
白河 例えば、どんなアドバイスが来るんですか。
矢野 「上司に話をするのは、午前中がいいよ」とか。それは、その人の過去のデータから導いたアドバイスですので、別の人には「午後のほうがいいよ」というアドバイスが出ることもあります。
白河 仕事のやり方はどうですか。集中力の持続時間など、人によってアドバイスが違うのですか。
矢野 そもそも集中力については、続いたほうがいいとは言い切れません。例えば、45分間集中して、5分休憩したほうがいい人もいれば、もっと短い周期で集中したほうがいい人もいます。「あなたの場合、長い時間は作業に集中せず、いろんな人の割り込みを許したほうが、あなたも周りも幸福度が上がりますよ」というアドバイスになることもしょっちゅうあります。
白河 それは、個人にとってもハッピーだけど、チーム全体のハッピーを優先しているわけですよね。
矢野 そうです。
会話の頻度や方向性も分かる
白河 すごくおもしろいですね! では、その端末を着けていると、誰と誰がコミュニケーションをとっているかということも分かるのですか。
矢野 この端末を着用している人同士が2~3メートルの距離で対面していたというデータが取れるので、分かります。その上、各人の身体の動きのデータも取っていますので、どちらが会話を投げかけている側で、どちらが受け止めている側なのか。双方向の会話なのか、一方的な会話なのかも分かるんです。
白河 会話の内容までは分からなくとも、そういうことは分かるのですね。
矢野 体の微細な動きは「非言語情報」に含まれますが、これは、言語以上に豊富な情報を含んでいるのです。
白河 この会話で、居心地がいいのか、悪いのかということも明らかに分かるのですね!
矢野 分かります。そういったデータは、様々な形で活用できると考えています。

(後編では、知的生産性や幸福度を上げるためにはどうすればいいか、具体的なお話を伺います)
(ライター 森脇早絵)