欧米でヒットの兆し? 小さな家、変な乗り物…
ユニークなスタートアップから老舗企業の挑戦まで、海外でも新しい商品やサービスが生まれている。まもなく日本に上陸し私たちの暮らしを変えるかもしれない、米国、欧州各国のトレンドを追った。
小さな家でシンプルな生活を
タイニーハウス
高額のローンを抱えてあくせく働くより、小さな家に住み、浮いたお金で自由な生活を楽しみたい―。新たな豊かさを求めるライフスタイルが、米国で支持を集めている。9~37m2(平方メートル)の家は、その名も「タイニーハウス」。以前からある概念だが、多くの自治体では法律に明記がなかった。近年の人気を受け、オレゴン州やワシントン州などで法整備する動きが出てきている。
専門の業者も次々登場し、小さなスペースを有効活用できる家の開発が進む。収納可能なダイニングテーブルや、壁面を倒して造るテラスなど、工夫が満載だ。タイニーハウス専門業者の一つ、ニューフロンティアは、米国の多くのメディアで取り上げられており、1日40~50人の購入希望者から問い合わせがあるという。小さくとも豊かな暮らしができるタイニーハウスは、日本でも受け入れられそうだ。
高品質な商品を低価格で提供
ブランドレス日用品
そんなシンプルライフのムーブメントは、日用品にも起きている。品質が良ければ、大手メーカーの品である必要はないと考える人々が注目しているのが、「ブランドレス」というECサイトだ。ブランドレスは、米国シリコンバレーの2人の起業家が、社会貢献できる営利事業を模索し、17年7月にスタートしたサービス。物流や店舗運営、卸に払うマージンなどを排除するぶん、品質に配慮した日用品をすべて3ドル(約340円)で提供している。低価格ながら、食品は全商品、保存料や甘味料は不使用。半数以上がオーガニック商品だ。化粧品も全商品、400以上の有害物質を排除するなど、彼らが納得した商品のみが並んでいる。
駅から会社までキックボードでスイスイ
シェアキックボード
一方、欧州では、環境に配慮した移動手段がますます増えている。パリをはじめとするフランスの都市でじわじわと人気を集めるのが、シェアサイクルならぬ「シェアキックボード」。このサービスを開始したKnotの創業者によると、「ある友人が娘と一緒にキックボードを買ったところ思いのほか便利で、街なかでも借りることができたらいいのに、と話していたのが発案のきっかけ」という。
大学のキャンパス内や、駅から会社の間など、1km未満の移動を想定しており、現在パリのオフィス街に10、郊外の都市サン・ドニに10のスポットが設置されている。利用方法は、スマホのアプリでアカウントを開設するだけ。1分ごとに課金するシステムで、2時間では1ユーロ(約133円)、10時間は5ユーロ、50時間は10ユーロで利用できる。今後はドイツをはじめとした欧州、米国での展開を予定しているという。「いずれは日本でも」と意気込む。
川の流れで充電。排ガスゼロの水上カー
次世代水上カー
「空飛ぶ水上タクシー」として、話題を集めるのが、来年の運航に向け、現在セーヌ川で試運転が始まった「SeaBubbles」だ。水中翼で水の抵抗を減らし、船体が川面から40cmも浮く構造。このため、波が立ちにくく川岸の侵食が少ないという。2台装備された小型の電気モーターは、川の流れを使ってプロペラを回すことでバッテリーを充電。船着き場に設置されたソーラーパネルのエネルギーも利用するなど、排ガスゼロを達成した。現在の試運転では運転手が乗船するが、将来は自動運転を予定している。SeaBubblesは世界展開していきたいとしており、日本の川にお目見えする日も近いかもしれない。
インスタから火が付いた最新スイーツ
アイスクリームドーナツ
ドーナツにアイスクリームを挟み、ホットサンドメーカーで焼いたスイーツ。ロサンゼルスのデザートショップがインスタグラムに写真を投稿したところ話題になり、西海岸を中心に類似商品が多発。ニューヨークでも今夏、専門店「スタッフト・アイスクリームNYC」がオープンした。
