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個人に魅力 「株主優待」投資の注意点(窪田真之) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

2017/11/7

「株主優待制度は機関投資家にとっては迷惑だが、個人投資家にとっては魅力的だ」

日本には「株主優待制度」という、世界でも珍しい制度があります。株主優待制度は上場企業が配当金とは別に、株主に自社製品や金券などを贈るサービスです。

第2次世界大戦後、百貨店や航空会社、食品会社など消費者向けのビジネスを手掛ける企業を中心に広がっていきました。

本来、株主には全額、配当金の支払いで利益還元するのが筋です。ところが、日本の個人株主には配当金をもらう以上に贈り物を喜ぶ風潮があります。企業も株主がそのまま顧客(自社製品・サービスの購入者)になることもあるので、株主優待制度を積極活用してきました。現在では上場企業の3分の1が導入しているそうです。

■機関投資家から見ると迷惑だが……

私は資産運用会社で投資信託や公的年金の日本株運用を25年やってきました。機関投資家から見ると、正直申し上げて株主優待制度は迷惑な制度です。金券であれば換金して運用するファンドに入金しますが、換金できないものは処分するしかありません(実際の作業は株式の管理を受託している信託銀行が実行)。実にもったいないことです。欧米の機関投資家の多くは株主優待制度に反対しています。

したがって、ファンドマネージャーのときは株主優待の魅力の分析などしたことがありせんでした。分析を始めたのは個人投資家と向き合いながら仕事をするストラテジストになってからです。かつては迷惑でしかなかった株主優待制度ですが、今では個人投資家にとってはなかなか良い制度だと思っています。

個人投資家にとっての株主優待制度の主な利点は、
 (1)個人株主を優遇する内容となっていることが多い
 (2)短期的な株価変動に一喜一憂せず、じっくり長期投資ができる
 ――です。

(1)を説明しましょう。株主優待で典型的なパターンに、以下のようなものがあります。
 ・保有株数100株以上1000株未満の株主に1000円相当の商品詰め合わせを贈る。
 ・1000株以上の株主に2500円相当の商品詰め合わせを贈る。
 ここで、100株当たりどれくらい優待をもらえるか計算してみましょう。100株のみ保有する株主は、1000円相当の商品詰め合わせをもらえるので、一番効率よく優待を受けられます。

200~1000株未満を保有する株主は株数にかかわらず、受け取れるのは一律1000円相当ですので、500株ならば100株当たりで200円相当、1000株では250円相当しかもらえません。機関投資家は1万株以上保有することが多いのですが、1万株では100株当たりの受け取りは25円相当に低下します。たくさん保有するほど金額が多くもらえる配当金と比較すると、株主優待は大口株主に不利なのです。

■企業は安定株主づくりの目的

なぜなら、企業は株主優待制度を通じてなるべく多くの個人投資家に株主になってほしいからです。安定株主をつくり、株価を安定させるなどの目的があり、そうした企業が小額投資の個人株主を優遇するのは当然です。

したがって、少ない資金で効率的に優待を得たいという個人投資家は最小単位で、多くの銘柄に投資すべきです。

(2)は株主優待目当ての投資家は、株式の長期保有が基本なので日々の株価に振り回されない人が多いからです。ストレスを感じずに、じっくり投資できるのは良いことです。

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