2017/11/8

2020フォーラム

――地元の人にとっても、大会は刺激になっているのではないですか。

「東北の人たちに少しでも自分たちの魅力に気づいてもらいたいと思って、大会を開いています。地元の人が外の人と接することで、改めて自分たちの魅力に気づき、外に情報発信する動きが生まれるのはうれしいですね。(私のように)東北の外の人間が大会を運営している意味もそういうところでしょう。地元の人が気づかないことに外の人間が気づくのです」

「マラソンで東北と世界をつなぐ」と語る竹川氏

――具体的に、どんな事例がありますか。

「大会に合わせていろいろなツアーを企画していて、地元の農家でホウレンソウを収穫体験した後に、そのホウレンソウを具材に使ったみそ汁を飲んでもらったことがあります。当初、地元の人は『それがどうしたの』という反応でしたが、香港や台湾からの参加者が喜んでみそ汁を飲み、ホウレンソウを買って、ツアーが大人気になると、地元の人たちも『これは世界に誇れるアセットなのだ』と気づいてくれました。外国人が日本酒をおいしいと言って飲んで、それに刺激された蔵元が新製品を開発した例もあります」

20年に南三陸と結ぶフルマラソンを構想

――東京五輪・パラリンピックが開かれる20年には、どんなことをしたいですか。

「やはり20年は象徴的な年ですね。その年の春に開催する東北風土マラソンは、オリパラの開催をフックにして次の成長につながる大会にしたいと思っています。7000人の参加者を1万人に増やしたいですし、そのときには外国人の参加者も1000人ぐらいになっているといいですね」

「もうひとつひそかに考えているのは、登米市と南三陸町をつなぐコースを設定して、復興の象徴的な大会にすることです。南三陸町町役場から東北風土マラソンのメイン会場までの距離が40キロちょっとですから、1000人ぐらいがフルマラソンで走る。東北風土マラソンのメイン会場で(従来のコースを走る参加者と)合流し、最後は東北の魅力を味わって帰ってもらう。そんな大会にしたいですね。これが実現すれば、大会前日には南三陸町に1000人ぐらいが宿泊することになるでしょう。そういうことができるのが、20年というひとつの区切りです」

――日本にとって、20年のオリパラはどんな意味があるのでしょうか。

「日本人にもっと日本の魅力を理解してもらい、その魅力を発信したくなるきっかけになることを期待しています。オリパラによって海外から来る人の目にさらされますから、海外に行かなくても、日本の魅力に気づくきっかけになります」

――大会の魅力を高めるため、ほかに考えていることはありますか。

「障害を持つ人の参加ですね。これまでも『障害者の方でも大丈夫ですよ』と言っていたのですが、それだけでは参加しづらいので、18年春は『障害者の方を集めています』という仕立てにしました。伴走者とペアで500メートルを走るほか、ボランティアと一緒に会場で開かれるフードフェスティバルなどを楽しんでもらいます。登米・南三陸を中心とした4カ所ほどの福祉施設と協力関係を築いており、障害を持つ約50人の子供が参加してくれる予定です」

――東北風土マラソンは東北6県といっても、現状は宮城県が中心です。どうやって広げていきますか。

「ほかの地域から東北風土マラソンを開きたいという希望があれば、ノウハウを提供したいです。フランチャイズチェーンのように(同じ名前を冠した)『東北風土マラソン・イン盛岡』などがあってもいいのではないでしょうか」

竹川隆司
 1977年神奈川県生まれ。2000年国際基督教大教養卒、野村証券入社。06年に米ハーバード大の経営学修士号(MBA)を取得、英国野村証券で法人営業などを担当した後、東京やニューヨークで起業・ベンチャー企業経営を経験。14年から「東北風土マラソン&フェスティバル」を宮城県登米市で開催。17年スポーツ振興大賞を受賞。

東北風土マラソンの体験記「飲んで食べて仮装して 記者も走った東北風土マラソン」もお読みください。17年3月に開催された第4回大会のものです。

日経からのお知らせ 日本経済新聞社は11月9日、2020年東京五輪・パラリンピックと日本経済の活性化を考える第2回日経2020フォーラム「2020年から見えるインバウンド新時代」を開催しました。小池百合子東京都知事、大会組織委員会の御手洗冨士夫名誉会長、東京海上日動火災保険の北沢利文社長らが登壇。東北風土マラソン&フェスティバルの竹川隆司代表理事、エアビーアンドビー日本法人の田邉泰之社長、元競泳日本代表の伊藤華英さんらによるパネル討論も実施しました。当日の模様は、日経が運営する映像コンテンツサイト「日経チャンネル」(http://channel.nikkei.co.jp/businessn/171109tokyo2020/)でご覧いただけます。