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柿、不思議の果実 甘くなる渋柿や、自然発酵の柿酢に

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柿はその学名を「Diospyros kaki Thumberg」という。「Dios」はギリシャ語で「神」、「pyros」は穀物、果実などの食べ物を意味する (Thumbergは命名者であるスウェーデンの植物学者カール・ツンベルグの名前)。つまり、柿は「神の食べ物」の意。

「すごい、すばらしい」の最上級を最近の若者は「神」という。アイドルの、ファンに対するすばらしい対応を「神対応」と呼んだりすることに「神という言葉をそんな軽々しく使うなよ」と苦々しく思う私でも、柿を「神の食べ物」と呼ぶことに異議はない。

そう名づけたくなる気持ちはよくわかる。だって柿は神が奇跡を起こしたかのようなミラクルな植物なのだから。柿の実がおいしいのはもちろんだが、栄養価が高く、昔から「柿が赤くなると医者が青くなる」という言葉があるほど。葉っぱもお茶として、ヘタも干して漢方薬として、昔から民間療法に使われていた。

葉っぱには殺菌効果があるので、押しずしを柿の葉で巻いた「柿の葉ずし」は日持ちするお弁当になる。

柿を青いうちに取って絞って熟成させた「柿渋」は天然の塗料。防腐性や防水性があり、紙や木に塗って使われる。

木は硬いのが特徴で、パーシモン(柿の英語名)といえばかつてはゴルフクラブのヘッドによく使われていた。いまでも家具に使われている。

とにかくまったく無駄がない。あ、柿の皮はぬか漬けの甘みを出すために干してぬか床に入れられる。そういえば「柿の種」も食べるなぁ。って、これはちと違うか。

なによりいちばんの「ミラクル」は「渋柿」ではないだろうか。みなさんよくご存じのように柿には「甘柿」と「渋柿」がある。渋柿の「渋み」のモトは「タンニン」。渋柿や若い状態の甘柿の中にあるタンニンは水溶性、つまり水に溶けるので、口の中の水分と混ざり舌の味覚神経を刺激し、強い渋みを感じさせる。これをヘタに焼酎などのアルコールを塗る、たるに入れてお湯につけるなど脱渋(だつじゅう)すると、タンニンがアセトアルデヒドなどと結合して水に溶けない状態になる。そのため味覚神経を刺激しなくなり、渋みを感じなくなるというわけ。

渋みのモトが消えたわけではないのに甘くなる。まるで魔法! しかも、もともと含まれている糖度は渋柿のほうが甘柿よりも高いものが多く、「甘柿よりも甘い渋柿」になる。なんというパラドックス!

「自分的柿のパラドックス」といえば、子どものころから柿は「もっとも好きな食べ物で、もっとも嫌いな食べ物」だった。生の柿の「三段活用」には「パリパリ」「ちょっとヌルッ」「ぐじゅくじゅ」とある。私は甘柿の硬くてパリパリの状態が好きだが、ちょっとヌルッとしてきたらもう食べない。ほかの果物ならちょっと熟しすぎても食べるが、柿だけは自分の好みの食感へのこだわりが強すぎて、それ以外は食べる気がしない。

でも、世の中には熟れたのをスプーンですくって食べるのが大好きという人もいる。この柿の「パリパリ派vsぐじゅぐじゅ派」の「食の論争」も「目玉焼きにしょうゆ派vsソース派」「つぶあん派vsこしあん派」くらい終わりがない。

柿への「偏愛」(信仰?)はおとなになってからさらに強くなった。デザートとしてはもちろんだが、パリパリの柿は野菜感覚なので料理にも使える。これがまた酒のつまみに最高なのだ。

たとえば「柿とかぶのサラダ」。同じく寒くなってから旬を迎えるかぶと柿をスライスしてフレンチドレッシングであえる。白ワインや冷たい日本酒にピッタリだ。これに生ハムをトッピングするとさらに豪華なオードブルに。

パリパリではなくほどよくヌルッとした食感が好きな人には、生ハムメロンや生ハムパパイアならぬ「生ハム柿」もきっとお好みだろう。くし切りにした柿に生ハムを巻くだけ。超簡単。

とうふと白ごまのあえごろもをまとった「柿と青菜の白あえ」もおすすめ。これだけでもじゅうぶんおいしいのだが、数年前、友人に「あえごろもにマスカルポーネチーズをちょっと加えるとおいしいよ」といわれ、やってみたからこれが衝撃的なうまさであった。

さて、柿の「パリパリ派」にとって悲しいのはほんの少しの時期しかあの食感を味わえないこと。秋が深まり冬になるにしたがって柿の食感はやわらかくなってくる。子どものころはそれがとても残念だった。

しかし、おとなになってからは今度は「干し柿」のおいしさに目覚めてしまった。もともと甘いものが得意ではないので、子どものころ干し柿は甘すぎて食べられなかった。それもそのはず、干し柿は渋柿からつくるが、前述のとおり甘柿より糖度が高いうえに干して甘みが凝縮されている。