グーグル元社員が発案。スマホで買えるミニストア
置きコンビニ「ボデガ」
グーグル元社員の2人組が開発した大型自動販売機「ボデガ」。ケースに並ぶのは、コンビニで購入する頻度の高い生活必需品だ。オフィスや学生寮、アパートのロビー、ジムなどに設置される予定で、すでに西海岸の30拠点でテスト導入済み。今後さらに50拠点での展開が決まっており、18年までに全米で1000拠点に広げる計画だ。
ショールーミング大歓迎! 試着専用百貨店
在庫のない百貨店
ネット販売の攻勢により、百貨店が苦戦しているのは米国も同じ。そんななか、10月に大手百貨店ノードストロームが、ロサンゼルスで実験店舗「ローカル」をオープンした。店に置かれているのは、一部の試着用商品のみ。日本でも丸井が婦人靴で行っており、類似のビジネスモデルが拡大しそうだ。販売はネットで行い、この店舗ではブランド力を高めようという試みだ。
スタートアップ御用達のリアル店舗
IoT発明品販売店
シリコンバレーでスタート。現在、全米で7店舗を展開し、拡大を続けるショップ「b8ta」は、個人が作った革新的な製品を販売するショップ。販売の利益はすべて出品者が得る代わりにスペースを売るというビジネスモデルだ。スタートアップは、革新的な製品を作っても、ネット販売しかできないのが現状。消費者に披露し、フィードバックを得られる場として活用されている。家電、IoT関連などラインアップも幅広い。
コースの形を記憶するミニカー
AIカーレース
米国で今、子供だけでなく大人も夢中になっているのが、AI搭載ミニカー「Anki OVERDRIVE」だ。専用のレールパーツを使ってプレーヤーが組み上げたコースの形を、AIが記憶。プレーヤーはスマホで速度や車輪の向きを操作するが、コースアウトを気にする必要はない。そのため対戦相手とのレースの駆け引きに集中できる。
一杯一杯を最適な温度で飲める自宅ワインバー
IoTワインマシン
フランス企業によるワインディスペンサー「D-Vine Connect」は、ワインを注ぎながら、その銘柄の特徴を画面でレクチャーしてくれるソムリエマシン。専用の小瓶に入った多種類のワインから飲みたいものを選んでセットすると、空気の量と温度を1分以内に調整し、そのワインが最もおいしい状態でグラスに注ぐ。また、マシンが消費状況を管理し、ユーザーが好みそうな銘柄を提案。マシンからそのまま注文することもできる。
着色料一切なし! カカオからピンク色を引き出す
天然ピンクチョコ
スイスのチョコレートメーカー、バリー・カレボーが開発したピンク色のチョコレート。無添加、着色料不使用ながら、甘酸っぱく、ベリーの風味がするのが特徴。使用するカカオは通常のチョコレートと同じだが、長年の研究でピンク色を引き出すための物質の抽出に成功した。18年3月~19年に市場に投入される予定。
低カロリー&高プロテインで米国で爆発的人気
高プロテインアイス
米国小売店の売り上げで、ハーゲンダッツやベン&ジェリーズをしのぐ勢いの「HALO TOP」。一般的なアイスの4分の1程度のカロリーにもかかわらず、プロテインは10%ほど多い。1個5.99ドル(約680円)と高価格ながら、16年度売り上げは前年比2500%を記録した。
日本上陸間近の不思議な"水"
透明コーヒー
歯の汚れを気にせず飲めると英国で話題なのが、世にも不思議な「透明のコーヒー」。一般的なコーヒーと同じロースト豆を使った「ブラック」を、独自製法で透明にする。化学調味料は不使用で、天然の素材だけで作られている。欧州に加え、今秋から韓国での販売を開始。その動きを見て、数カ月後には日本市場で販売を開始する予定だ。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2017年12月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
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