シニアの手習い どうせ始めるなら縁遠いことから経済コラムニスト 大江英樹

 なぜそんなことを始めたのかというと、ある先輩からのアドバイスでした。その先輩は私から見ても結構、傲慢なタイプの人で独断専行、あまり人の意見を聞かないタイプです。その人が60歳にして突然チェロを習い始めたのです。なぜ楽器を、それも演歌しか聴かないような先輩がなぜクラシックをと思い、先輩に聞くと、こんな答えが返ってきました。

謙虚に学ぶ姿勢が人生を豊かにする

 「俺たちサラリーマンは、なんだかんだいっても今まで付き合いとやりくり上手で世間を渡ってきたんだよ。だから大概のことは何とかなる。だけど、チェロなんていうものは自分には全く縁がなかったものだから手も足も出ない。ということは、謙虚に学ぶしかないってことだ。お前から見たらおかしいかもしれんが、この年になってようやく学ぶことの面白さがわかってきたんだ」

 今、先輩は若い先生に叱られながらもチェロを必死で習っています。私が察するに、先輩は放っておくと現役時代以上に傲慢で独りよがりになりがちな自分を改めるきっかけをつくりたかったのではないかと思います。なかなかの卓見ではないでしょうか。

 本来、リタイア後の趣味は現役時代からやっていることを続けるのが理想的だと私は考えていますが、もし「そんなものは何もない」という人ならこの先輩のように「自分とは最も縁遠いもの」から始めてはいかがでしょう。門外漢だった私もアルトサックスを通じてさまざまなことを学ぶことができました。

 趣味の習得という目的以外にも、謙虚に学ぶ姿勢はリタイア後の人生をいろいろな面で豊かにしてくれるはずです。

「定年楽園への扉」は隔週木曜更新です。次回は11月30日付の予定です。
大江英樹
野村証券で確定拠出年金加入者40万人以上の投資教育に携わる。退職後の2012年にオフィス・リベルタスを設立。著書に「定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!」(共著、日経BP)など。http://www.officelibertas.co.jp/
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