検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

苦肉の「九州ノロノロ特急」誕生 歓迎したのは訪日客

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

日経トレンディネット

「九州にノロノロ特急がある」と7月から運行が始まった「ゆふいんの森91~94号」のダイヤに鉄道ファンから注目が集まっている。博多駅と由布院駅の間を小倉、大分経由で走り、最も足が遅い92号は5時間49分を要する(2017年7月末までのダイヤ。現在は5時間16分)。平均時速は41.4kmと、特急らしからぬ鈍足ぶりだ。なぜこんな列車が誕生したのか。

運休路線を迂回ルートですばやく再開

ノロノロ特急が生まれた背景には、自然災害が起きてもタダでは転ばないJR九州の執念が秘められていた。

鉄道好きなら91~94号という号数で気づくかもしれないが、この列車は臨時列車。もともとは「ゆふいんの森1~4号」が走っていた。博多駅から久留米駅までを鹿児島本線、そこから久大本線(ゆふ高原線)に乗り入れ、由布院駅、大分駅を結ぶルートだった。ところが7月5日から6日にかけて福岡県や大分県を襲った九州北部豪雨により、光岡駅-日田駅間の花月川橋梁が流出。運休を余儀なくされたのだ。

しかし、JR九州の動きは素早かった。由布院駅から大分駅方面の線路には問題がなかったため、博多駅から鹿児島本線を反対方向に小倉駅まで走り、そこから日豊本線を大分駅まで南下。久大本線を逆に由布院駅へと向かう迂回ルートで運行することにしたのだ。運行の発表は豪雨から約1週間後の7月11日。15日から運行を再開するという早業だった。

JR九州によると、異例のルートでの運行再開を決断した背景には、過去の災害での経験が生かされているという。

例えば、2016年4月の熊本地震では、湯布院は大きな被害を受けなかったにもかかわらず、宿泊の予約がキャンセルされるなどの風評被害に苦しんだ。今回の豪雨災害も湯布院には被害はなく、1日も早く運行を再開することが重要という認識があったという。

もう一つの苦い経験が5年前、2012年7月の豪雨災害。やはり日田駅周辺で路盤流出などが起こり、久大本線は1カ月以上、不通となった。このとき、ゆふいんの森は日田駅~大分・別府駅間の折り返し運行としたが、利用客が極端に少なかったという。やはり九州の中心地である博多まで乗り入れなければ意味がないことを痛感したというわけだ。

このような教訓から、通常とは全く異なる小倉回りで無理やり運行を再開したゆふいんの森。ただ、このルートは博多と大分を結ぶ大動脈で、特急「ソニック」が1時間に2本も走っている。さらに博多から小倉までは日常の足である普通列車や快速列車も多数運行。1日2往復とはいえ、特急列車をねじ込むのは困難を極め、結果としてノロノロ特急にならざるを得なかった。

乗客の多くは外国人客

実際、どんな走りをしているのか。乗って確かめることにした。選んだのは博多駅を朝の8時45分に出発する91号。終点の由布院駅まで4時間50分かけて走る。経路は違うものの、通常の運行なら由布院駅まで2時間12分。実に2倍の時間がかかるわけだが、ホームには早くからゆふいんの森目当ての乗客が集まっていた。驚いたことに、多くはアジア系のインバウンド客だ。

ゆふいんの森はJR九州を代表する観光列車として海外でも有名で、以前から乗客の半分以上が外国人という日もあるほどだったという。迂回運行後はその傾向がさらに強まったそう。彼らにとっては早く着くことは必ずしも重要ではない。ゆふいんの森というブランド、さらには乗り換えなしで確実に湯布院に行けることが選ぶポイントなのだ。

8時30分すぎ、小倉方面の2番乗り場にゆふいんの森専用のキハ71系が入線。普段は逆側の熊本方面のホームに入ってくるのでかなり違和感がある。出発までの時間に余裕があり、記念写真を撮れるのはうれしいところ。ゆふいんの森のエンブレムの前でカメラを構える外国人が目立っていた。

