PB拡大で独自色 「とんがり減った」と一部客離れも
よくわかる セレクトショップ(3)
独自の仕入れで成長してきたセレクトショップだが、近年は自社のオリジナル商品を拡大している。他社にない商品で違いを打ち出せることや、ユニクロなどのSPA(製造小売り)への対抗が背景にある。ただ、一部商品が高い評価を得る一方で、セレクト独特の「とがった商品」が減っているとして客離れも起きている。
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■PBでコスト削減、粗利率も高く
ユナイテッドアローズ(UA)は創業間もない1992年から、プライベートブランド(PB)の展開を始めた。「仕入れだけではカバーできない商品を時代や消費者の嗜好に合わせて出せる」(同社)ためだ。
価格を抑えたブランド「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」では、PB比率が6割以上を占める。客単価は高価格帯の「ユナイテッドアローズ」より半分以下の1万円程度と手が届きやすく、2017年3月期は前の期比約6%増の売り上げだった。店舗数を今後も増やす方針だ。
PBは製造現場から直接調達することでコストを削減し、商品の価格を抑えられる。アパレルメーカーからの仕入れより粗利率も高くなる。UAだけでなく、ビームス(東京・新宿)やシップス(東京・中央)といったセレクト店もPBを採り入れている。
PB拡大の背景には、バブル崩壊後の景気低迷やデフレの加速で消費者が節約志向になったことに加えて、ユニクロやZARAに代表される低価格のSPAやファストファッションが台頭したことがある。それに対抗するかたちで低価格のPB商品を投入し、新たな消費者の開拓を図った。
■PB拡大で個性喪失、客離れも
一方で各社にPB商品が広がったことで、セレクトショップならではの個性の強い商品が減り、客離れも起きている。
PBは幅広い顧客層に向けたベーシックな商品が多くなりがちで、「『セレオリ』(セレクトショップのオリジナル商品)は買わない」といった嫌悪感を生む一因となった。ファストファッションと似かよった商品が並んだことで、一部の顧客が流出した。
UAは個性を取り戻そうと動き出している。16年9月に開業した六本木ヒルズ店(東京・港)は、訪日客や近隣の富裕層をターゲットに高価格帯の商品を充実させた。
17年9月には原宿本店をリニューアルオープン。東京・渋谷の「原宿本店 メンズ館」を、はす向かいの「ウィメンズ館」と統合。PB比率を下げてセレクト品を増やし、「濃度」の高いファッションが提供できる店舗として新たなファン獲得へつなげる考えだ。
[日経産業新聞 2017年8月24日付を再構成]
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