「保活、怒りより前向きな気持ちで」 天野妙さん
♯保育園に入りたいキャンペーン発起人(折れないキャリア)
組織・人事コンサルタントの傍ら、保活(子どもを保育所に入れるための活動)を経験した親たちと待機児童解消を目指す活動に取り組む。キャンペーンは2017年1月から保育所に入所できないことを伝える自治体の「不承諾通知」の画像をツイッターやフェイスブックで集めている。3月には国会で参考人として問題の解決を訴えた。
新卒で入った不動産会社では営業にまい進した。最年少で管理職となり優秀賞を受賞するほど成果を上げたが、朝から深夜までの激務が当然という職場環境で、子育てしながら働く将来を想像できなかった。
結婚後、建設コンサルティング会社に転職。「男性に負けないよう結局がむしゃらに働いた」。だが、自ら獲得した案件で結果を出しても評価が振るわない。第1子の育児休業を終えると、会社から一般職しか用意できないと告げられた。時短勤務もあって給与は3分の1に減る。「女だからか」。悔しさを飲み込みながら5年間働き続けた。
やがて転機がやって来る。3社目に移った後、同居する母が認知症と診断された。その10日前に第3子の妊娠が判明したばかりだった。重いつわりと戦いながら母の病院通いに付き添うダブルケアに直面し16年5月、妊娠9カ月でコンサルタントとして独立。「自分のペースで仕事ができる環境を整えるしかなかった」と振り返る。
上の2人の娘では保活を計3回経験したが、3人目は輪をかけて厳しい状況だった。母親たちと地元の東京都武蔵野市に保育所増設を働きかけることになると、仕事で培ったマネジメント能力を発揮して活動の中心に。子は保育所に入れたが、「のど元過ぎても忘れてはいけない」と戒め、交流サイト(SNS)を使った全国発信の活動を担う。
今もダブルケアは続いている。介護は育児以上に自分のコントロールが利かず、平常心を保てなくなることもある。だが「子どもがいるから母をきつく怒らずに済み、母は簡単な家事はできるから助かる」。仕事で気持ちを切り替えられるのはプラスだ。
キャンペーンの名称は16年にブログで話題になった「日本死ね」ではなく「#保育園に入りたい」。「怒りが原動力では続かない。ポジティブな気持ちで働きかけていきたいから」と前を向く。
(天野由輝子)
[日本経済新聞朝刊2017年10月30日付]
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