特急なのに快速列車に抜かれる

8時45分、定刻通りに発車。ぐんぐん加速して隣の駅の吉塚駅を通過……と思いきや、その後速度を落として2駅目の箱崎駅で停車してしまった。ドアが開かないまま待つこと数分。左側を追い抜いていったのは、なんと2分後に発車した快速列車だった。

箱崎駅に6分ほど発車するも、速度は上がらずノロノロと走行。4駅先の福工大前駅でまたもや停車だ。ここでは3分止まって、博多駅を16分後に発車したソニック9号に抜かれた。ちなみにソニック9号の大分駅到着は11時6分。なんとゆふいんの森より1時間25分も早い。カーブでも速度を落とさずに走れる振り子車両を使っているとはいえ、この所要時間の差にはがく然とする。

しかし、ゆふいんの森には、それを補ってあまりある魅力がある。ビュッフェ(簡易食堂)で提供される数々のご当地メニュー、そして客室乗務員によるおもてなしだ。

車内販売を廃止する特急列車が多いなか、ゆふいんの森には4人の客室乗務員が乗務。2号車にビュッフェが設けられ、湯布院の名店が手がけるアイスクリームやサイダー、ジュースなどが販売されている。乗車記念のグッズなどもそろい、行列が途切れぬほどの人気ぶりだ。購入した商品は座席に持ち帰ってもいいが、隣の3号車にあるサロンスペースで、流れる車窓を眺めながら味わうこともできる。

また、客室乗務員が車内を回り、記念写真を撮ってくれるサービスもある。記者が乗った夏休み期間中は、インスタントカメラのチェキで撮影するイベントも行われていた。

放送による観光案内も、通常の特急にはない特徴。列車は海老津駅で11分ほど止まり、またもや特急ソニック11号に抜かされたのだが、停車中に最寄りの宗像大社の案内が放送された。

その後も八幡製鉄所やスペースワールド、小倉城などについて随時案内が入った。観光列車ではよく聞く放送だが、北九州方面には観光列車が普段走っていないため、貴重といえるだろう。

5本の列車に抜かれた

列車は折尾駅でも6分ほど止まり、快速列車に抜かされる。これで特急2本、快速2本に追い越されたことになる。

折尾駅でもドアは開かないのだが、折尾駅名物ともいえる駅弁の立ち売りのおじさんが大きく手を振って出迎えてくれた。窓も開かないので売り上げに貢献できないのが申し訳ない気持ちになった。これだけダイヤに余裕があるのだから、折尾駅くらいは停車駅にしてもいいのではないかと思うが、JR九州に聞いたところ、なかなか難しいとのこと。ゆふいんの森に使われている車両は窓からの眺めを重視したハイデッカー車両で、出入り口に段差がある。このためバリアフリー対応には駅側の受け入れ体制を構築しなければならないのだそうだ。

小倉駅に着いたのは10時26分。特急ソニックは約1時間、快速列車は1時間10分で走り抜ける区間に1時間41分を要した。普通列車と同程度の所要時間である。

小倉駅では今までと打って変わり、わずか4分の停車でそそくさと発車する。線路は鹿児島本線から日豊本線へと変わり、それと同時に進行方向が逆向きになる。

進行方向が変わるため、座席の向きも変える必要がある。小倉駅到着前に、外国人にも分かりやすいように客室乗務員お手製のフリップを使っての説明も行われたのだが、やはり難しかったよう。座席を回転させるペダルに気づかなかったようで、結局客室乗務員が回り、回転を手伝っていた。

小倉駅から3駅目の城野駅に8分停車。博多駅を1時間以上後に出発した特急ソニック13号が隣を猛スピードで通過していった。抜かされたのはこれで5本目になる。

しかし、ノロノロ特急もここまでだった。

鹿児島本線よりは運行本数が少ない日豊本線ではスピードが上がり、苅田駅では先行する普通列車を追い抜かすまでに。カーブを高速で走れる特急ソニックほどのスピードは出ないものの、特急らしい走りにはなった。

一部単線区間があるため、大分県日出町の大神駅で行き違いの停車をしたものの、そのほかはノンストップで駆け抜け、別府駅には12時19分に到着。そして別府湾を眺めながら走り、大分駅には12時31分に到着した。

ノロノロ特急を盛り上げる方法は?

