2017年10月28日から東京ビッグサイトで開催中の東京モーターショー(11月5日まで)。全盛期に比べ規模が小さくなっているが、自動車ジャーナリストの渡辺敏史氏によると「海外メーカーやメディアの関心は高い」という。彼らをひきつけるのは、メガシティ東京が生み出す車社会の未来図だった。
社会的な問題にどう対処するか
──今回で45回目を迎えた東京モーターショー。見どころは「EV(電気自動車)」と「AI(人工知能)」だと言われています。
AIは「自動運転」という意味合いが強かったのですが、EVと自動運転は、どちらも自動車を取り巻く社会的な問題です。そこにスポットが当たるのは当然だと思います。今回のモーターショーは、その2つに対するメーカーごとの対応の違い、取り組みの違いが見えて、興味深かったですね。
たとえばEVですが、日産自動車のように積極的に取り組んでいるメーカーと、それほどではないメーカーがありました。EVの必要性は、どのメーカーも理解しているけど、リソース的にかけられるお金も人手も限度がある。黎明(れいめい)期は収益が出るまで待たなければいけないのですから、大きなメーカーでないときびしい。
自動車メーカーの再編成が一段落した欧米に比べ、日本はまだ多くのメーカーが健在です。クルマ好きには楽しい状況ですが、EVのように、世論に押されて技術的な大転換を迫られるケースでは、その細かさがあだとなる。
先日、トヨタ自動車とマツダとデンソーの3社がEV開発のために新会社を設立するという報道がありましたが、これはトヨタ主導のEVロードマップにマツダが乗るということでしょう。ここにトヨタグループであるダイハツ工業も加わるでしょうし、SUBARU(スバル)やスズキも参加するかもしれない。EVをきっかけにふんわりとしたグループがつくられつつある。そういう意味でも電動化はトヨタの主導権を尊重しながら、自分たちは内燃機関を突き詰めていくというマツダのようなアプローチは面白いと思います。
──自動運転も社会的な問題ですね。
自動運転は、EV以上に、小さなメーカーでは限界がある技術です。そういう意味でトヨタと日産という日本を代表する二大メーカーのコンセプトカーが興味深かったですね。
日産の「IMx」とトヨタの「Concept-愛i」は、どちらも完全自動運転をテーマにしたコンセプトカーですが、2台を比べると、メーカーの自動運転へのアプローチが見えてきます。IMxは「運転の楽しさ」を訴え、Concept-愛iは車いすユーザーや高齢者など誰もが「安全・安心」に移動できることをアピールしています。

社会的な問題にどう答えるのか。展示を見ながらメーカーの姿勢を考えるのは、今回のモーターショーの見どころでした。そういう意味では以前のような派手なクルマを楽しむイベントとはちょっと違った、「大人」なモーターショーだったと言えるでしょう。
市場としては中国に抜かれたけれど
──かつては世界三大モーターショーの一つといわれた東京モーターショーですが、全盛期と比べると、出展社数も入場者数も減っています。
確かに世界的なプライオリティーは下がっていると思います。インターナショナルというよりローカルのイベントというのが現実です。ただモーターショーというイベントに対する熱意は、世界的に変わりつつあるとも感じています。