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貼るだけで洗顔から化粧下地まで 時短マスク誕生秘話 特集 人気「時短」商品 ヒットへのアプローチ 前編

2017/11/9

開発に関わったBCLカンパニーの女性社員3人。BCLカンパニー 企画2部の齊藤久美子係長(写真左)、同社宣伝部の御殿谷りえ係長(写真中央)、販売推進部の大小原碧里係長
日経トレンディネット

女性の社会進出が増えたことにより、家事においても「時短」が大きなキーワードになってきた。時短をうたう様々な製品が登場する中で、ヒット作はどうやって生まれたのか。3回に渡ってその背景に迫る。第1回は2015年の発売以来、累積販売が1億枚を超えようとしている朝専用シートマスク「サボリーノ 目ざまシート」だ。顔に貼るだけで洗顔からスキンケア、化粧下地まで済ませられる。しかも貼った状態で歯磨きや朝食の後片づけもできる。朝に必要な家事の作業時間を大幅に短縮可能だ。働く女性たちに支持されるヒット商品はどうやって誕生したのか。

■これがあれば「洗顔」も不要

働く女性にとって、朝の身だしなみにかける時間はできる限り短縮したいもの。これまでも美容液や化粧下地などのスキンケアとファンデーションが1本になったBBクリームやCCクリームが時短コスメとして人気を集めたこともあったが、女性たちの時短ニーズをつかんでヒットしているのが、顔に貼るだけで洗顔からスキンケア、化粧下地まで済ませられる朝専用シートマスク「サボリーノ 目ざまシート(以下、サボリーノ)」だ。

「サボリーノ 目ざまシート」(32枚入り、1300円)。写真はしっとりタイプ(フルーティーハーブの香り)で、他に緑色のパッケージの「爽やか果実のすっきりタイプ」もある

使い方は、蓋付きのパッケージから取り出したシートマスクをそのまま顔に貼り付けて密着させ、60秒後にはがすだけ。マスクに含まれる成分が汚れや皮膚の角質を除去し、肌を引き締めながら保湿する。はがしたあとはファンデーションを塗るだけでメイクが完了するとあって、忙しい朝の時短を求める女性の心をつかんだ。

2015年4月にバラエティーショップを中心に販売を開始して以来、売れ行きは好調。2016年は前年比の約20倍を売り上げた。2017年は海外向け通販を強化したこともあってさらに伸び、2017年10月に累積販売1億枚を達成予定。夜用シートマスクと合わせても、市場で一、二を争うヒット商品になっていると販売元のBCLカンパニーは説明する。

化粧水や美容液、乳液が1つになったオールインワン商品は以前から市場にはあった。だが、サボリーノが画期的だったのは、これまで省略できないと誰もが思っていた「洗顔」の工程をカットし、「60秒」という具体的な時間を提案して消費者に驚きを与えたことだ。

■最初の企画テーマは「朝活」だった

サボリーノは、BCLカンパニーの女性社員による新規開発プロジェクトから生まれた。ただ、2013年のプロジェクト立ち上げ当初は、時短商品に絞って開発を進めていたわけではなかったという。

「当時は『朝活』がトレンドだったので、朝というキーワードに着目した。さらに話し合ううちに、『時短』というテーマが出てきた」と、プロジェクトに参加した同社宣伝部の御殿谷りえ係長は話す。

そこでプロジェクトメンバーそれぞれの朝の行動を話し合ううちに、「朝は1分でも長く寝ていたいのに、スキンケアに時間を割くのが面倒」という共通認識を持っていることが分かった。メンバーは宣伝や営業職ということもあり、社外の人に会う機会も多い。そのため、「手間を省きたいという願望と、きちんとしたいという思いを両立させる商品が必要だと考えた」と、同社販売推進部の大小原碧里係長は振り返る。

BCLカンパニーが女性を対象に行った「朝、肌の手入れにかける時間」についてのアンケートによると、約20分と答えた人が50%、30分以上と答えた人も36%いた。スキンケアのみの場合やメイク時間を含んでいる場合など、さまざまなパターンが想定されるが、男性が身だしなみにかける時間の2倍はかかっているだろう。

提供/ BCLカンパニー

「化粧水や乳液などの化粧品を1本ずつ開け閉めしながら顔に付けることが手間だと感じる人は多い。それをどうやって簡便化したらいいのか考えて、シートマスクにたどり着いた」(御殿谷係長)。シートマスクであれば、貼った状態で歯磨きや朝食の後片づけもできる。朝の時間が貴重な働く女性ならではの発想だろう。

■「サボる」ことをふわっと肯定

商品そのもののユニークさだけでなく、「サボリーノ」というネーミングも目を引く。ネーミングは内容が固まってパッケージデザインが出来上がったときに、メンバーがひらめいたフレーズだという。時短をうたうグッズやテクニックは、時に「手抜き」「ズボラ」などと称されることもあるが、「サボる」も手抜きやズボラ同様に、どことなく罪悪感を覚えるフレーズだ。

「サボるという言葉にはマイナスのイメージがあるかもしれないが、『サボリーノ』というネーミングならマイナスイメージをふわっと軽くしてくれるように感じた」と同社企画2部の齊藤久美子係長は説明する。手抜きでもズボラでもなく「サボる」ことで、肩の力を抜いてもきれいになれることを提案したいと考えたそうだ。

定番のサボリーノは欠品してしまうことも多いので、現在生産ラインを増強中だという。市場には類似製品も増えてきたが、「他社のおかげで『朝マスク』という市場がにぎわってきた感覚がある」(大小原係長)。サボリーノ自体も商品の幅を広げていくのが今後の課題だというが、洗顔から保湿までをセットにしたサボリーノに、今後さらなる機能がプラスされることはあるのだろうか。

■目指すは「メイクを顔に貼る」

「初めは化粧ごと顔に貼りたいと言っていたくらいなので(笑)、『これがクリアできればファンデーションまでオールインワンにできるかも』と考えることはある」(齊藤係長)。実際に開発段階でファンデーションも含めることも検討したが、液だれの問題でできなかったという。「ファンデーションを顔に塗り広げるのは面倒。ユーザーはそこまで想像できないかもしれないが、『メイクを貼れる』というのは大きなメリットだと思う」(大小原係長)。

「メイクを顔に貼る」というのは確かに想像しがたいが、60秒でスキンケアできるということもサボリーノが登場するまでは考えなかった人が多いだろう。時短商品が増える中、ヒットするためには消費者の想像を超える「驚き」が必要だ。「洗顔のカット」と「60秒」という具体的な時間の提案、そして「サボってもいい」という肯定。この3つの要素が、サボリーノをヒットに導いたのではないだろうか。

「サボリーノ お疲れさマスク」(28枚入り、1300円)。2017年7月18日発売(数量限定)「朝サボりたい人が夜すぐに寝られるように、60秒で済むというアイデンティティーは残した」(大小原係長)
特集 人気「時短」商品 ヒットへのアプローチ
前編 貼るだけで洗顔から化粧下地まで 時短マスク誕生秘話
中編 1億個売れた新型洗剤 「精神的な時短」がヒットの鍵
後編 大人気ミールキット 「考える手間」に最大の時短効果

(文 樋口可奈子)

[日経トレンディネット 2017年10月13日付の記事を再構成]

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