到来!スマートウオッチ時代 有力ブランドも新作続々
よくわかる 腕時計ビジネス(5)
腕時計市場の新たな潮流として注目される製品群の1つが腕時計型端末(スマートウオッチ)だ。米アップルを筆頭に、スイスのタグ・ホイヤーも参戦。2016年秋には米フォッシル・グループが国内で初めて投入した。日本メーカーも日常生活に役立つ機能を搭載した商品を取り扱う。市場拡大の新たな切り札として期待感は高まっている。
スマートウオッチはスマートフォン(スマホ)のような情報機器の機能を搭載した腕時計とされる。電話の着信や電子メールの受信を知らせるほか、カメラを操作することもできる。
■スマートウオッチが腕時計市場に活力
スマホの普及による若者の腕時計離れが進むなか、米アップルは15年に発売した。ソニーや韓国のサムスン電子が先行したなか、アップルの参入で一段とスマートウオッチに対する注目が高まった。高級腕時計のタグ・ホイヤーも15年11月に約17万円の商品を売り出した。
米フォッシル・グループは16年秋、スマートウオッチを含め計107のウエアラブル端末を国内で発売した。「フォッシル」のほか「ディーゼル」や「エンポリオ・アルマーニ」ブランドで、歩数や消費カロリーなどを計測できる。
フォッシルジャパンは国内で一般的な時計市場は飽和しつつあるとみて、若者の間でスマートウオッチが定着すると予測する。木村信也社長は「ファッション性とテクノロジーを融合した商品の需要が高まる」と語る。
日本メーカーはビジネスやアウトドア向けなど機能を絞った「日本版スマートウオッチ」に活路を見いだす。シチズン時計やカシオ計算機は時刻を自動的に修正する腕時計を出したほか、セイコーウオッチなどはアウトドアでの利用に特化した商品を取り扱う。カシオは4月、スポーツやアウトドア向けの第2弾を売り出す。
■スマートウオッチけん引役に市場拡大
矢野経済研究所(東京・中野)は国内の時計市場規模(腕時計やクロック)が20年に15年比8%増の1兆365億円になると予想する。訪日外国人(インバウンド)需要が後退するなか、スマートウオッチなどが新たなけん引役になると読む。ただ業界では「まだ(機能性の高い新商品など)ガジェット好きの人の購入にとどまっている」との声も聞かれる。これから、一般消費者にどうアピールしていくかが業界共通の課題だ。
今後、機能面を一段と充実するのか、それとも時計らしいデザイン性を重視していくのか。消費者の反応を見ながら、時計メーカーが商品展開を模索している。
=この項おわり
[日経産業新聞 2017年1月31日付を再構成]
第1回 腕時計の世界輸出、中国が席巻 日本もスイスも後塵
第2回 機械式高級腕時計に注力 スイス勢、ブランド戦略競う
第3回 クオーツで席巻した日本勢 いま生き残りへ独自色探る
第4回 「東洋のスイス」諏訪 腕時計から自動車部品まで育む
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