ビームス、シップス… 「目利き力」で1990年代に成長
よくわかる セレクトショップ(1)
様々なブランドの商品を仕入れ販売する「セレクトショップ」のビジネスが、変革期にある。1970年代に登場したセレクトショップは消費者に海外商品の購入で百貨店以外の選択肢を与え、独自の「目利き力」で成長してきた。ただ足元ではインターネット通販の拡大や低価格なファストファッションの台頭を受け、従来の成長カーブが描きにくくなっている。
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日本にセレクトショップという業態を根付かせたのは、70年代から相次ぎ誕生した「ご三家」と呼ばれる3社だ。中でもシップス(東京・中央)の前身となるミウラが75年に開いた「MIURA&SONS渋谷店」がセレクトショップの先駆けとされる。
76年にはビームス(東京・新宿)が1号店を原宿に開店した。若者文化の発信地として全国的に有名になる原宿・渋谷とともに、セレクトショップは拡大への一歩を踏み出した。
■「アメカジ」ブーム背景に大きく成長
さらにビームスの設立にも携わった重松理氏が会社を興し、現在の業界最大手であるユナイテッドアローズが90年に渋谷で1号店を開業。従来の専門店と異なり特定のブランドに依存せず、店舗ごとに独自の視点で集めた商品が消費者をひきつけた。アメリカンカジュアル(アメカジ)ブームを背景に、海外に憧れる若者に支持されて90年代に大きく成長した。
男性向け商品が多かった中で、80年代に女性向けショップも増え始めた。84年に誕生したビームスの女性向けセレクトショップ「レイ ビームス」では、フランスのカジュアルな衣料を取り扱った。ビームスの設楽洋社長は「僕らの時代は男の子はほとんどアメリカに憧れて、女の子はパリに憧れていた」という。
■消費者の購買行動を変貌
セレクトショップの誕生により、消費者の買い物の仕方が変わった。これまで服を買うには衣料品店へ、靴を買うには靴専門店へ行き、それぞれ買っていた。百貨店は同じ館だが、それぞれのブランドが施設内に店を持つ。セレクトショップでは高級ブランドの服の隣に手ごろな価格の靴や帽子などが並んでおり、1つの店でコーディネートできる。
当時小売りの王者だった百貨店は在庫リスクをアパレル会社側が負い、売れた時点で仕入れる「消化仕入れ」という独特の商習慣がある。セレクトショップは買い付けが基本で、在庫リスクを店側が抱える。仕入れを間違えば在庫を抱えるという危機感が担当者の「目利き力」を鍛え、百貨店から一部の消費者を奪っていった。
沖永翔也、高橋彩が担当します。
[日経産業新聞 2017年8月22日付を再構成]
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