世界で一番幸せな国はどこ? 日本人は7割が現状肯定

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/11/5
ナショナルジオグラフィック日本版

世界で一番幸福な人は誰かと問われたら、それは中米コスタリカのアレハンドロ・スニガかもしれない。毎日6時間は友人たちと楽しく過ごし、睡眠時間は最低でも7時間。食事はたっぷりの果物と野菜を欠かさない。徒歩圏内の職場では、労働時間はせいぜい週に40時間。毎週、数時間のボランティア活動も続けている。要するに、日々の生活すべてが幸福につながっているのだ。それができるのは、コスタリカ中部の「セントラルバレー」と呼ばれる温暖で緑豊かな地域で、気の合う人たちに囲まれて暮らしているからだろう。

デンマーク北部の都市オールボーに住むシセ・クレメンセンも、世界一幸福な人といえそうだ。愛するパートナーと3人の子どもに恵まれ、親密なコミュニティーのなかで、ほかの家族と協力しながら暮らしている。職業は社会学者で、充実した仕事に日々取り組んでいる。一家の通勤と通学、買い物はすべて自転車で、それが良い運動だ。収入の割に税金は高いが、医療費や学費の面で多大な恩恵が受けられる。国民が政府に寄せる信頼は絶大で、将来は安泰だとみんな信じて疑わない。

もう一人の候補は、シンガポールのダグラス・フー。起業家として成功を収めた彼は、8000万円以上もするBMWに乗り、10億円を超える豪邸に住む。妻との間にもうけた4人の子どもたちは学業優秀だ。苦学で大学を卒業したフーは自分で会社を興し、年商およそ65億円の多国籍企業に成長させた。会社の仕事だけでなく、慈善活動にも力を入れる。従業員や同業者から尊敬され、世間でも一目置かれる存在だ。もちろん努力もしたけれど、シンガポールでなければここまで成功できなかったとフーは考えている。

スニガをはじめとするコスタリカ人は、日常生活の喜びをとことん満喫する。そこから得られるのが「ポジティブ感情」と呼ばれるものだ。科学的には、1日の間に笑顔になったり、声を上げて笑ったり、喜びを感じたりした回数で計測する。それによると、コスタリカは日常のポジティブ感情が世界一高いことがわかった。

一方、クレメンセンが象徴しているのは「エウダイモニア的幸福」だ。エウダイモニアとは古代ギリシャ語で幸福を意味する言葉。目的をもち、有意義なことを達成したときに得られる幸福である。米国の調査会社ギャラップによる世論調査では、「昨日あなたは興味深いことを学んだり、実行したりしましたか?」という設問でエウダイモニア的幸福度を測る。デンマークはそんな人生を社会全体で後押ししてきた国だ。そのおかげで、この40年間、幸福度ランキングではヨーロッパ諸国のなかで1位になることが最も多かった。

そしてシンガポール。人々の上昇志向が強いこの国では、大きな野心を抱き、夢を実現させたフーは「人生の満足度」がずばぬけて高いはずだ。社会科学では、回答者に自分の人生を10点満点で評価させて満足度を調べるが、むろんシンガポールはアジアで最も高い。

コスタリカ、デンマーク、シンガポール。この3カ国に共通するのは、人々が安心感と目的意識をもち、ストレスの少ない生活を満喫していることだ。国連はギャラップのデータを利用して毎年「世界幸福度報告書」を作成し、発表している。報告書によると、幸福のおよそ75%は次の6つの要因で決まるという。堅調な経済成長、健康寿命、良好な人間関係、寛容さ、信頼感、そして自分に適した生き方をする自由だ。どれもその国の文化や政策と密接に関連している。つまり人々の幸福は住む場所に深く関わっているということだ。

ナショジオメルマガ