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高齢者の財産管理に民事信託 元気なうちに子供名義に 財産の承継もスムーズに

2017/11/4

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 高齢者にとって心配事のひとつが財産をいつまで自力で管理し続けられるかという問題です。例えば賃貸アパートを営んでその収入で暮らしているような人は自分がいつか病気になって賃貸管理ができなくなるのではと不安でしょう。元気なうちに子どもらに財産管理を託す方法として「民事信託」という仕組みが最近注目されています。どんな仕組みなのでしょうか。

 信託は、財産を所有する人(委託者)が、信頼できる誰か(受託者)に財産の名義を移転して管理してもらう制度です。信託というと信託銀行の業務を思い浮かべるでしょうが、信託業の免許がなくても受託者になることは可能です。これが民事信託です。

■親が子供と契約交わす例が増加

 最近は専門家の助けを受けて、親が子どもら家族との間で契約(信託契約)を交わす例が増えています。例えば現在は自分で管理している賃貸アパートを持つ親が、元気なうちに、その名義を子どもに移します。借り主を募集したり物件を修繕したりといった管理も子どもに託します。

 そうすれば、もしも将来、自分が認知症などになったとしても、賃貸アパートは子どもが所有し、自由な判断で管理を続けられます。信託契約では賃貸に伴う収益を受け取る人(受益者)を決めておけるので、親を受益者にしておけば生きている間、生活費に充てることもできます。

 仮にそうした対策を何もせずに認知症になった場合はどうなるでしょう。判断能力がなくなった場合、家庭裁判所に申し立てて「成年後見制度」を活用する手があります。家族や専門家の間から裁判所が選任した成年後見人に財産管理を委ねる仕組みです。

 ただしこの制度は、判断力を失った人を守ることが目的です。このため「裁判所からは財産を親自身のために使うことを強く求められる。財産を子どもに贈与するといったことは困難になる」と司法書士の大貫正男氏は指摘します。その点、元気なうちに信託契約を結んでおけば、財産の継承もスムーズに運びます。

■富裕層に提案する例も多く

 民事信託の契約例が最近増えている背景には、活用を勧める弁護士、司法書士、税理士の存在があります。地主や中小企業の経営者ら富裕層から財産の継承について相談を受けた際、「民事信託を提案する例も多い」とランドマーク税理士法人の清田幸弘代表税理士は言います。

 銀行など金融機関も関連サービスを始めています。民事信託では、受託者は信託財産を自分の固有財産から切り離して管理する義務があります。これに対応して三井住友信託銀行は2016年5月から、要請があれば審査の上、信託財産だと分かるような口座名で受け入れるといった業務を始めています。地方銀行や信用金庫など地域金融機関の一部でも同様の業務を手掛けています。

 もっとも、民事信託を活用するには弁護士や司法書士に信託契約の作成などを依頼する必要があります。報酬は信託財産額の1%を目安とするケースが多いようです。この他に、信託契約がしっかり実行されているかどうかを信託監督人などとして管理する仕事もあり、一定の報酬が必要になります。

[日本経済新聞朝刊2017年10月28日付]

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