JR九州によると7月15日以降の乗車率は平均37%で、2016年8月の半分以下とのこと。実際に記者が乗った日も、夏休み中の週末だったが同程度の客数だった。

定期列車の時刻を変更するわけにはいかないため、2月までは現状のダイヤでの運行が決まっている。加えて、久大本線の復旧は2018年夏ごろと見込まれ、しばらくは迂回運行を続けざるを得ない。

乗って分かったのは、博多駅-小倉駅間が極端に鈍足ということだ。この区間の平均時速は39.9km。一方、小倉駅-大分駅間は時速65.9kmだから、特急ソニックより遅いとはいえ、ストレスを感じるほどではない。

迂回運行のゆふいんの森号を盛り上げる一つの方策は、小倉駅で山陽新幹線と接続するメリットを生かして、関西や中国地方から誘客することだろう。これまで博多駅まで行かなければ乗れなかったゆふいんの森号に小倉駅から乗れるのだから、所要時間の増加も最小限で済む。

もう一つの方策が北九州地域からの集客だ。駅側の対応が必要にはなるものの、折尾駅や黒崎駅などで乗降できるようになれば少しは集客にプラスになるだろう。

また、JR九州の観光列車を堪能したい人にとっては、実は今が好機ともいえる。博多駅-大分駅間は高速バスとの競争が激烈で、インターネットで乗車3日前まで買える「九州ネット早特3」を使えば、通常料金の57%引きのわずか2500円で特急列車に乗れる。ソニック向けの切符だが、現在は同区間を走るゆふいんの森号にも使えるので、格安で、しかも長時間、観光列車に乗れるというわけだ。

熊本地震で運休していた観光列車も

ゆふいんの森号が立ち寄る大分駅には、イレギュラーな観光列車がもう1つ発着している。「あそぼーい!」だ。

あそぼーい!は2011年の九州新幹線全線開業に合わせ、熊本駅と阿蘇地方の宮地駅の間の運行を開始。九州新幹線と接続して、九州一円や本州方面から阿蘇地方への誘客に一役買っていた。ところが走っていた豊肥本線が2016年4月の熊本地震の影響で長期運休に。その後は博多駅から長崎のハウステンボス駅、北九州の門司港駅など、阿蘇とは関係ない区間で運行されてきた。そこには、注目が集まる福岡都市圏で運行させることで、阿蘇の復興をPRする意図があったという。

その裏で、あそぼーい!を阿蘇に戻そうという動きも着々と進んでいた。熊本のイメージが強い阿蘇だが、実は大分県との県境付近に位置し、大分側からもアクセスが可能。この区間は地震の被害もなく、豊肥本線は現在、大分駅-阿蘇駅間で折り返し運行をしている。そこで、2017年7月から12月まで震災復興をアピールする観光キャンペーン「GO!GO!!キスマイクマモトオオイタ」を展開するのに合わせ、大分駅からではあるが、1年ぶりに阿蘇駅への運行が実現した。

ダイヤに関しては、通常運行している「九州横断特急」を土休日のみあそぼーい!に振り替えているため、ゆふいんの森のような鈍足ぶりではない。むしろ苦労したというのが、客室乗務員の手配だという。JR九州の観光列車は客室乗務員によるおもてなしが売りだが、乗務員の拠点があるのは博多と鹿児島の2カ所だけ。熊本駅から運行していた際は、九州新幹線を使って送り込んでいたが、大分となると移動に時間がかかる。そこで、異例の泊まり勤務を組むなどして対応しているそうだ。

重厚で大人向けの雰囲気のゆふいんの森とは打って変わり、あそぼーい!は子供向けの遊べるスペースが充実する。共に通常とは異なる区間を走る、対照的な両列車を乗り継ぐのも面白いだろう。1月8日までの期間限定だ。

(文・写真 佐藤嘉彦=日経トレンディ)

[日経トレンディネット 2017年10月24日付の記事を再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

関連企業・業界

企業:
業界:

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_