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がんと闘う人につけまつげを 乳がん経験者が患者支援

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NIKKEI STYLE

乳がんの罹患(りかん)は30代から増え始め、40代から50代前半でピークを迎える。仕事や家庭に最も忙しい時期に直面することが多い乳がん。自分自身が乳がんを乗り越え、仕事への復帰を果たした経験をもとに、がん患者を支える新たな仕事に取り組む女性を取材した。

がん治療中の人に、専用の「つけまつげ」製品を

アイメイク用品の中でも若い女性を中心に人気の高いつけまつげ。化粧雑貨メーカーのSHO-BIは、シェア約6割のつけまつげや、瞳の色や大きさを変えるファッション性の高いコンタクトレンズなど「目周りの美容商品」に独自の強みを持っている。

2017年10月、社内にSSB(SHO-BI Smile Beauty、以下SSB)という名前のプロジェクトがスタートした。がん治療中の人が直面するまつげ、まゆ毛の脱毛の悩みに対応する、新しい商品の開発が狙いだ。

「医療用のウィッグ(かつら)はいろいろありますが、つけまつげは安心して使えるものがないんです」。SSBプロジェクトマネージャーの山口弥佐子さんはこう説明する。抗がん剤治療中は副作用で頭髪やまゆ毛、まつげが抜けてしまうことが多い。特に働きながら治療を続ける女性は、外見の印象がなるべく変わらないようウィッグやメイクで対応する人が多いが、抜けたまつげに対応できるメイクはつけまつげだけ。しかし、治療中は肌が敏感になり、つけまつげのグルー(接着剤)の刺激でかぶれるのを心配する人もいるという。また、通常のつけまつげは自毛があるのを前提にデザインされているので、脱毛した人が使うと不自然になりがちだという。

そこでSSBでは、肌に負担をかけずに接着力を維持できるグルーの処方を協力メーカーと一緒に研究中だ。つけまつげの長さやボリュームも、治療中の人にとって最適なものを、患者会やがん治療の経験者、医師などの意見を聞きながら開発していきたいという。第1弾の製品は来年5月ごろの発表を目指している。

山口さんは自身が乳がん経験者だ。これまで仕事では、瞳を大きく魅力的に見せるメイク発想のコンタクトレンズ商品、「コスメコンタクト」の開発にかかわってきた。

ある日ふと、胸の内側に、ゴマ粒のような小さな固まりがあるのに気付いた。「少し様子を見ていたが、やはり徐々に大きくなってきた」。乳がんと診断され、2年間休職して治療に専念した。治療中は「治ったら何がしたいのか、これからどう生きていこうかと考えました」。そんな中、病院で出会った同じ乳がん患者の女性たちが心の支えになったという。

「治療しながら元気に働いている人も多いし、ステージ4でも活発に活動している人もいる。そんな人たちと情報交換して、刺激とパワーをもらいました」。医師が「君たち、よくそれだけ話すことがあるね」と驚くほど、顔を合わせれば病院のカフェなどで和気あいあいとおしゃべりを続けた。そして次第に、同じような苦しみを抱えている人向けに何かがしたいと思うようになったという。

SHO-BIの寺田正秀社長から復帰後のことについて聞かれたとき、山口さんは即座に「がん患者さんのために、SHO-BIが得意な『目周りの美容』で助けになることをやりたい」と答えた。17年5月に復帰してすぐSSBの準備に着手。今後、広報や総務部門と連携して、CSR(企業の社会的責任)活動にも取り組む予定だ。さらに、女性社員が過半数を占めるSHO-BIの社内向けに、乳がん予防の啓発活動もしていきたいという。

つけまつげのほかにも、企画はいろいろあるそうだ。例えば、まつげやまゆ毛の専用美容液。「治療によって脱毛している期間は1年半ぐらい。その後、生えてくる毛が健康に育つようサポートする美容液をつくりたい。治療中の人が安心して使えるものを、患者さんと一緒にコツコツつくっていきたいと思います」(山口さん)

がん経験者の心身のケアを運動で支援

体を動かすことで、手術後や治療中の心身をケアし、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)を向上させる――。がん経験者向けのヨガやエクササイズ、チアダンス、ウオーキングなどの運動教室を主催するのが一般社団法人キャンサーフィットネス。乳がんだけでなく様々ながん経験者が対象で、会員は現在約400人。大半が女性だという。

