TOPIX連動投信 「見えざるコスト」のツケは誰にQUICK資産運用研究所 北澤千秋

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すべての上場銘柄に投資する東証株価指数(TOPIX)連動の投信信託は長期運用の対象として妥当なのか――。積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の開始を年明けに控え、運用業界の一部からそんな懸念の声が出ている。

つみたてNISAの主力商品はインデックス型投信だ。中でもTOPIXは市場全体をカバーする株価指数として多くの機関投資家が運用に利用している。しかし、日銀や公的年金などによる指数連動の株式購入が膨らむにつれて株価形成がゆがみ、時価総額が小さい銘柄の買値がつり上がる「見えざるコスト」がかさんでいるという。世界の市場でも、行き過ぎた「運用のインデックス化」がもたらす弊害を問題視する声が高まっている。

小型株優位の相場はなぜ続く

「TOPIX連動型の運用には構造問題がある」。農林中金バリューインベストメンツの奥野一成常務は指摘する。

TOPIXを構成するのは東証1部に上場する約2000の全銘柄。1銘柄当たりの時価総額は平均で約3000億円と、米国株式市場の代表的指数であるS&P500種の同約5兆円に比べて極端に小さい。一般的なアクティブファンドが「流動性の低さを理由に投資対象から外す」(伊井哲朗コモンズ投信社長)という、時価総額300億円未満の銘柄も全体の3分の1程度を占める。

問題なのは、こうした時価総額の小さい小型株だ。指数連動型のファンドは原則すべての銘柄を買うので、小型株の株価は大型株以上に上がりやすい。一方で、株式は保有し続けるため、もともと浮動株(実際に売買が可能な株式)が少ない小型株の流動性は低下。結果として小型株の取引コストが上昇している。以下、順を追って説明しよう。

ここ数年、小型株の株価が大型株に比べて相対的に優位なのは明らかだ。東証1部の時価総額上位で構成するTOPIX 100が過去1年に27%上昇したのに対し、時価総額下位で構成するTOPIX Smallの上昇率は35%だった。過去3年を見てもそれぞれ28%と50%で、小型株が大型株を上回っている。

なぜか。QUICK FactSetを使ってTOPIX 100とTOPIX Smallの採用銘柄について、ここ数年の売上高営業利益率や自己資本利益率(ROE)の推移を比較してみたところ、小型株の収益力が大型株以上に高まっている形跡は見られなかった。一方、投資尺度であるバリュエーション指標を見ると、ここ3~4年は小型株のPBR(株価純資産倍率)の上昇が顕著だった。小型株は収益性の改善などより、株式の需給関係で株価が底上げされた面が強い。

転機になったのは2013年。アベノミクスが始まって日銀が株価指数連動型の上場投信(ETF)の大量購入に乗り出した年だ。14年には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用方針を変え、日本株のパッシブ(指数連動)運用を拡大した。巨額の公的マネーがインデックス投資を通じて市場に流入し、流動性の低い小型株の株価を押し上げた。

流動性の低下で取引コストは上昇

日銀もGPIF(リバランスを除く)もいったん市場で買い上げた株式は保有し続けるため、小型株の流動性は一段と低下する。しかし、インデックス投資では、名目上の時価総額に応じた株数を買い続けるため、ますます小型株の需給はタイトになる。奥野氏がTOPIX採用の大型株と小型株について、浮動株ベースの時価総額に対する売買代金の比率を計算したところ、「小型株の同比率は13年ごろから急上昇していた」という。

この結果、小型株特有の現象として、投資家が買いたい値段(オファー)と証券会社の売り値(ビッド)の差が恒常的に大きく開くようになる。浮動株が少ない小型株は、買い注文を出した後に株価が上がってしまうことが多く、それが取引コスト(スリッページコスト)の上昇をもたらしている。

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