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若手リーダーに贈る教科書

「なぜ中国人は財布を持たないのか」 激変中国の今 中島恵著

2017/11/4

著者が見た中国では、買い物はもちろん、街角の屋台での支払い、店員へのチップ、募金に至るまで、すべてスマホでできるようになっていました。日本の先をいく実態に驚き、中国人の友人に「中国の発展はものすごいですね! とくにスマホ決済は画期的。数年前からありましたけど、さらに進化していて驚きました」と話したところ、意外な答えが返ってきました。「現金を使える日本社会のほうがうらやましい」というのです。日本では、ニセ札に悩まされることも、現金のやり取りでだまされる心配もない「信頼」があるといいます。

日本社会は日本人が想像している以上に安心、安全。日本人自身は意識していないでしょうが、日本は社会と人とが信頼し合える“相互信頼社会”なんです。おいしい空気とおいしい水があるだけじゃなくて、これは日本の財産。今は中国の華やかなIT革命に目を奪われ、一部の人が『日本は完全に後れを取ってしまったのでは……』と心配しているだけです。
(第1章 発展が早いのは、遅れていたから 34ページ)

■中国のスマホ、もはや「インフラ」に

この友人によると、中国は「これまであまりにも不便で、あらゆる面で遅れていたからこそ、ここまでスマホ決済が発展した」のだそうです。今ではスマホは「インフラ」になっていて、行政からの知らせやアンケートも、全てスマホを通じて送られてきます。スマホが使えなければ社会から脱落しかねず、生きるために必死にスマホにかじりついているのだといいます。

電子マネーの対比をみても、日本と中国の良い面と悪い面は、それぞれ合わせ鏡のようでもあります。中国と日本の一面を比較し、「遅れている、発展している」と単純な表現で片づけることは、誤解を招きかねない、と著者は指摘します。

中国にはないよさが日本にはあり、日本にはないよさが中国にはある。いつも中国に行くと痛切に感じることだ。補完し合える最高のライバルとして、互いに協力し、認め合い、切磋琢磨していくことが理想だ。
(あとがき 228ページ)

■「利他」の精神に涙する人も

中国の国内総生産(GDP)は10年に日本を抜き、現在は日本の2倍以上に達しています。中国人旅行者の「爆買い」は一段落したようですが、文化などを体験する「コト消費」には現在も高い関心が寄せられ、ある種の成熟も感じられます。さらに、多くの日本企業が中国で事業を展開しており、今後も重要なビジネスの舞台であり続けるのは確実です。今後も中国とうまく付き合っていくには、思い込みから離れ、中国の実像をもっとよく知る必要があるでしょう。

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