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小泉今日子 進化するアラフィフが見せる「更新力」

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NIKKEI STYLE

2017年10月スタートの秋ドラマが出そろいました。私が中でも注目しているのはTBSで火曜夜10時から放送される『監獄のお姫さま』です。1年前の『逃げるは恥だが役に立つ』以降、女性ファンが多い「火10枠」のドラマで、今期は小泉今日子さんが主演し、脚本を宮藤官九郎さんが担当する注目作です。

「おばちゃん」オーラが全開

番組のキャッチフレーズは「女子刑務所を舞台にしたおばちゃん犯罪エンターテインメント」。共演者は満島ひかりさん、菅野美穂さん、夏帆さん、坂井真紀さん、森下愛子さんなど、豪華な演技派の女優陣が顔をそろえました。

小泉さんは、このドラマを告知する際、「おばちゃん犯罪エンターテインメントをおばちゃんらしく演じたい」と、おばちゃんという言葉を連発していました。

いくつになってもかわいらしく「キョンキョン」オーラを放っている小泉さん。「おばちゃん」という言葉は似合わないなぁ……などと思っていましたが、実際にドラマを見てみると、意外にも小泉さんはしっかり「おばちゃん」オーラを放っていました。

小泉さんは2014年に放送された『続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)で、アラフィフ、独身、バリキャリの姉御肌の女性を演じきっていました。それは、等身大の小泉さんのイメージに近いもの。今回のおばちゃん犯罪者という役どころは、本人のイメージとはかけ離れたもので、鮮やかな変身ぶりに驚きました。

ですが、こういう役柄を演じきれるところにこそ、小泉さんの真骨頂があるのかもしれません。現在51歳の小泉さんは1982年にアイドルとしてデビューして以来、ずっと求められる役割を演じてきたタレントさんだからです。

マツコ・デラックスさんが番組で「ずっとトップにいるキョンキョンのすごいところは、ビジネスとしてアイドルを貫いてきたところよ」と評していた通り、小泉さんは自分自身が商品であるという事実を受け入れた上で、世の中に自分という商品を提供していくことに優れたビジネスパーソン型の女優さんです。

自分を商売道具として考える

2016年6月に放送された『徹子の部屋』で、次のように語っています。

「(なんてったってアイドルと歌うときは)大人が悪ふざけしてるなぁって思いながら、でも私しか歌えない歌なんだという自覚もあった。自分自身では何も持ってない女の子だと思っていて、ただこういう仕事に出合ったからには、自分の理想の女の子になることが正解かなと思ったときに自分と切り離されて、商売道具になると考えると、夢を与えたりすることが楽しくできるのかなと思った」

商売道具としての自分を受け入れた小泉さんは、「アイドル・キョンキョン」を演じた後はそのブランドにこだわることもなく、年齢の変化とニーズに合わせて女優へ転身、「アイドルから女優」というルートを切り開いていきます。

つまり、商品としての自分の意味と価値を受け入れつつ、世の中のニーズに合わせて自身を更新し続けているといえるのかもしれません。

女優として確たる地位を築き上げた小泉さんですが、50歳を過ぎてもなお、その立場に甘んじることなく、自分自身を更新し続けることを強く意識しているようです。

やりたいことをかなえていく

その心中は、2016年1月に放送されたお正月特番『小泉今日子 50歳 ニューヨーク』の中で明かされています。

「私も45を過ぎてから、ちょっとずつ時間に限りがあるという感覚はあって、あと何年あるか分からないけど、私は何ができるんだろうって。私はそれを50になったら考えようと、ずっと先延ばしにしながらこの5年ぐらいを生きている。(中略)やらなきゃと思ったことはあしたに持っていけないというか、やってみたいなと思ってもできなかったことを勉強しながら、一つずつかなえていけたらいいなあと」

小泉さんにとっておばちゃん犯罪エンターテインメントをおばちゃんらしく演じることは、等身大の自分に戻ってのチャレンジなのかもしれません。

外部から要求されるニーズと自分の内に起こる変化を受け入れつつ、チャレンジ精神を忘れずに自身を更新していく小泉さん。そのキャリア道は、どのような職業においても一つの見本となる足跡であるように思います。

そしてその道は、50歳を過ぎてからもずっと続いていくのではないでしょうか。実際、『徹子の部屋』の中で小泉さんが語っている次の言葉は、若い世代から中高年世代に至るまで、多くのビジネスパーソンに向けたエールとなりそうです。

「50歳になったら、もっと疲れたり、元気がなくなってしまうものかと思っていたら、全然そうじゃなくて楽しい。むしろ昔と比べてアクティブだし。なので、今まで先延ばしにしてきたことをやろうって思います」

「人生100年時代」とも言われるようになった昨今。考えてみれば50歳はその半分でしかありません。

「これからの人生に、もう一イベントが欲しい」という女優・小泉今日子の「更新力」は、きっとこれからも存分に発揮され、ひょっとしたらさらにビッグなチャレンジで私たち視聴者を楽しませてくれるのかもしれません。そしてそのキャリア道を進む姿は、男女を問わず、私たちビジネスパーソンの指針となるようにも思います。

私自身も、一ファンとしてのみならず、ビジネスパーソンの先輩として、今後もキョンキョンの「更新力」を観察していきたいと思います。

鈴木ともみ
 経済キャスター、ファイナンシャル・プランナー。日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。TV、ラジオ、各種シンポジウムへの出演の他、雑誌やWeb(ニュースサイト)にてコラムを連載。主な著書に『デフレ脳からインフレ脳へ』(集英社刊)。株式市況番組『東京マーケットワイド』(東京MX・三重TV・ストックボイス)キャスターとしても活動中。

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