自動運転、五輪で主役デビュー 競技場まで選手送迎も世界に先進性アピール、異業種やベンチャーにもチャンス

トヨタが目指す「コンセプト愛i」では、AIが運転手のストレスを把握して自動運転への切り替えを提案する(11月3日、東京都江東区の東京ビッグサイト)
トヨタが目指す「コンセプト愛i」では、AIが運転手のストレスを把握して自動運転への切り替えを提案する(11月3日、東京都江東区の東京ビッグサイト)

IT(情報技術)業界も巻き込みながら、実用化に向け開発競争が加速する自動運転車。東京五輪・パラリンピックでは競技場への選手の送迎や大会関係者を首都高などで試乗してもらうなど、様々なイベントも計画している。オリパラという格好の舞台で日本勢はその先進性をアピールできるか。

AIで運転手の感情や嗜好を理解

10月下旬、東京モーターショーでトヨタ自動車が発表したのが「コンセプト愛i」。搭載されているAIは単に自動運転を担うだけではない。運転手の表情や動作、会話履歴などのビッグデータを蓄積していき、その人の感情や嗜好を理解する。例えば運転手のストレスを把握し、不安がある場合、自動運転モードへの切り替えを提案する。

トヨタはクルマを運転手の「パートナー」となる存在に変えようとしている(10月30日、東京都江東区の東京ビッグサイト)

AIに記憶された情報やデータは自動車を買い替えても引き継がれていく。このため、長い年月をかけて運転手のデータが蓄積され、「単なるクルマにとどまらず、パートナーとなる存在」(ディディエ・ルロワ副社長)へと変わっていく。20年にはこの機能の一部を搭載した車両で公道実証実験をする計画だ。

トヨタは昨年、AIの研究を手掛ける子会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」を米国に設立。著名なロボティクス・AIの研究者、ギル・プラット氏をトップに招き入れた。その後、米半導体大手のエヌビディアなどとも提携するなど、これまでの「自前主義」にこだわらない開発体制も敷き、自動運転の開発を加速させている。すでに市販車として実用化のメドも見えてきた。

「20年に向け、さらなるチャレンジを続ける」。モーターショーでは、高級車ブランド「レクサス」部門を率いる沢良宏常務役員はこう力を込め、「LS+コンセプト」を披露した。

20年の販売を想定して開発している車種のコンセプトカーで、高速道路での自動運転を実現する「ハイウエー・チームメート」という機能を搭載している。高速道路入り口を通過すると自動運転モードに切り替わり、前方車両の追い越しから、車線変更、合流や分岐を提案してくれる。運転手の承認を得れば、自動で運転をしてくれる仕組みだ。

トヨタは自動運転の対象エリアを20年代前半に、一般道にも広げる計画。この頃には、高速道路などのエリア限定で完全自動運転ができる「レベル4」の技術も確立させていく方針だ。

マセソンさんとの出会い、背中押す

トヨタが自動運転に本腰を入れ始めたのは、五輪・パラリンピックとも浅からぬ関係がある。

「自動運転は事故や事故の被害者を完全になくせるかもしれない」。トヨタ自動車が9月、米国テキサス州の北米本社で開いた投資家向けイベント。豊田章男社長はスピーチで自動運転についてこう語り始めた。

自動車のコモディティー化につながりうる自動運転技術に当初、豊田社長は「全く関心がなかった」。それを変えたきっかけのひとつが長野パラリンピックの金メダリスト、マセソン美季さんとの出会いという。

交通事故で下半身不随となったマセソンさん。トヨタが2015年、国際パラリンピック委員会(IPC)と最高位のスポンサー契約を結んだことからマセソンさんと出会った豊田社長は自動運転の重要性を強く感じることになった。

トヨタはAIを活用し、事故から守ったり、自らの嗜好や健康状態を理解したりしてくれる「パートナー」としての側面をクルマの新たな価値に据える。20年はそのトヨタのチャレンジの一端をアピールする格好の舞台になる。

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