マネー研究所

もうかる家計のつくり方

偽りの家計簿 「節約の達人」と呼ばれたかった夫婦 家計再生コンサルタント 横山光昭

2017/11/1

PIXTA

 「田舎に移住し、農業をして暮らしたい。そのためにも貯蓄をもっと増やさなくてはいけないが、なかなか増えない」。会社員のSさん(36)が妻(35)とともに相談に来ました。長男(3)と長女(2)を保育園に預け、妻も正社員として働いています。S家の家計簿をみると、生活費は十分に抑えられていますし、貯蓄も520万円あります。これ以上、何が問題なのでしょうか。

■飲み会の費用、貯蓄から支出

 夫妻の月収は手取りで月40万円ほどです。水道光熱費も極端に高くはなく、スマートフォン(スマホ)はすでに格安スマホに切り替え済み。生命保険料も安く抑えています。ただ、2人合わせ夏冬それぞれ30万円程度のボーナスがありますが、気がつくと底をついているそうです。それでどうやって520万円も貯蓄できたのかと疑念が生じ、2人に詳しく話を聞いたところ、実は「見せかけの家計」だったことが分かりました。

 Sさん夫妻の支出には家計簿に記録していないものがあったのです。それは「不自由せずに満足のいく生活を送ってほしい」と、妻が結婚の際に親から持たせてもらった300万円からの支出です。この300万円は500万円の貯蓄額に含まれています。そこから遊園地の1日券や外食、洋服、飲み会の費用などを出していたのです。

■節約術を友人たちにレクチャー

 なぜそんなことをしたのでしょう? 夫妻はときどき、友人らに家計簿を見せたり、節約の方法をレクチャーしたりしているそうです。友人たちからは「なぜそんなに節約できるの?」「大変じゃないの? 本当に頑張っているね」などと声をかけられます。「やりくり上手なS家」。そんなふうにみられることで「家計の達人」という地位を築いたと感じ、満足感を得ていたのだそうです。

 その地位を維持するためには家計簿は表面上、支出を極力抑えたものにしなければなりません。家計簿に記録すると都合の悪い支出は300万円から支払い、当然のごとく家計簿にも計上していなかったのです。

 しかし、外食や洋服などの費用は本来、月々の支出として計上しなければならない費目です。夫妻が使った金額を一つずつ洗い出して合計額を算出すると、ひと月で13万円にも上りました。その金額を見て夫妻は驚いていました。夫妻は毎月の余剰金で貯蓄しているつもりでしたが、実態としてはその貯蓄で浪費していたことになるわけで、貯蓄は増えるどころか少しずつ減っています。この13万円が与える影響は非常に大きく、赤字家計の最大の要因でした。

■本当に田舎で暮らしていける?

 夫妻は相談に来た当初、「今は都内に住んでいるので家賃が高いのは仕方がないが、それ以外の生活費は抑えて暮らしている。田舎ではぜいたくしては暮らしていけないことは分かっているから」と話していました。しかし実際は言葉とは裏腹にぜいたくな生活を楽しむために散財していたのです。

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL