレンジしてもうまくできなければ、ハッピーではなくなってしまいますよね。

矢野 そうです。チャレンジしても、スキルがなかなか発揮されない状況は、この図でいうと左上の「不安」にあたります。また、スキルは発揮できていても、チャレンジ度が低い場合は右下に含まれ、「余裕」が出てくるといえます。チャレンジ度が低い上に、スキルも発揮できないと、「無気力」になってしまいます。

 ただし、人はどんどん習熟していきますから、今「フロー」にいても、同じことをやっているとチャレンジ度が低くなってきて、「余裕」のエリアに落ちてきてしまうのです。

白河 ちょっとしたチャレンジがないと、充実感が落ちてきてしまうんですね。

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