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食の豆知識

柿、不思議の果実 甘くなる渋柿や、自然発酵の柿酢に

2017/11/8

PIXTA

 柿はその学名を「Diospyros kaki Thumberg」という。「Dios」はギリシャ語で「神」、「pyros」は穀物、果実などの食べ物を意味する (Thumbergは命名者であるスウェーデンの植物学者カール・ツンベルグの名前)。つまり、柿は「神の食べ物」の意。

「すごい、すばらしい」の最上級を最近の若者は「神」という。アイドルの、ファンに対するすばらしい対応を「神対応」と呼んだりすることに「神という言葉をそんな軽々しく使うなよ」と苦々しく思う私でも、柿を「神の食べ物」と呼ぶことに異議はない。

 そう名づけたくなる気持ちはよくわかる。だって柿は神が奇跡を起こしたかのようなミラクルな植物なのだから。柿の実がおいしいのはもちろんだが、栄養価が高く、昔から「柿が赤くなると医者が青くなる」という言葉があるほど。葉っぱもお茶として、ヘタも干して漢方薬として、昔から民間療法に使われていた。

さばとサーモンの柿の葉ずし=PIXTA

 葉っぱには殺菌効果があるので、押しずしを柿の葉で巻いた「柿の葉ずし」は日持ちするお弁当になる。

 柿を青いうちに取って絞って熟成させた「柿渋」は天然の塗料。防腐性や防水性があり、紙や木に塗って使われる。

 木は硬いのが特徴で、パーシモン(柿の英語名)といえばかつてはゴルフクラブのヘッドによく使われていた。いまでも家具に使われている。

葉っぱも実もビタミンCやミネラルが豊富=PIXTA

 とにかくまったく無駄がない。あ、柿の皮はぬか漬けの甘みを出すために干してぬか床に入れられる。そういえば「柿の種」も食べるなぁ。って、これはちと違うか。

 なによりいちばんの「ミラクル」は「渋柿」ではないだろうか。みなさんよくご存じのように柿には「甘柿」と「渋柿」がある。渋柿の「渋み」のモトは「タンニン」。渋柿や若い状態の甘柿の中にあるタンニンは水溶性、つまり水に溶けるので、口の中の水分と混ざり舌の味覚神経を刺激し、強い渋みを感じさせる。これをヘタに焼酎などのアルコールを塗る、たるに入れてお湯につけるなど脱渋(だつじゅう)すると、タンニンがアセトアルデヒドなどと結合して水に溶けない状態になる。そのため味覚神経を刺激しなくなり、渋みを感じなくなるというわけ。

種類によっても違うが、甘柿は平たい形が多いのに対し、渋柿は先がとがったものが多い=PIXTA

 渋みのモトが消えたわけではないのに甘くなる。まるで魔法! しかも、もともと含まれている糖度は渋柿のほうが甘柿よりも高いものが多く、「甘柿よりも甘い渋柿」になる。なんというパラドックス!

「自分的柿のパラドックス」といえば、子どものころから柿は「もっとも好きな食べ物で、もっとも嫌いな食べ物」だった。生の柿の「三段活用」には「パリパリ」「ちょっとヌルッ」「ぐじゅくじゅ」とある。私は甘柿の硬くてパリパリの状態が好きだが、ちょっとヌルッとしてきたらもう食べない。ほかの果物ならちょっと熟しすぎても食べるが、柿だけは自分の好みの食感へのこだわりが強すぎて、それ以外は食べる気がしない。

完熟柿はスプーンで=PIXTA

 でも、世の中には熟れたのをスプーンですくって食べるのが大好きという人もいる。この柿の「パリパリ派vsぐじゅぐじゅ派」の「食の論争」も「目玉焼きにしょうゆ派vsソース派」「つぶあん派vsこしあん派」くらい終わりがない。

 柿への「偏愛」(信仰?)はおとなになってからさらに強くなった。デザートとしてはもちろんだが、パリパリの柿は野菜感覚なので料理にも使える。これがまた酒のつまみに最高なのだ。

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