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新興国投資 相場は好調だが、投資比率は15%までに 新興国投資の勘所(下)

2017/11/5

インフラ整備の拡大が見込まれるインドネシアは高成長を維持する見通し(ジャカルタ)

 筧家のダイニングテーブルでは、良男と幸子が最近の外交や政治情勢を巡り熱い議論を交わしています。そこへ新興国投資に関心を持ち始めた恵がタブレット端末の画面を見せにきました。ロボアドバイザー(ロボアド)による運用成績について話したい様子です。

 良男 どうしたんだ? 何か発見でもあったのか。

  このロボアドが出した運用資産の構成を見てよ! 最もリスクが高いタイプだと、外国株式の比率が50%もあるんだ。このうち新興国の株式は6%で、債券も含めると新興国投資は1割ぐらいになるの。運用でお金を稼ごうとするなら、やっぱりリスクをとって新興国にも投資しないといけないね!

 幸子 ロボアドは高リスクを志向する若い人に株式の運用比率を高める提案をしがちなのよ。さらに「先進国の株式では利回りは低めだから、新興国の株式も組み入れて高い利回りを狙おう」と勧める傾向があるの。

  でも世界の経済規模に占める主要新興国の割合は4割弱で、今後ますます高くなるとパパが言っていたよ。それに比べると、1割は低いわよね。

 幸子 新興国の金融市場が整備されていないという側面もあるの。セゾン投信の瀬下哲雄運用部長は「外国人投資家の売買を規制している新興国も多く、投資しづらい」と話しているわ。例えばインド政府は外国人の株式売買を規制していて、日本の個人は上場投資信託(ETF)や米預託証券(ADR)などでの売買に限られるの。中国では部分開放の動きもあるとはいえ、依然として国内投資家に限定している銘柄もあるわ。中国・深圳の新興企業向け市場「創業板」の銘柄の多くは、基本的に外国人には手が届かないの。

 良男 それに先進国株のほうが新興国株より相場が安定しているともいえるんだ。米国の指数算出会社、MSCIの株価指数の推移を見ると、2008年のリーマン・ショックや15年の中国ショックのとき、新興国株が先進国株に比べて大きく崩れたことが分かるよ。相場上昇時には高くなりやすいとはいえ、「新興国一点買い」は危ないと思うな。私の同僚も06~08年の中国株ブームで中国株投信だけを買い、その後の急落でひどい目に遭ったんだ。

  でも、最近の新興国の株式相場は好調なんでしょ?

 良男 新興国は原油などの資源価格や中国経済の動向に左右されやすいけど、今は資源価格が回復傾向だし、中国の経済の減速ペースも緩やかなので、新興国株を買うのに安心感も出ているんだ。ただ、米国の利上げや新興国の政治動向が相場を下げる可能性もあるんだよ。

  新興国株はどのぐらいの割合で持てばいいの?

 良男 運用の専門家の間では、金融資産に占める新興国株の比率は「多くても15%程度にとどめたい」との声が多いな。もちろん少しずつ新興国の売買規制は緩和される方向なのだろうけど、経済規模に比例する形で新興国の投資比率を高めるのは避けたほうが良さそうだ。

  具体的にはどのような金融商品を選べばいいの?

 幸子 UBS証券ウェルス・マネジメント日本地域最高投資責任者の青木大樹さんは「複数の新興国に分散投資するETFが望ましい」と助言しているわ。1つの国だけに投資するのは政治や経済のリスクが大きいから複数の国にリスクを分散させたほうがいいそうよ。投資の上級者にはインフラ整備の拡大で高成長を維持する見込みのインド、インドネシアなど1国への投資も勧めていたけどね。

 良男 最近はインドやフィリピンなど、個別の国をテーマにした投信の設定も相次いでいて、個人投資家の資金が流入しているんだ。確かにインド経済はモディ政権の下、経済改革への期待が高く不安材料は少ないけど、やはり1国だけに投資することのリスクはある。新興国に限らないけれど、運用業界では「個人向けにテーマ型投信の新規設定があるころには、市場のブームは過ぎつつある」との見方も根強いんだ。

筧幸子(かけい・さちこ、48=上) 筧良男(かけい・よしお、52=中)  筧恵(かけい・めぐみ、25) 

  初心者向けに投資のコツみたいなものはあるの?

 幸子 モーニングスターで投信分析を手掛ける坂本浩明さんは「新興国の投資商品は振れ幅が大きいので、下がった場面で多く買う積み立て方式も有効な選択肢」と助言しているわ。18年にスタートする少額投資非課税制度「つみたてNISA」を使うのも一つの方法ね。金融庁が10月に公表した対象商品には、MSCIやFTSEなど主要な外国株指数に連動するインデックス投信も複数入ったの。

  新興国に進出して事業を拡大する日本企業の株に投資するというのはどうかな?

 良男 日本株はネット証券だと売買コストが特に安いからね。新興国での事業で業績が良くなりそうな個別銘柄を狙うなら選択肢になるよ。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は「新興国はインフラ開発が進むから、まず鉄鋼や非鉄金属、建設機械などに関連する銘柄に注目したい」と話していたよ。秋野さんは個別株なら複数銘柄に分散投資し、四半期決算ごとに地域別業績などで事業の進捗を確認したいそうだ。

  新興国の経済は活気があふれていても投資市場は発展途上だし、リスクもあるということはよく分かったわ。でも私たち若い世代にとっては、長期的には投資先の候補としての存在感は高まっていきそうね。

■海外ETF コスト低め
 資産運用アドバイザー 尾藤峰男さん
 高成長に伴う投資収益を期待できる新興国の投資商品を選別するには、商品や取引金融機関ごとのメリットだけでなく、手数料を吟味する必要があります。年率の手数料が高ければ中長期的な運用成績にも響きます。買う前によく比較しましょう。
 投資商品ごとに手数料は異なります。新興国の指数に連動するインデックス投信の信託報酬や海外ETFの総経費率は全般に年1%未満。半面、アクティブ型の投信は投資銘柄への調査費用などがかかる分、信託報酬は1~2%台と高めです。新興国の現物株を買う場合も手数料は日本株より総じて高くなります。金融機関別では、購入・為替手数料はネット証券が安くなります。店頭での購入は総じて手数料が高めですが、調査リポートが充実しているなどの特徴もあります。
(聞き手は南毅)

[日本経済新聞夕刊2017年11月1日付]

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