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食の達人コラム

「トンカツ誕生前」のカツ丼 福井、ソースで数枚盛り カツ丼礼賛(9)

2017/11/10

 福井のカツ丼といえばソースカツ丼というのは、カツ丼好きの間ではよく知られている。またカツ丼の元祖はソースカツ丼だという逸話は、数あるカツ丼発祥説の中でも有力なものだ。それは、100年以上前の1913年(大正2年)に早稲田でソースカツ丼を生み出したとされる「ヨーロッパ軒」の創業に由来する。

 現在の「ヨーロッパ軒」は福井に本店を構えている。1924年(大正13年)、創業者の高畠増太郎氏が、前年の関東大震災をきっかけにふるさと福井に店舗を移し、ソースカツ丼を提供したことから、福井県では「カツ丼といえばソースカツ丼」になったと考えられる。

ヨーロッパ軒総本店のカツ丼 「複数枚のカツ」が福井仕様

 ソースカツ丼といえば、どんぶり飯の上に千切りキャベツが敷かれ、その上にソースがたっぷりとかかったトンカツがのる、といった形が一般的なイメージだと思う。しかし、「ヨーロッパ軒」をはじめ福井のソースカツ丼はちょっとイメージが違う。

 切り分けられた1枚の厚いトンカツがのるのではなく、薄目の大きいトンカツがどんぶりに複数枚のる、というのが一般的なスタイルだ。そして多くの場合ふたがついている。

 昭和48年創業の「ふくしん」はデカ盛りで有名な地元福井の老舗人気店だ。並盛でも全然ふたが閉まらない。大盛りになれば言わずもがな。しかし玉子とじカツ丼のように、蒸らすことも目的としたふたではないことは一目瞭然。ではなぜふたが必要かといえば、簡単に言えばふたがないとご飯にたどり着けないのだ。

ふくしんのカツ丼 巨大なカツを皿代わりのふたに移さないと食べにくい

 カツが大きすぎて、しかもスタンダードのカツ丼でも3枚くらいカツがのるので、取り皿代わりのふたが不可欠なのだ。お店によってはこのふたに各店特製のソースを注ぎ、カツをソースにつけながら食べるというスタイルも、他の地域では見られない独特の習慣だ。

 トンカツが1枚どんぶりに鎮座するスタイルではなく、複数枚のカツが積まれるスタイルが生まれたのは、なぜか? それは、トンカツとカツ丼の歴史をたどると分かってくる。

 まずは、トンカツの歴史をさかのぼってみよう。

 現在は、てんぷらのようにたっぷりの油で厚いカツを揚げるのが一般的だが、そもそも本場欧州のカツレツは牛肉を少ない油で揚げ焼きにするものだった。

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