2017/11/8

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こうした「見えざるコスト」を結果的に負担するのは最終投資家だ。奥野氏は「単純にインデックス型投信だから購入・保有コストが安いと思うのは早計。TOPIX連動の投資家は実は最も高い取引コストを払っているのではないか」という。つまり、TOPIX連動型は表面上は低コストでも実質的には割高な投信ということだ。

日銀のETF買いは年間6兆円のペースで今も続いており、小型株の流動性は一段と低下、市場のゆがみをさらに増幅している恐れがある。コモンズ投信の伊井氏は「日銀がETFの購入をやめたとたん、小型株は買い手が不在となってTOPIX連動投信の運用成績は悪化しかねない」と話す。

今、日本の株式市場はもとより、世界の市場でも運用のパッシブ(指数連動)化は大きな流れとなっており、株式の日々の取引に占めるインデックス売買の比率は高まっている。こうした指数連動運用の増大は、株価形成以外にも株式市場に悪影響を及ぼしている。

スイスのプライベートバンク大手、ピクテ・グループの運用部門の責任者であるルノー・ドゥ・プランタ氏が英フィナンシャル・タイムズへの寄稿で興味深い指摘をしていた。コモディティー(汎用品)化したパッシブファンドがもたらす弊害だ。

世界の市場はパッシブ大手3社の寡占

パッシブファンドはどこの運用会社が手掛けても特徴の違いが出ないコモディティーで、工業製品のように「規模の経済」が働く。残高を増やすほど手数料の引き下げが可能になるので、寡占化が進みやすい。すでに世界の株式市場では米ブラックロックなど大手3社がパッシブファンドの残高の4分の3を占め、3社は米国の大型株式の2割近くを保有している。

上場企業の株主議決権が3社に集中する結果、企業統治の形骸化は加速し、企業の競争力は損なわれる恐れがある。さらに大手3社は指数の構成などに対する発言権を強め、グローバルな資本の流れにも影響を与えかねない――。

来日したプランタ氏に話を聞いたところ、伝統的なインデックス運用の擁護論、つまり「パッシブ運用が増えるほど市場のゆがみが拡大し、ファンドマネジャーが運用するアクティブ運用の活躍の場が広がる」という説も今は通用しないという。パッシブファンドの巨額のマネーが市場になだれ込むとオファー・ビッドの差が広がって、「アクティブ運用のアイデアが実行できないケースが多い」からだ。

ただ、プランタ氏は「運用成績もここ数年、パッシブ優位が続いたが、転換点を迎えている」と主張する。パッシブ優位の期間は世界の中央銀行の量的緩和の時期と重なっており、米欧の中銀が資産規模の縮小を始めれば市場のボラティリティ―(変動率)は上昇し、アクティブ運用に有利に働くとみているからだ。

翻って日本では、量的緩和のアクセルを踏む日銀が巨額のETFを買い続け、インデックス運用の増大がもたらす市場のひずみは拡大中だ。この壮大な実験は最終的には投資家に何をもたらすのだろう。