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「トンカツ誕生前」のカツ丼 福井、ソースで数枚盛り

カツ丼礼賛(9)

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NIKKEI STYLE

福井のカツ丼といえばソースカツ丼というのは、カツ丼好きの間ではよく知られている。またカツ丼の元祖はソースカツ丼だという逸話は、数あるカツ丼発祥説の中でも有力なものだ。それは、100年以上前の1913年(大正2年)に早稲田でソースカツ丼を生み出したとされる「ヨーロッパ軒」の創業に由来する。

現在の「ヨーロッパ軒」は福井に本店を構えている。1924年(大正13年)、創業者の高畠増太郎氏が、前年の関東大震災をきっかけにふるさと福井に店舗を移し、ソースカツ丼を提供したことから、福井県では「カツ丼といえばソースカツ丼」になったと考えられる。

ソースカツ丼といえば、どんぶり飯の上に千切りキャベツが敷かれ、その上にソースがたっぷりとかかったトンカツがのる、といった形が一般的なイメージだと思う。しかし、「ヨーロッパ軒」をはじめ福井のソースカツ丼はちょっとイメージが違う。

切り分けられた1枚の厚いトンカツがのるのではなく、薄目の大きいトンカツがどんぶりに複数枚のる、というのが一般的なスタイルだ。そして多くの場合ふたがついている。

昭和48年創業の「ふくしん」はデカ盛りで有名な地元福井の老舗人気店だ。並盛でも全然ふたが閉まらない。大盛りになれば言わずもがな。しかし玉子とじカツ丼のように、蒸らすことも目的としたふたではないことは一目瞭然。ではなぜふたが必要かといえば、簡単に言えばふたがないとご飯にたどり着けないのだ。

カツが大きすぎて、しかもスタンダードのカツ丼でも3枚くらいカツがのるので、取り皿代わりのふたが不可欠なのだ。お店によってはこのふたに各店特製のソースを注ぎ、カツをソースにつけながら食べるというスタイルも、他の地域では見られない独特の習慣だ。

トンカツが1枚どんぶりに鎮座するスタイルではなく、複数枚のカツが積まれるスタイルが生まれたのは、なぜか? それは、トンカツとカツ丼の歴史をたどると分かってくる。

まずは、トンカツの歴史をさかのぼってみよう。

現在は、てんぷらのようにたっぷりの油で厚いカツを揚げるのが一般的だが、そもそも本場欧州のカツレツは牛肉を少ない油で揚げ焼きにするものだった。

そのスタイルを作ったのは、現在も人気を博す明治28年創業の老舗洋食店、銀座の「煉瓦亭」だ。

トンカツの元祖と言われる煉瓦亭は、明治32年に当時は牛肉が一般的だったカツレツに豚肉を使い、多くの注文に応えようと、てんぷらのようにたっぷりの油で揚げるという調理法に変えたそうだ。

さて「ヨーロッパ軒総本店」には創業100周年を記念して限定で出されているシュニッツェルというメニューがある。ヨーロッパ軒のソースカツ丼の原点とされ、豚肉を薄く延ばして揚げ焼きにした料理で、オーストリア・ドイツで現在でも親しまれている。ソースは3種類。写真上の左からシュニッツェルで一般的なアンチョビソース、真ん中はイギリス発祥の元祖ウスターソースのリーペリンソース、右端は「ヨーロッパ軒」のオリジナルソースだ。

日本にまだいわゆる「トンカツ」が存在していないころに「カツレツ」をどんぶりにのせるという発想で誕生したソースカツ丼は、そのスタイルを100年以上継承して今に至っている。だから福井のソースカツ丼はカツレツ由来の薄目の大きなカツがのったスタイルで定着したのだろう。

ちなみに「ヨーロッパ軒」はのれん分けで複数のお店が福井県内にあるが、お店ごとに独自のメニューが存在する。昭和14年にのれん分けの第1号になった「敦賀ヨーロッパ軒」は、昭和48年にメニューに加わったメンチカツのカツ丼「パリ丼」の発祥店。

ほかにもユニークなメニューとしては「ヨーロッパ軒花月分店」の「玉子かけカツ丼」。ほかのヨーロッパ軒にはめったにない希少なメニューだ。昭和40年代の創業時からソースが苦手な人向けに作ったメニューで、2枚のカツの上に文字通り玉子とじがかけられるようにのっている。

ヨーロッパ軒の影響を強く受けている福井市、敦賀市周辺は基本的にソースカツ丼圏。その中でソース味の玉子とじはないかと探してみると、3軒のお店を発見。しかし残念ながら鯖江市の「ふく福」「ことぶき」の2店はすでに閉店していた。

唯一、確認できたのが福井市の「やす竹」。創業昭和54年。カツ丼は先代のころからこの形でやっているとのことで、カツにはソースなどの味付けはなく、ソース味の青ネギの入った玉子とじが上にのる。だしとともにソースが香り、ごはんにしみる玉子とじの汁気はソースの味がしっかりわかるため、この汁気だけでもご飯をおいしくいただける。

ソース味の玉子とじは、長野、福島でも存在を確認しているが、どちらもカツとともに煮る一般的な玉子とじスタイル。関西風の後のせのソース玉子とじは初めての出合いだ。しかしこれだけではなく、さらにユニークなソースと玉子のコラボのカツ丼がある。

坂井市の「エル」は昭和28年創業の喫茶店。もともと食堂から始まったお店で、カツ丼は昆布とカツオのだしの優しい味の玉子とじで、ソースが中央に少しだけかかっている。それがアクセントになっており、卵とソースが不思議とマッチしていて自然に食べ進めることができる。

玉子カツ丼にソース、という意味では同じ系統だが、昭和35年創業、大野市の「いろは栄」はさらに個性的だ。カツはクリスピーと表現するとしっくりくるカリっとした食感。特筆すべきはカツに後のせされている、ふわトロオムレツの中身のような卵。このスタイルでのカツ丼の歴史は50年以上だそうだ。

関西系のうどんだしをベースに甘味などの味を加えているとのことで、だしがふわっと香り、薄口しょうゆのためきれいな卵の黄色で甘めの味付け。中濃系のソースは果たして合うものかと思うが、アクセントとしても不思議に合っている。

県の中央部、鯖江・武生には、ソースはかかっていないが、ふわトロ卵の後のせカツ丼が散見される。創業年ははっきりしないが、60年以上の鯖江の老舗、橋詰食堂のカツ丼は、青ネギが入っただしがしっかり効いているふわトロ卵がカツの上にかかっている。

半熟ほど柔らかくはなく、表面の見た目よりちゃんとした卵の層はカツと同じくらいの厚みがある。黄身と白身がしっかり混ざっており、甘味はそれほどなく、だしで食べさせるイメージだ。

最後はおそらく全国でここでしか見たことのないダブルソースのカツ丼だ。鯖江の「味見屋」のカツ丼は、見た目にはデミソースのカツ丼だが、ちょっと秘密がある。ご飯にキャベツが敷かれ、そこに福井で一般的なソースカツ丼のあっさり目のソースがかかる。そのままでもご飯がおいしく食べられるのに、カツをのせた後、さらにデミグラス系ソースがかかるのだ。

福井のカツ丼にここまでバリエーションがあるとはちょっと予想外だった。ソースに関係するバリエーションの豊富さは、ソースカツ丼王国・福井らしいユニークさである。

(一般社団法人日本食文化観光推進機構 俵慎一)

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