出身によって、キャラクターも全然違います。例えば、幼稚舎上がりは、学業よりもスポーツや芸術活動に力を入れている生徒が多いとよくいわれますが、だいたいその通り。雰囲気で、この人は幼稚舎上がりだとわかるケースも多い。それに比べると、高校受験組は、どちらかといえば普通の高校生っぽい人が多い印象です。

「まるで動物園。いろいろな人間がいて、そうしたゴチャゴチャした感じが好きだった」と振り返る

勉強も、する人としない人の差が極端です。慶応はそもそも受験校ではありません。生徒は卒業さえすれば、自動的に慶応義塾大学に入れるので、高校で頑張って勉強する必要はありません。

学校側も、大学への進学実績を外部にアピールする必要もないので、生徒に対し、成績が悪いからといって、うるさく言うようなことはありません。だから、勉強しない生徒も結構いるのです。

ただ、医学部志望者だけは例外です。全員が慶応の医学部に入れるわけではないので、他の大学の合格も目指し、必死に勉強します。

成績が悪いと容赦なく落第させるところも慶応の特徴です。実際に毎年、何人もの生徒が留年します。1学年で2回留年すれば退学で、退学者も毎年出ます。

中には、各学年で留年し6年かけて卒業する生徒もいます。そういう人は、学年が1、1、2、2、3、3と並ぶので、麻雀の役にひっかけて一盃口(イーペーコー)と呼ばれています。自分たちより年上なので、みんな敬語を使います。

数が多いから、他にもいろいろなタイプや性格の人間がいます。誰からも好かれる好青年タイプもいれば、先生からいつも目を付けられている素行の悪い人間もいる。オタクもいれば、プロスポーツ選手になれるような運動神経抜群の人もいる。

まるで動物園のように、ひとクラスにいろいろな人間がいるのですが、そうしたゴチャゴチャした感じが私は好きでした。今風にいえば、非常にダイバーシティー(多様性)に富んだ環境だったと思います。