ガールズバンドyonige 男にこびず10~20代が支持
2013年に結成され9月にメジャーデビューを果たしたガールズロックバンドのyonigeが10~20代の若い女性に支持されている。傷ついた女性の心情を赤裸々に歌いながら、男性にこびないスタイルがガールズロックバンドシーンに新風を吹き込む。
yonigeは作詞作曲を手がける牛丸ありさ(ギター&ボーカル)と、ごっきん(ベース)の2人組。彼女たちの楽曲の特徴は、ともに大阪の下町といわれる寝屋川市で生まれ育ったならではの人間味あふれるもの。
恋に傷ついた女性の心情を赤裸々につづった歌詞と、骨太なロックサウンドが10代20代の女性に人気を集める。インディーズ時代の「アボカド」は、彼氏とのケンカでアボカドを投げつけた牛丸の実体験を基にした曲で、YouTubeの再生回数は440万回を超える。
このバンドを組むまで曲を作った経験がなかったという牛丸は「中学生の頃から好きだったマキシマム ザ ホルモンや銀杏BOYZ、チャットモンチーなどの日本語ロックをあらためて聴きまくり、サビへのメロディーの盛り上げ方といった曲作りの基本を勉強したんです。失恋の曲が多いのは結成当時の男性関係が荒れていて…(笑)。日記感覚で書く『悲しいこと』『ムカつくこと』が自然と歌詞のベースになりました」と明かす。
彼女の詞が多くの女性から支持される理由を、ごっきんは「意外と女性は、好きな人に対する本当の気持ちには口下手。それを代弁できているからでは」と推測する。
メジャー第1作は「これまでやってきたこと」と「新しくやりたかったこと」の両方が詰まった1枚。インディーズ時代の楽曲から、疾走感のある失恋ソング「さよならプリズナー」と、男性への女性の本音がさく裂する「バイ・マイ・サイ」の2曲を収録。「君の1番になれないけど/君もわたしの1番じゃないよ」と歌う新曲「ワンルーム」でも、切なさと力強さが共存するyonigeサウンドは健在だ。
新たな一面が見えるのは轟音(ごうおん)のギターが印象的な「とけた、夏」。サビ以外はあえて歌わず、語りのパートにした。「緩急をつけたことで、サビのメロディーがより映える1曲です」(ごっきん)。また歌詞は、牛丸が尊敬する作家・太宰治にインスパイアされたそう。「『自分を忘れてしまったら情けない/本能が理想を食ってしまったらこわい』という部分は、太宰の小説『女生徒』の一節をアレンジしました。メジャーデビューしてハイペースで作詞を求められるので、小説から詞の世界を広げることに挑戦中です」(牛丸)
今後について、ごっきんは「ライブは数をやるほど最強に近づくと信じて最大で年100本こなしてきたので、今後も多くやりたい」と語る。牛丸は「女性から見てカッコいいバンドであり続けたいです。そうすればきっと男性は勝手についてくると思うので」と不敵に笑う。
ライブを主戦場として男性にこびないスタイルを貫く彼女たちは、ガールズロックバンドシーンに新風を巻き起こしそうだ。
(「日経エンタテインメント!」10月号の記事を再構成 文/中桐基善 写真/藤本和史)
[日経MJ2017年10月27日付]
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