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軽快で洒脱 サクソフォン四重奏団「アダム」の挑戦

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音域の異なる4種類のサクソフォンによる四重奏が弦楽四重奏並みに知られつつある。サクソフォン四重奏団「Adam(アダム)」の4人がグラズノフの作品を演奏しながら魅力を語る。

音域の異なるサクソフォン奏者4人で結成

ワッペン風に「Adam」とあしらった色違いのポロシャツを着た4人が集まり、金色の管楽器を演奏し始めた。それぞれ形状の異なるサクソフォンを吹いている。彼らはサクソフォン四重奏団「アダム」。昭和音楽大学出身の4人が2015年に結成した。東京で開かれた「ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2015」でサクソフォン四重奏団として初の第1位を受賞した。この受賞で獲得した欧州への演奏旅行を機に結束を固め、様々な場所で公演を続けている。

サクソフォンは比較的新しい楽器であるため、クラシック音楽の主要な交響曲や管弦楽曲にはめったに登場しない。「サクソフォン奏者はオーケストラで常に必要なわけではないので、ソロや室内楽でやっていくしかない。同じ楽器どうしで集まって、さあ演奏しようか、ということになる」とアダムで最も高音域のソプラノサックスを吹く山下友教さんは指摘する。

メンバーは山下さんのほか、アルトサックスの田口雄太さん、テナーサックスの野原朝宇さん、バリトンサックスの奥野祐樹さん。うち野原さんは12年に渡仏し、セルジーポントワーズ地方音楽院を満場一致の1等賞で卒業。第82回仏レオポルド・ベラン国際室内楽コンクールで第1位を受賞した経歴も持つ。「テナーサックスは人の耳になじみやすい音が出る。四重奏の中で最も重要な楽器ではないか」と野原さんが主張すると、「おいおい」とメンバーの間で笑いが巻き起こる。真剣な話題も冗談も言い合える。同じ音大の先輩後輩という気心が知れた仲間どうしだ。

最もポピュラーな楽器はアルトサックスだろう。吹奏楽やジャズでもよく使われる。奏者の田口さんは「サクソフォンを吹く上で基礎となる楽器。音色が奏者によって違ってくるところが魅力で、四重奏団の中でも色彩感を変えていく楽器だ」と説明する。最も低音域のバリトンサックスを担当する奥野さんは「四重奏の支えとなっている気持ちよさ、他の奏者をコントロールしている面白さがある」と話す。4人それぞれに自身の担当楽器に対する自負心が強いのは、ソロ中心の活動になりやすいこの楽器の奏者ならではといったところだ。

グラズノフがパリで書いた先駆の四重奏曲

4人が演奏したのはアレクサンドル・グラズノフ(1865~1936年)の「サクソフォン四重奏曲作品109」。グラズノフはロシアの作曲家で、名門サンクトペテルブルク音楽院の院長を務めた。門下で有名なのがドミートリイ・ショスタコーヴィチだ。音楽学者ソロモン・ヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」にも頻繁に登場するが、ショスタコーヴィチやプロコフィエフら若い世代から保守的な作風とみなされ、次第に時代遅れの作曲家と扱われるようになった。

グラズノフはロシア革命を経てソ連体制が固まった後、フランスに移住し、死ぬまでパリを中心に活動した。「サクソフォン四重奏曲」は彼のパリ時代の1932年に書かれた。アダムの4人が演奏するこの曲を聴くと、保守的で古臭い音楽とは思えない。むしろミヨーやプーランクら「フランス六人組」をはじめ、当時のパリが発信し始めた新古典主義音楽の潮流にかなう軽快で洒脱(しゃだつ)な雰囲気が漂う。現代の東京にこの曲が流れてもおしゃれな感覚で聴けそうだ。

ロシア出身の地味で保守的な印象の作曲家がサクソフォンという新しい管楽器に着目し、作品を書いたことだけでも驚きがある。「グラズノフはサクソフォン四重奏の先駆となる作品を書いた」と山下さんらは主張し、「僕たちにとって特別の作曲家」とみる。第1次世界大戦後、パリには米国からジャズの文化が流れ込んだ。ミヨーら新古典主義の作曲家たちはジャズを自作に取り入れ、それまでにない作風の音楽を生み出した。グラズノフもパリでジャズの影響を受け、ジャズ演奏でなじみの深いサクソフォンのための作品を書いたといえる。グラズノフは晩年に「アルト・サクソフォンと弦楽オーケストラのための協奏曲」も作曲した。

しかしグラズノフがジャズやサクソフォンに精通していたかというと、そうでもなさそうだ。山下さんは「やはりロシア人ということも影響しているのか」とフランスの作曲家とは異なる点を指摘しつつ解説し始める。「グラズノフのサクソフォン四重奏曲はフレーズが長い。曲の構築的な箇所で長いフレーズを使っている。弦楽四重奏曲を意識して作曲したとしか思えない」と言う。

弦楽四重奏曲を連想させる長いフレーズ

サクソフォン四重奏曲を弦楽四重奏曲と相似形で考えるのは容易だ。ソプラノ、アルト、テナー、バリトンのそれぞれのサクソフォンを第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラ、チェロという弦楽四重奏曲のそれぞれの弦楽器に当てはめることは可能だ。「サクソフォンは息継ぎが必要な管楽器だから、もう少し短いフレーズであっていい。グラズノフのサクソフォン四重奏曲は弦楽器のフレーズの長さに近い」と山下さんは話す。だからこそこの曲からは、おしゃれなパリの雰囲気に溶け込みつつ、弦楽で培われたロシアの叙情が聞こえてくる。この点が演奏家にも聴き手にも魅力になっているといえそうだ。

10月28日には「Adamサクソフォンスペシャルデーvol.2」と題し、メンバーとの座談会を含むコンサートをヤマハ銀座コンサートサロン(東京・中央)で開催。こうした公演にとどまらず、彼らは学校や福祉施設など様々な場所で演奏している。「僕たちほど手軽に動ける四重奏団の形態は珍しい。かさばるピアノや大きな楽器は要らない。どんな場所にもサクソフォン1本で出向いて演奏できる」と山下さん。「生演奏でこれだけ大きな音量も出る。だから音響装置も不要だ。日本で生の演奏を聴いてもらい、どれだけ楽しんでもらえるか、追求していきたい」と言う。

サクソフォン四重奏の作品はまだ少ない。しかし実はサクソフォン四重奏団は彼らのほかにもいくつもある。オーケストラでの活躍の場が少ないため、四重奏団を作る動きが近年は活発だからだ。「ビジュアル音楽堂」で取り上げたことのあるサクソフォン奏者の上野耕平さんも「ザ・レヴ・サクソフォン・クヮルテット」という四重奏団を結成し演奏活動をしている。

それだけに四重奏団としての個性をいかに出していくかも重要だ。「ポップスのアーティストとも組んでいく。ジャンルにこだわらず、様々な分野の音楽を取り上げていきたい」と山下さんは言う。グラズノフが1930年代に切り開いたサクソフォン四重奏の伝統を今に伝えつつ、4人は新たな可能性に挑む。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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