「乳がんは特に、手術後に痛みやしびれ、リンパ浮腫といった後遺症が起きることがあります。手術後、何年もたってから起きることもありますが、対応できる医療機関は少ない。情報がなく、ケアの方法も分からずに不安を抱えている患者さんも多いです」(代表理事の広瀬真奈美さん)

自身も乳がんを経験した広瀬さんは、治療後のセルフケアが必要だと痛感し、その方法を模索してきた。そして行き着いたのが、がん経験者向けに考えられた方法で「運動する」ことだった。「日本人は『病気になったらおとなしくすべし。運動なんて論外』と考える人が多い。運動が回復に与える影響についても、日本ではあまり研究されていません」。だがあまり動かずにいると筋力が衰え、体がさらに動かしにくくなる。運動すると精神的にも発散できて気持ちが明るくなり、QOLも向上する。自分の体でそれを実感した広瀬さんが立ち上げたのがキャンサーフィットネスだ。

定期的に開催する運動教室のほか、昨年はがんの専門病院の待合室の椅子を移動して「スタジオ」に変え、臨時のエクササイズ教室も開催した。運動以外にも、がん経験者が健康と体力づくりの知識を座学で学ぶ講座を始めるなど、領域を広げている。

乳がんを経験する前の広瀬さんは「表情研究家」としてカウンセリングや執筆などの活動をする一方、夫が経営する複数の歯科医院の業務も補佐するなど、忙しく過ごしていた。2009年の秋、夜中に突然、乳房が痛み始めた。さわってみるとしこりに触れたのですぐにインターネットで調べ、痛む乳がんもあることを知ったという。仕事の予定はすべてキャンセルし、2カ月後に手術を受けることになった。「そのとき考えたのは『体力がないと手術の後、今までのような仕事には戻れないかも』ということでした」。できるだけ体力をつけて手術に臨もうと、毎日約5kmずつのランニングを続けた。

ところが手術後、しびれやまひなどの後遺症に気持ちが落ち込んでしまったという。「思えば手術前は、自分なりの手術後の理想像ばかりが頭にあって、ネガティブな情報があまり入ってこなかった。説明を受けたり、資料をもらったりしていたはずなのですが」

「もう以前のように元気に働けない」と絶望的になっていたとき、たまたま読んだ米国のフィットネスの雑誌に気になる記事があった。がん患者向けにエアロビクスなどの運動を指導して、回復や社会復帰を支援するMoving For Lifeという米国のNPO(非営利組織)についての記事で、運動生理学の専門家が取材を受けていた。

「その記事の写真を見て、すごい! エアロビクスをやってみよう! と思いました」。すぐに都内で開かれていたエアロビクスの教室に通いはじめると、とても楽しかったという。そして、雑誌で知ったMoving For Lifeで直接指導を受けたいという思いが募った。

米国に行く前にまず資格をとろうと、抗がん剤と放射線の治療を受けながら週5日、専門学校に通ってフィットネスのインストラクターの資格をとった。ほぼ1年後にニューヨークのMoving For Lifeを訪れ、100時間のインストラクターコースを受講。合間には、現地の病院の中で開講されているフィットネスのクラスにも参加した。

米国から帰国した後、まず無料のフィットネスの講座をブログで募集してみた。続けるうちに多くの人が集まるようになり、2013年に「キャンサーフィットネス」として法人化した。

「がんの治療をしていたときは、早く社会復帰をするのがゴールだと思っていた。でも復帰して分かったのは、人生はその後も続いていくということ」(広瀬さん)。その後の人生のQOLを上げるには心身共に幸せであることが必要で、そのための運動と学びの機会を提供していきたいと広瀬さんはいう。「この仕事によって出会いに恵まれ、すばらしい仲間ができました。がんは治る病気となりましたが、患者は年々増えています。がんになっても、がん患者がその後の人生を笑顔で豊かに生きていけるよう、自分も人生が続く限りこの仕事に取り組んでいきたいと思います」(広瀬さん)

(コンテンツ編集部 秋山知子)

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