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国境の食、世界の味を映す 東京で北伊・南チロル料理

2017/11/2

 マンジャーレ、カンターレ、アモーレ。「食べて、歌って、愛して」という意味のイタリア語で、これはイタリア人のいわば「人生訓」。だが、イタリアのどこに行っても、これが当たり前だと思うなかれ。北イタリアには、なんと人口の70パーセントの第1言語がドイツ語の地域がある。アルプス山脈の南側、南チロル地方(アルト・アディジェ地域)だ。

 南チロルは500年以上もの間、ハプスブルク家の支配下のオーストリア領であった地域。イタリア領となったのは、第1次世界大戦後のことだ。

世界遺産にも指定された地域を抱える南チロル

「お店に行ったらメニューが読めない。イタリアなのにレストランのメニューの一番上に書かれているのはドイツ語なんです。イタリア語表記は2番目」。初めて南チロルのレストランを訪れた際のそんな驚きを教えてくれたのは、北イタリアと南チロルの料理を専門とする東京・豪徳寺のレストラン「クチーナ・チロレーゼ 三輪亭」の三輪学シェフだ。

 ベネチアに近いイタリアの都市パドバのレストランで働いていたが、「ハイセンス過ぎて面白くないので、肉料理とマンマ(イタリア語でお母さんの意味)の味を体感できるようなお店で働きたいと思った」とシェフ。知人に相談したところ、先の南チロルの店を教えてくれたのだという。

三輪シェフが「日本では見たこともなかった」という南チロルでポピュラーなパスタの一種「シュペッツレ」 ドイツにもある料理で生地にホウレンソウを混ぜ込んだものが多い

「知人いわく『すごくいい店』なのに、ドイツ語圏だから、当時はイタリアに修業に来たほかの日本の料理人にとって興味のある場所ではなかったんです。でも、行ってみたら驚いた。イタリアへ渡る前に日本でさんざん料理の本を見て勉強したけど、『なんだこれは』と見たことのない料理がでてきたんです」と三輪シェフは笑う。肉料理もパスタも、それまで学んできたものとはまるで違って素朴。「面白い」とそこで働くことを即断したという。

 東京の都心に生まれ育った三輪シェフ。移り住んだときは、「すごい山奥に来ちゃったな」と思ったという。働き始めたのは冬だったが、「薪を自分で割って、暖炉にくべないと死ぬよ」と言われたとか。冬場に外に出ると髪が凍るぐらいの寒さらしい。「でも、空気がすごく澄んでいて、信じられないほど星がきれいで。それで、村中、薪の香りがするんです」

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