それが干し柿も調理することによってまた最高の酒のつまみになると気づき、パリパリで食べられるシーズンが終わってからはもっぱらこちらを楽しんでいる。

私のお気に入りは干し柿にちょっと切り込みを入れてクリームチーズをはさんだもの。これにフェンネルシードやアニスシードなどの乾燥ハーブをトッピングするとさらにおとなの味になる。

あと、先の「マスカルポーネチーズ入り白あえ」は生の柿のかわりに刻んだ干し柿を入れてもうまい。

そう、柿は「乳製品」と相性がいいのだ。

乳製品といえば、こちらの大ヒットスイーツをご存じか。ブランド柿の市田柿とバターをサンドして重ねた「市田柿ミルフィーユ」。

私も高速道路のサービスエリアの売店で見つけて食べたところ、どハマりしてしまった。干し柿の甘みとネットリした食感に、口の中でトロッと溶けるバターの食感と塩気がマッチして、うまいのなんの!

「この組み合わせを考えた人、神!(あ、いけねっ! 神って使ってしまった!)」と思ったほど。柿の種とピーナツの組み合わせを思いついた人と同じくらい偉い。

開発者のマツザワホールディングス株式会社の森本康雄さんによれば、

「市田柿は各家庭で生産され出荷される農産加工品で、きれいで出来のよいものは出荷にまわされます。一方、硬かったりあまり色合いが良くなかったり、市田柿としてはランクの低いものは自家消費していました。そういったものをおいしく食べるために、硬すぎるものは刻んで酢漬けにして『なます』にしたり、少し水分の多いものはくるみをサンドしたりして、各家庭でいろいろな食べ方のくふうをしていました。そんなになかバターやチーズをサンドする食べ方があり、それを製品化したものなんです」とのこと。

市田柿の産地は長野県の旧市田村、現在の下伊那郡高森町。市田柿農家のみなさん、グッドジョブ!!

おすすめの食べ方を聞いてみると「フルボトルの渋めの赤ワイン。それとウイスキーはトワイスアップ(ウイスキーと同量の常温の水を加えたもの)がいいですね」と森本さん。スイーツだけど、やっぱりお酒が合うのだ。

そうそう、もうひとつ乳製品と柿のミラクルをご紹介しよう。それは生の完熟柿を使った「柿プリン」。

なんと熟れた柿と牛乳をミキサーなどで混ぜるとゼラチンを入れなくても固まってプリンになるというのだ。これは柿に含まれる食物繊維「ペクチン」が牛乳のカルシウムと反応することによって凝固するとのこと。うーん、やっぱり柿ってミラクル。

こんなに柿はすばらしいのに、若者の柿離れが進んでいるという。高い、むくのが面倒くさいなどの理由で全般的に果物離れしているのだが、柿や干し柿は年寄りくさい食べ物だと敬遠されているフシもある。

地方では、庭に柿の木があっても実を取らない(高齢者で「取れない」というケースも)、空き家で柿の実を取る人がいない、柿農園が耕作放棄されるなどが社会問題になっているとか。サルやクマなどの野生動物がおいしい柿を求めて里まで下りてきてしまうからだ。

だから、柿はどんどん収穫して消費すればいい。デザートにおかずに酒のつまみにどんどん食べればいい。

「庭に柿があるけど、たくさんとれすぎて食べきれない」という柿好きにはうらやましいお悩みもあろう。そんなときには「柿酢」にするのもおすすめ。

私が3年前まで住んでいた家には柿の木があった。大家さんから「よかったら柿、とって食べてね」といわれていたのだが、これが同じ木に渋柿と甘柿が一緒に実るというやっかいなものであった。

見た目は一緒。なので、毎回むいては一口かじっては甘柿なら食べるという「ロシアンルーレット」気分を味わっていた。が、毎日ドキドキするのもつらいし、だんだん私好みの硬さではなくなってきた。そこで解決策を模索したところ、「酢をつくる」にたどりついた。酢は渋柿からでも甘柿からでもつくれるからだ。

つくり方は簡単。大きめのビンにヘタだけ取った柿を入れて、空気を取り入れやすいようビンの口にガーゼをかぶせてゴムやひもなどでしばって放っておくだけ。発酵が進み、2~3カ月するとドロドロの液体になるので、ザルでこせば柿酢の完成。

自家製柿酢は砂糖などを足さずともゴクゴク飲めるほどまろやかでうまかった。酢は糖度がある程度高い作物ならなんでもできるのだが、特に柿はシロウトが家で仕込むには最適なんだとか。皮に発酵に必要な菌がついている、コバエが発生しない時期に仕込める、タダで入手可能なケースが多いなどがその理由。ホント、知れば知るほど神の食べ物ね、柿って。

(ライター 柏木珠希)

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