電気鍋、時短の相棒 朝セットして帰宅後できたて料理
「電気鍋」とは熱源にガス(火)ではなく、電気ヒーターもしくはIHを用いた調理鍋のことをいう。鍋は万国共通の調理器具といえるが、そのアプローチは、その地域より異なる面白さがある。またあらゆるモノがネットにつながるIoT化などで,ますますの発展が期待される分野だ。最新鋭の電気鍋の世界を概観してみたい。
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電気鍋が最も普及しているのは、フランス。フランス料理のコースの中にスープがあることでわかるように、具がタップリ入ったスープはフランス料理に不可欠だ。レストランだと、大きな寸胴鍋にたくさんの具を入れてひたすら煮込むが、この伝統的な料理法は現代の家庭だと厳しい。フランスでも日本の家庭でも、今は共働きが当たり前になっているからだ。
蒸す・煮込む 献立は150種類
それを手早く済ませるのが圧力鍋だ。すでに使っている人も多いと思う。欠点は鍋自体が重いことと、ガスの火加減を途中で切り替えるため、そばに付いていなければならないことだ。このため機器が電化されるのは必然であるといえた。
電気圧力鍋で世界的にも有名なのは、T-falブランドの「Cook4me Express」だ。まだIoT化はされていないが、中には150種類ものレシピプログラムほかが入っている。また、圧力調理や蒸す、煮込むなどの単独機能が使えることから、下ごしらえの時もいい相棒になる。後片付けは内鍋と蓋を洗えばよく、とても楽だ。
日本でも公式コミュニティーサイトが立ち上げられたが、フランスではSNSを利用した非公式のサイトが有名だ。ユーザーが自分のレシピの公開用に立ち上げているので料理の写真が並ぶ。
しかしこの非公式サイトでも驚くのは、ユーザーが思い思いに装飾を加えてデコったCook4meの写真がいっぱい載っていることだ。日本ではこんなことはまずなく、私が知っているのはロボホンくらい。逆な言い方をすると、それほど自分の相棒化しているわけで、ユーザーが増えると、日本でもある姿かもしれない。
かき混ぜで焦げ付きなし
日本製で今注目を浴びているのは、シャープのホットクックだ。こちらは完全IoT化され、ネットでレシピを追加できる最新鋭の電気鍋だ。ホットクックは圧力のかからないタイプだが、非常に密閉度が良いため、無水調理もこなせる。構造は炊飯器に近い。その上かき混ぜる機能も付いているなど、日本製らしい芸達者ぶりだ。カレーなど焦げ付きの可能性がある料理を作る時も安心だ。
また、朝出かける前に食材をセットしておいて、夜、帰ってきて食べる予約調理も可能だ。セット後すぐに食材が傷まないように火入れをしておき、時間が来たら本調理を始める方法になっている。このため夏でも問題ない。これは温度管理に強い炊飯器系の構造を持っているからこそ可能になる技だ。
シャープは、今IoTを使い「ヘルシオデリ」という中食サービスを始めた。「東京の一流飲食店の味を家庭でも」という考え方だ。素材もレシピプログラムも、一流の飲食店が作成したオリジナル。ガスと違って料理ミスがなく、おいしく仕上がるところが良い。
ただ、この2機種は、4人分以上で調理が基本になっているため、機器のサイズはかなり大きい。そこで単身や2人世帯におすすめしたいのが、シロカの電気圧力鍋だ。前の2つに比べると少々簡素で、プリセットメニューも少ない。しかし、レシピ本が充実しており、料理に関しては全く問題がない。逆に、小さい分だけ扱いやすい。
これから寒い季節が訪れるが、その時に便利なのが「蒸す」機能だ。肉まんは、電子レンジでも温められないことはないが、皮のふっくら具合が一定しないなど問題も多い。その点、電気鍋の蒸し機能だと、ふっくら、ほかほか。出来たてと同じ。当然、蒸し料理もラクラクこなす。一台あると、とても便利で手放したくなくなる調理家電だ。
(生活家電.com主宰 多賀 一晃)
[日本経済新聞夕刊2017年11月4日付]
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