薄毛が気になる人の「シャンプーの頻度」 正解は?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
(1)1日2回
(2)1日1回
(3)2~3日に1回
(4)1週間に1回
正解は、(3)2~3日に1回 です。
男性型脱毛症(AGA)は、主に前頭部と頭頂部の頭髪が、柔らかく細くなって薄くなっていきます。思春期以降に始まり、徐々に進行して40代で誰の目にも明らかな状態になってしまいます。東京医科大学皮膚科の坪井良治教授によれば、日本人男性では30代で約10%、60代で約50%、平均すると成人男性の30%が男性型脱毛症(AGA)を気にしているそうです。
男性ホルモンの活性化が原因
AGAが「男性型」である理由は、男を男たらしめているホルモンが深く関与しているからです。主要な男性ホルモンであるテストステロンは、体内で「5α還元酵素」の働きによって、より活性が強いジヒドロテストステロン(DHT)に変化し、前立腺、精のうなどいくつかの臓器の機能に関わっています。
問題は、この5α還元酵素が、頭髪の根元(毛根)を包む「毛包」という部分でも働いているということ。「髪は2~6年かかって太く長くなり、3~4カ月の休止期を経て徐々に抜けていきます。これが髪のサイクルですが、5α還元酵素が作り出したDHTが強く働くと、脱毛シグナルが出され早めに抜けてしまう」(坪井さん)のだそうです。髪が育たないうちに抜けてしまうから、細い短い毛髪が多くなり、全体として薄毛が目立つようになります。そして、やがては完全に毛根が失われてしまうのです。
1年の薬物治療で6割の人が改善
AGAを改善しようと、これまで様々な方法が考えられてきました。頭皮の血行を促進する育毛剤から、電気や光を当てるものまで様々ですが、現在では世界的な臨床試験で発毛効果の認められた医薬品による治療を皮膚科で受けるのが中心です。
その医薬品が、塗り薬である「ミノキシジル」(商品名:リアップ)と、飲み薬「フィナステリド」(商品名:プロペシア)です。ミノキシジルとフィナステリドは、作用メカニズムが全く異なるので相乗効果も期待できます。アメリカでは、男性の軽症から中等度のAGA患者の治療法として、フィナステリド内服と、ミノキシジル5%外用薬の併用療法が一般的になっているそうです。
坪井さんは「効果は個人差はあるが、多くの人で脱毛症の進行が止まり、毛が生えてくる」と話します。例えば、プロペシアの場合は、1年続けると58%、3年続けると78%の人が、自分でも分かるぐらい脱毛が改善するそうです。
そして昨年、新たな医薬品が登場しました。それが「デュタステリド」(商品名:ザガーロ)という飲み薬。5α還元酵素の阻害剤であることはフィナステリドと同じですが、実は、5α還元酵素には1型と2型があります。フィナステリドは2型にしか作用しませんが、デュタステリドは1型、2型の両方に作用します。
シャンプーのし過ぎ、実はダメ
脱毛の予防には健康的な生活を送る努力も大切です。ストレスは髪に良くありません。精神的・肉体的に余裕のある生活を送るようにしましょう。そして、髪の元になるのはたんぱく質。バランスの良い食事を心がけましょう。喫煙は、頭皮の血管を収縮させるのでNGです。
気を付けなければならないのは、実はシャンプーのし過ぎ。育毛シャンプーの広告では頭皮の脂が脱毛の原因であるかのような表現をする場合がありますが、坪井さんによれば「脂を取り過ぎると毛根が小さくなり、毛も細くなりやすい」のだそうです。
日本人ほど、毎日風呂に入りシャンプーする国民はいませんが、健康な頭皮には適度な脂が必要です。坪井さんは「運動習慣などにもよるが、2~3日に1回のシャンプーが望ましい」と話します。そのほか、頭皮の保湿効果のあるヘアケア製品を使ったり、フケが多いときはフケ用製品を使用するなど頭皮の健康を守ることが大切です。
【髪に優しい生活習慣は?】
・髪の元になる良質のたんぱく質と、鉄、銅、亜鉛などのミネラルが不足しないよう心がける(ワカメ、昆布は発毛に無関係)
・血行を悪くするタバコは吸わない
・シャンプーは2~3日に1回くらいが適当
・睡眠をしっかり取り、精神的、肉体的にゆとりのある生活を送ること
[日経Gooday 2017年10月16日付記事を再構成]
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